人気脚本家・北川悦吏子の最新作が『ウチカレ』こと『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』（日本テレビ系）。主演は菅野美穂。彼女が演じるのは、売れっ子恋愛小説家の水無瀬碧。一人娘の空（浜辺美波）と都内のタワーマンションで暮らすシングルマザーだ。

　碧の悩みは、空が真性のオタク娘で漫画やアニメに夢中で彼氏が出来ないこと。しかし、そんなことは言っていられない状況が碧に降りかかってくる。恋愛小説家からの脱却を目指して新境地を開拓すべく取り組んでいたミステリー作品の連載が打ち切りとなり、生活の危機を迎えるのだ。新しい担当編集者は「もう一度、恋愛小説を書いてください」と懇願するのだが、もはや40歳を過ぎ、恋愛とは縁遠くなった碧には、なかなか恋愛小説が書けない。崖っぷちの母を心配する空。

　二人の親子関係が丁寧に描かれる。仲が良く、理想的な親子。第一回のラストでは、この二人が同じ男性（イケメン整体師）を好きになり、「すわ、親子バトルか！」と思わせるが、そう言った展開にはならず、第二回が始まるとすぐに、碧の恋は冷めてしまう。空と男性の恋を応援する立場に立つのだ。

　実は、碧には家族ぐるみでつき合っているたい焼き屋「おだや」のゴンちゃん（沢村一樹）といういい関係の男性がいるのだが、お互いの気持ちに気づいておらず、「仲のいい幼馴染」の関係を保っている。

　いっぽうの空には、イケメン整体師以外にも、大学で同じゼミの光（岡田健史）が何かとちょっかいをかけてくる。実は、光は「隠れオタク」で、絵の上手い空と組んで漫画を描こうという野望を持っているのだ。

　いや、正直、この話、この後どう展開するのかがまったく読めない。そんななかで、天真爛漫な母・菅野美穂とオタク娘の浜辺美波が実にハマっていて、見ていて心地いい感じ。

　時に、浜辺美波。『私たちはどうかしている』で演じた和菓子職人のシリアスな演技、『タリオ』で演じた元弁護士の真面目でコミカルな演技など、驚くほど多面的な顔を見せてくれたが、このドラマでは、「恋にオクテなオタク女子」を見事に演じきっている。

　なんでも、浜辺自身が漫画好きのオタクで、脚本家の北川が『半分、青い。』で起用した佐藤健から「オタクなら浜辺」とアドバイスされたことが、キャスティングのきっかけだとか。

　作品によって、いろんな顔を見せる浜辺だが、この作品での役柄が素に近いのかと思うと非常に感慨深いものがある。

• （文）久慈修人『週刊大衆』専属記者。【Twitter】@SayEach
• （編集）スナイパー神津『週刊大衆』編集部員。【Blog】https://sniperkozu.com/