TBS日曜劇場の最新作は『天国と地獄～サイコな2人～』。綾瀬はるか演じる警視庁の刑事・望月彩子と高橋一生演じるサイコパスな殺人鬼（？）・日高陽斗の魂が入れ替わってしまうところから、物語がスタートする。見ている方は、綾瀬はるかを実は高橋一生だと思い、高橋一生を実は綾瀬はるかだと思って見なければならないのだが、二人の「魂が入れ替わった」演技が凄すぎて、その点には、なんの違和感もない。高橋一生の女性っぽい演技、綾瀬はるかのサイコパスが入り込んだ迫力ある演技、二人の演技合戦を見るだけでも、充分見応えがある。

「男女の魂が入れ替わる」物語といえば、大林宣彦監督の名作映画『転校生』を想起してしまうが、二人の魂が階段からゴロゴロ転がって、下に落ちたところで入れ替わるところなんか、『転校生』そのまんま。おそらく、オマージュなんだろうが、「そのまんま」すぎて思わず笑ってしまうほど。

　ドラマが始まった頃、日高は「真っ黒」だと思われていたが、話が進んでいくうちに、日高は本当にサイコパスの連続殺人犯なのか、という根本的なところに疑問符がつくようになってくる。そこで、鍵を握るのが日高の双子の兄弟・東朔也の存在。両親の離婚で対照的な人生を送った兄弟の物語が連続殺人事件に深く関わっていることが分かってくるのだ。

　しかし、それにしてもこのドラマ、別に二人の主人公の魂が入れ替わらなくても、普通のミステリーとして十分面白いと思う。真面目で一途な女性刑事・望月彩子が、サイコパスの日高陽斗を追い詰めていくうちに、その背後にいる義理の兄弟の存在に気づいていく、という普通の話でも良かったと思うのだ。

　まあ、当然「魂が入れ替わる」という仕掛けには意味があるのだろうが、今のところ、「二人の演技力の凄さ」を伝えるのと、ドラマとしての興味を惹くための仕掛け、以外に意味があるとは思えない。

　最終回までには、「なるほど、二人が入れ替わるのにはそういう意味があったのか」と膝を打つような展開が用意されていることを期待したい。

• （文）久慈修人『週刊大衆』専属記者。【Twitter】@SayEach
• （編集）スナイパー神津『週刊大衆』編集部員。【Blog】https://sniperkozu.com/