Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長
【アルバイト先の人妻の誘惑】千葉県在住O・Yさん(56歳)
高校を卒業業して大学に合格し、暇を利用してアルバイトをはじめた。働く場所は近所の喫茶店。友人の紹介で決めた。
店は若い夫婦が二人きりでやっていて、調理は主人、接客が奥さんの受け持ち。二人とも30代半ばで子どもはなく、夫婦仲よく店を切り盛りしているという印象だった。
それまでアルバイトの経験はまったくなく、そのうえ客商売なので気を使うことも多い。しばらくは、家に戻るとバタンキューの生活が続いていた。
しかし、1週間もすると仕事にも雰囲気にもなれ、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の声も、大きく出せるようになっていた。
そんなある日、主人であるマスターが事故で骨折し、しばらく入院することになった。店はしばらく休みになるかと思ったが、奥さんが調理をし、わたしが接客するという体制で続けることになった。わたしは朝8時の開店から夜7時まで、毎日かようようになる。
ただ、それでも仕事は楽しかった。というのも、奥さんが以前にも増して、わたしによくしてくれるようになったし、次第に彼女の魅力に気づきはじめたからだ。
奥さんはわたしよりひとまわり以上、歳の離れた女性だったが、いま思うと生き生きとした若さが感じられ、髪や肌の艶もよく、シワやシミの類も見せないキレイな人だった。そのうえ、潤んだ目もとと鼻にかかった声、そして胸元を盛りあげる豊満な乳房など、ほのかな色気も兼ねそなえていた。
男ばかり3人兄弟の真ん中で、高校も男子校。母親や教師以外の女性と話をしたことがなく、男ばかりの環境で育ったわたしにとって、いつしか奥さんはあこがれの女性となっていた。
しかし、甘酸っぱい感情をいだくだけであって、何かをしよう、何かをしてほしいという思いはなかった。
喫茶店という狭い空間の中で、二人息を合わせて働き、空いた時間には他愛のない会話を交わす。そんな関係だけでじゅうぶん満足だったのだ。
日は流れ、マスターも退院が決まり、わたしも入学準備のため店を辞めることになった。本当は大学生になってもバイトは続けたかったのだが、大学は実家から遠く、下宿が決まっていたのでしかたがない。
「さびしくなるわね」
最後の夜、シャッターをおろした店の中で、わたしと奥さんは店のソファーに座って向かい合っていた。
「本当はきちんと送別会をしたいんだけど、二人きりでってわけにもいかないしね」
「いえ、気を使わないでください」
「マスターにもいっておくからね、彼のおかげですごく助かったって」
奥さんは、それまでの給料を計算して渡してくれた。
「少し、多めに入ってるから。少ない給料で頑張ってくれたんだもん。心からのお礼」
「いいんですか」
「うん、あ、そうだ、送別会、いまやらない?」
「え?」
「といってもビールしかないけど」
いうが早いか、奥さんは席を立って厨房に入る。そして瓶ビールとグラスをふたつ持って戻ってくる。
このとき奥さんは、それまでの向かい合わせでなく、わたしのとなりに席を取った。
「じゃあ、乾杯」
ビールのそそがれたグラスをチンと合わせ、のどに流し込む。
「おいしい。でも、これが最後だと思うと、苦味も強いね」
そういって、奥さんはさびしそうな目でわたしを見つめた。
「大学は何学部だったっけ」
「法学部です」
「将来は弁護士?」
「いえ、検事のほうに」
「そうなの、偉くなっても、わたしのこと忘れないでね」
「もちろんです」
「でも、大学に行って若い女の子に囲まれちゃうと、わたしみたいなおばさんのこと、すぐに忘れちゃうんだろうなぁ」
「そ、そんなことないです!」
わたしは思わず大きな声を出してしまう。そんなわたしを見て、奥さんは妖しくほほ笑む。
「じゃあ、約束してくれる?」
「え?」
「指きり」
奥さんは右手の小指を差し出す。わたしは緊張しながら、自分の小指を絡めた。
「ゆ~びき~り、げんまん、ウ~ソつ~いた~ら……」
そこまでいったとき、奥さんはわたしも手を握りしめ、自分のほうに引き寄せる。
「忘れないように、身体でおぼえてもらう」
「え、え?」
「きみの身体に、わたしの記憶を植えつけてあげる」
奥さんはそういってわたしの肩に腕をまわし、耳もとでささやいた。
「きみもわたしの中に染み込むの。一生忘れないように」
声色、体温、肉体の感触。それだけでわたしの股間はうずきはじめる。いけないことだとわかっていながらも、あらがうことができない。
奥さんはわたしのほほを両手で押さえ、じっと目を見つめた。そして首をかたむけ、唇を半開きにすると、顔を押しつけてくる。
やわらかなぬめりが伝わる。舌が唇を押しひろげて侵入してくる。絡まる舌と舌。胸が苦しくなり、腰が浮きあがるような興奮をおぼえる。
「女は、初めて?」
長いキスのあと、顔を離した奥さんはいった。
「はい……」
「わたしでいいの?」
「え?」
「初めてがわたしで後悔しない?」
わたしは黙ってうなずく。
「うれしい、もっと忘れられなくなっちゃうわね」
奥さんは自ら薄手のセーターを脱ぎ、ブラジャーのホックをはずす。そして豊満な胸乳をさらし、両腕を組む。
「どう、きれい?」
「は、はい、すごく……」
「脱がせてあげる」
わたしのトレーナーをあげ、肌着も取る。奥さんは、そのままわたしの胸板に舌をはわせはじめる。くすぐったい感触と、知ることのなかった感覚が伝わる。
「さわっていいのよ、わたしのオッパイ」
奥さんはわたしの手を誘ってくれた。手のひらに押しつけられた感触は、やわらかでなめらか。そして手のひらにあまるボリューム感があった。
「うん、もっとさわって。いろんなことして」
わたしが、思うがまま奥さんの乳房を楽しんだ。すると奥さんは、わたしのズボンのファスナーをおろし、中から勃起した一物を取り出す。
「あああん、固い、こんなの久しぶり」
つぶやきながら前かがみになった奥さんは、いきなり頬張り、しゃぶりはじめた。
舌でぬるぬると全体をなぞり、吸いつきながら頭を揺らす、唾液のなめらかさと口腔の温度で、わたしはすぐに果てそうになる。
「お、奥さん、もう……」
「ダメ、まだダメ、ちゃんとわたしの中で」
奥さんは顔を離すと、今度はスカートの中にわたしの手を導く。
「パンティの中に手を入れて、さわって」
薄い下着のすき間から部分をなぞる。そこはすでにネチャネチャと湿っていて、ウネウネトした感触が指先に伝わってくる。
「やん、そう、あああん、感じちゃう、もうダメ、ねえ、いいでしょ、ね」
感情のたかぶった奥さんは、わたしのズボンと下着をおろし、スカートをはいたまままたがってきた。そして、自分もパンティをおろすと、わたしをいざない、埋没させる。
「く、ううん、すごい、すごい!」
わたしの肩に手をおき、身体を上下させる奥さん。わたしは眼前にある乳房にしゃぶりつき、乳首を舐める。
膣内に収まった肉棒は圧力が加えられ、こすりあげられる。引っかかりのある入り口の窮屈さが、クリクリとした刺激を示し、わたしは早くも頂点を迎えそうになっていた。
「お、奥さん、ダメ、ダメだ」
「もう、もう出ちゃうの」
「ダメ、ダメダメ」
「うん、いいわよ、そのままキテ」
「で、でも」
「いいの、熱いの、ちょうだい、そのままちょうだい!」
いくらなんでも中出しは抵抗がある。けれど奥さんが上に乗っている以上、逃れるすべはない。
奥さんは、そんなわたしの気持ちも気にしないで、激しく腰を振る。
「あ、あああ……!」
わたしはそのままほとばしりを放ってしまった。
甘美な経験をあたえてくれた奥さんだったが、わたしはしばらく中に出してしまった恐怖にさいなまれた。地元を離れても、そのことばかりが気がかりだった。
けれど、なんの連絡もないまま前期も終わり、夏休みに入った。
帰省したわたしは、それとなくアルバイトをしていた店をたずねた。店内にははいらず、外から中のようすをうかがうと、奥さんとマスター、そしてアルバイトらしき若い男が働いていた。
「新しいバイト、雇ったんだ」
かすかな嫉妬おぼえながら、わたしはその場を立ち去ったのだった。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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