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月9の最新作…というよりは、好調だった『監察医 朝顔』の後番組として、現在絶賛放映中の新作が『イチケイのカラス』(フジテレビ系)。裁判所を舞台にした、いわゆる「法廷ドラマ」である。通常、法廷ドラマは、弁護士や検事が主人公であることが多く、「勝つか負けるか」という法廷のスリリングさもあって、根強い人気を誇っている。
しかし、『イチケイのカラス』の主人公は裁判官。裁く側が主人公というのは、結構、ドラマ作りのやり方としてはやりにくいはずだ。通常、裁判官は、検察側や弁護側の出してきた証拠や証人の証言を突き合わせて、白か黒かの判定を下すのが役割だから、自ら捜査するわけではない。どうしても、そこに「もどかしさ」が出てくるはずだ。
しかし、『イチケイのカラス』の竹野内豊演じる入間みちおは、裁判官でありながら、少しでも違和感を覚えると裁判所主導の「捜査」を開始。それまで検察側や弁護側が見落としていた事実を拾い出し、誰もが納得する結論を導き出す。
もっとも、実際裁判官がやるのは「職権調査」であって、「捜査」ではないというのが真実らしく、「捜査」という言葉を使うのは、「その方がファンタジーとして面白くなる」という現場判断かららしい。入間の人物造形が「こんな裁判官いるわけない」という型破りな設定だけに、そこはリアリティを大事にしてほしかったという残念な気持ちは残る。
しかし、入間のような型破りな裁判官が存在しないかというと、実はそうではない。
入間とその上司・駒沢義男(小日向文世)には実在のモデルがいて、現在弁護士を務めるその人物は、裁判官時代30件を超える無罪判決を出していたというから驚きだ。刑事裁判の有罪率が99.9%であることを考えると、これは驚異的な数字である。
舞台は東京地裁第3支部第1刑事部(イチケイ)。こういう裁判官がチームにいると、全体の審理は遅れ、裁判の処理件数は滞る。困った存在ではあるのだが、イチケイの周りの人々は、なぜか入間の振る舞いを許している、というか、どこか彼の破天荒な行動に「期待」している節が窺えるのだ。
そこに立ちはだかるのが、イチケイに配属された新任の裁判官・坂間千鶴判事補(黒木華)。
融通の効かない彼女は入間と何かとぶつかり、翻弄される。しかし、ドラマが進むにつれ、坂間も入間の影響を受けて徐々に変わっていく。この坂間の変貌ぶりもドラマの見どころだ。
「こんな裁判官がいてほしい」という視聴者のファンタジーを具現化した入間には、もっともっと暴れてほしいものだ。
- (文)久慈修人『週刊大衆』専属記者。【Twitter】@SayEach
- (編集)スナイパー神津『週刊大衆』編集部員。【Blog】https://sniperkozu.com/
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