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このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長
【家内の命日に訪ねてきた義理の妹との夜】新潟県在住Y・Sさん(64歳)
家内が亡くなり、息子も独立し、わたしは1人で暮らしていた。2年前の話だ。
山深い田舎の一軒家。
庭に植えられたサクラは今年も花を咲かしてくれたけれど、寂しさはなんともまぎらわせることができない。
「悪いけど、仕事が忙しくてさ。いけそうにないんだ」
家内の命日。息子はそういってきた。わたしは気丈夫を気取りながらも、線香の煙に思わず目もとが潤んでしまった。
そのとき来客があった。迎えに出てみると義理の妹、つまり、亡妻の妹だった。
「ごぶさたしてしまって」
和服姿の彼女はそういいながら、仏壇に手を合わせた。
彼女の名前は良江。家内より5つ年下だから55歳のはずだ。縁がなかったのか、ずっと独身で、もちろん子どもも産んでいない。
そのせいか、歳の割には肌にみずみずしさがあり、表情にしわも少ない。着物の襟足からのぞくうなじをうかがうと、その色香によこしまな感情をいだいてしまいそうになる。
「今年もサクラが咲きましたね」
暖かい日だった。扉は開け放たれ、濡れ縁から庭が一望できる。
「ええ、毎年みごとなもんです」
「姉が生きているときは、ここの生活がうらやましかったんですよ。わたしの住む都会のマンションと違って季節が楽しめるから」
座布団の上に正座し、差し出された茶をすすりながらつぶやくように話す。その姿が満開のサクラと重ね合わさり、わたしはうっとりと見つめてしまった。
「きょうはゆっくりできるんですか」
わたしは思わず口走ってしまった。
「おじゃまでは?」
「いいえ。一人暮らしが長いと、なんだか人恋しくて」
仕事は農業。小さな畑を耕して生計を立てている。会社勤めではないので、農協に出向く以外、ほとんど人と口を利くこともない。
彼女はもう一度庭をながめた。
「きょうは十六夜でしたっけ」
「え? どうでしょう」
「月明かりに浮かぶサクラの花。風情があるでしょうね」
それは夜までの滞在を示す証だと、わたしは確信した。彼女はまっすぐ背中を伸ばしたまま姿勢を崩すことなく、いつまでも庭をながめていた。
日が暮れるまで昔話に花を咲かせ、せっかくだからと縁側に出て花と月をながめながら杯を交わすことになる。
「お料理、おじょうずですね」
「いいえ、なんとかここまでできるようになった、というところです」
「お野菜はご自分で」
「形のいいのは全部、出荷してしまいますけど、見かけの悪いのは。けど、形の悪いほうがうまいもんです」
杯を重ねるにつれ、わたしは饒舌になっていた。
もともと無口なほうではないが、こんな時間にだれかと会話を楽しむなんて、何年ぶりだろう。良江さんは常ににこやかな笑みを浮かべて、わたしをながめていた。
か細い身体に白い肌、切れ長のまゆに涼しいひとみ。顔のつくりは端正で落ち着きがあり、小さな唇からこぼれ落ちる声は小さく甘い。
「ご不自由じゃありません?」
「なにがですか?」
「日々のお暮らし」
「慣れましたけどね。不便でないといえばウソになる」
「失礼ですけどおいくつに?」
「62になりました」
「まだまだ男盛りですわ」
「なにをおっしゃる。こんな山猿。だれが相手してくれますか」
青い月明かりの中で良江さんの頬はほんのり色づき、姿勢も横座りになる。ときおり髪に手を伸ばす仕草が、なんとも色っぽい。
初めて出会ったとき、彼女は20歳。そのころから、年齢に合わない落ち着きと色気がある、とわたしは思っていた。
家内は、どちらかといえば明朗闊達なタイプで、それはそれで好ましく思えたのだが、対照的な良江さんにわたしはほのかなあこがれをいだいていた。
その彼女が、いま目の前にいる。手を伸ばせば、すぐに触れる位置に存在する。
「い、いやいや……」
「どうしたんですか?」
「いえ、別に」
わたしは自分をごまかすために、杯の中の酒を一気に飲み干した。
「お強いんですね」
「酒だけが楽しみのようなものですから」
「毎晩お相手できればいいんですけど」
「え?」
「田舎暮らし。あこがれますわ。とくにこの季節。ツバキにモモ、菜の花に水仙。そしてサクラ」
潤んだひとみで良江さんはわたしを見つめる。その上目づかいのひとみに、わたしは思わず緊張してしまう。
「よ、良江さん」
わたしは思わず手を伸ばしてしまった。
「いや。お姉さんが見てる」
「かまうことはない。あなたなら家内も許してくれる」
「そうでしょうか」
「赤の他人より身内のあなたが」
「それだけ?」
「はい?」
「わたしが身内だから、身内であるから」
「いいえ、良江さん、わたしは以前から、初めて出会ったときから……!」
良江さんを抱きしめたとき、彼女は身をよじったものの、あらがいはしなかった。わたしは彼女の温もりと存在感をたしかめながら唇を重ねる。
「ここでは」
「わかりました」
手をつないで立ち上がり寝室に向かう。そのとき良江さんは、妖しいほほ笑みを浮かべたのだった。
奥の座敷の煎餅布団。わたしはパンツ1枚でしゃがんでいた。良江さんは闇の中で帯をとき、長襦袢姿になった。
月の光は寝室にも降りそそいでいた。冷たい光の中に浮かぶ良江さんの姿は神々しくもあり、淫靡でもあった。幻のように現実感がなく、触れれば消えてなくなりそうな危うさがそなわっている。
「やさしくお願いします」
彼女はそういって、わたしのとなりに腰をおろした。
唇を吸いながら襟もとを開く。手を差し伸べれば、慎ましやかな乳房の感触が伝わる。
「あん……」
消え入りそうな切ない声を、良江さんはあげる。わたしはそのまま襦袢の裾をまくりあげ、秘所に指を忍ばせた。彼女の部分は、すでにしっとりと潤いはじめている。
「いや、ダメ……」
腕の中で身悶えをはじめる良江さん。わたしはかかえ込みながら、執拗に乳房と陰部をまさぐり続ける。
「ダメ、あん、いや……」
声色に艶が帯びてくる。柳のようなまゆをひそめ、唇から熱い息を吐く。
わたしは良江さんを寝床に横たえ、帯を解いた。あらわれた肢体を見て、思わずツバを飲み込んでしまう。
こんもりと盛りあがった乳房の上にある小さな乳首。さっきまでながめていたサクラの花と同じ色をしている。溶けてしまいそうな肌は桃色に染まり、光沢を放って浮かびあがっている。
「はやく、はやく、お願いします」
「恥ずかしい?」
「はい」
「わかりました」
わたしはおおいかぶさり、もう一度、秘部に手を伸ばした。
「ああん」
良江さんは、はっきりとした声で歓喜を示す。
「はやく、はやく、あんん、お願い」
わたしが内部をかき混ぜ、秘裂の上にある陰核を探ると、全身をのけ反らせて哀願する。部分はあふれ出る愛蜜で濡れそぼり、身体中からクチナシに似た香りが立ちのぼる。
「良江さん」
「ああん、はやく、お願い、お願いします、はやくぅん」
わたしは彼女の両脚を大きくひろげ、ゆるやかに閉じる陰唇にそそり立った一物をあてがった。そして腰に力を込め、一気に中までねじ込む。
「あくう!」
唇をかみ、挿入を感じ取る良江さん。内部は熱を帯び、とろけた膣襞がわたしをおおう。
乳房を吸うとビクンビクンと良江さんの全身が脈打つ。わたしはゆっくりと、やがて性急に抜き差しをくり返した。
「ああん、ダメ、やん」
「気持ちいいですか」
「いい、ああん、ダメ、変になる、変になっちゃいますぅ」
あごを反らし、髪を乱しながら、良江さんは喘ぎ、よがる。わたしはそのまま、久しぶりのほとばしりを、彼女の内部に放ったのだった。
3か月も過ぎたころ、わたしは息子に電話をかけて伝えた。
「おい、結婚してもいいか」
「なんだよ、藪から棒に」
「いや、女の人といっしょに住んでいいか」
「いい人できたの」
「まあな」
「親父の人生なんだからさ、好きなようすればいいよ」
一度都会に戻った良江さんは、すぐに荷物をかかえてわたしの家に舞い戻ってきた。それから良江さんとの生活がはじまり、2年たった今も仲良く暮らしている。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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