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このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長
【若い女の子に踏みつけられたい】東京都在住K・Kさん(52歳)
それは、いつものように満員電車で揺られていた日のことだった。
目の前に若い女が背中を向けて立っていた。女はスラリと背が高く、ダウンのジャケットをはおっていて、茶色の髪を長く伸ばしていた。小さな尻はパンツが見えそうなほど短いニットのスカートにおおわれていて、尻の割れ目がはっきりとうかがえる。
そして、形のいい脚にふくらはぎ丈のブーツ。ブーツのかかとは、先が長く鋭くとがっていた。
わたしはなぜか、そのかかとが気になっていた。別にハイヒールに対してフェチズムをいだいているわけではない。いや、少なくとも、その時まではそう思っていた。重役秘書がはくエナメルのハイヒールに見とれてしまうことはあったが、それをどうこうしたいというよりも、やはりはいている人間にあこがれをいだいているほうが強かった。
しかし、この時は違った。
女のかかとは、わたしのつま先のすぐそばにあった。
電車が大きく揺れ、女の体勢が崩れればどうなるのだろう。彼女の鋭いヒールがわたしの安物の靴をつらぬき通し、強烈な痛みが走るに違いない。しかし、車内は身動きがとれない状態だ。未然に避けようと思ってもできそうにない。わたしは激痛に意識を失ってしまうかもしれない。
そんなことを考えたとき、背中がゾクゾクするような興奮をおぼえてしまった。
そして、考えていたとおり、運転手が急ブレーキをかけたとき、彼女の身体が大きく揺らいだ。
ブーツのかかとが、わたしの靴の上に乗った。彼女は崩れた身体を立て直すために、全体重をかかとに預けた。鋭いヒールはわたしの靴に突き刺さり、瞬間、鋭い痛みが走る――、はずだった。
しかし、つま先ギリギリ、指に触れる寸前のところにヒールはあった。
妙な感触に気づいたのだろう。女は振り向き、かかとを確認し、わたしを見た。
「あ……」
自分のかかとがわたしの靴をつらぬいているようすを見て、彼女は顔色を失った。
「ご、ごめんなさい」
あわてて足の位置を変える女。わたしは平然を装い、何もいわなかった。
「大丈夫ですか? ケガは?」
化粧は濃く、目のまわりが派手にいろどられている。いわゆるギャルという種族らしい。
それにしては声色は幼く、きちんと謝ることもできる。そして、困惑を浮かべた表情が、なんとも愛らしくて色っぽい。
「大丈夫。つま先をかすめただけだから」
「でも、靴が」
「平気。安物だし」
女は髪をかきあげながら、何度も頭をさげた。わたしは優越感にひたりながら、その時は寛大にふるまった。
どうして女を許してしまったのだろう。駅について会社に到着し、机についてわたしは考えた。
安物だとはいえ、損害をあたえられたのだ。それを口実に、なんらかの関係を持てたかもしれない。
若い女の謝る姿に満足をおぼえたのか? 50も過ぎた男が、若い女相手に感情をあらわにするのが恥だとも思ったのか?
そうではない。わたしはガッカリしたのだ。
本当は足の甲がつらぬかれ、痛みに悶えたかったのだ。神経のすべてが逆立ち、頭がクラクラするほどの激痛に震え、冷や汗が吹き出し、アドレナリンが噴出する感情を得たかったのだ。
「そうか、わたしはそういうタイプの人間だったんだ」
改めて思った。だから、この歳になっても平社員のままで、しかも自分より10も年下の部長に怒鳴られ、家に帰れば女房子どもにうとんじられても生きていけるんだ。それを心地よい状態だと受け止めているのだ。
納得したわたしは、その時から、若い女に踏みつけられたい、足だけではなく股間や顔も踏みつけられたい、屈辱の中からわき起こる快感を得たいと思うようになっていた。
女は、通勤か何かで同じ電車を利用しているのだろう。その日もかかとの鋭いブーツをはいて、わたしの前に立っていた。今度は甲をつらぬいてもらおうと、わたしはチャンスのくるのを待ちかまえていた。
電車が大きく揺れた。女の身体が崩れた。わたしはそっと足を前に出した。女のヒールは靴をブスリとつらぬき通した。
「あ!」
わたしは顔をしかめその場にうずくまった。
ヒールは足に突き刺さり、血がにじんでいく。女はあわてて抜き取ると、急いでわたしの前にしゃがみ込む。
「す、すいません! 大丈夫ですか!」
「い、痛い……」
激痛が走る。それと同時に、うっとりとするような快感がわたしを襲う。
退屈でぼんやりとした毎日を送り続け、生きているのか死んでいるのかさえはっきりしない日々の中で、覚醒をうながすような感動すらおぼえてしまう。
「病院、病院に」
「い、いや、その必要は……」
「でも」
「とりあえず、次の駅で降りてくれ」
その後、わたしと女はホテルにいた。痛みが引くまで休みたい、横になりたい、このことは公にしないし何もしないから、といいくるめたのだ。
女はしぶしぶ着いてきた。何か理由があったのだろう。もしくは単純に治療費がなかっただけかも知れない。何もしないという言葉を信じたわけではあるまいが、身体で償うほうが安上がりだと考えたのかもしれない。
ベッドに横たわり靴下を脱ぐと、べっとりと血がこびりついていた。
「骨は大丈夫そうだから、すぐに治るだろう」
わたしはいう。
「すいません。で……」
表情を蒼白にした女はいう。
「なんだ?」
「わたしは、なにをすれば……」
女は覚悟を決めていたようだ。その姿が脅えた小動物のようで、わたし快感をおぼえる。
「なにもしなくていい」
「でも……」
「なにかをしてくれるというのなら、頼みがある」
「はい……」
「わたしを踏んでくれ」
「え?」
「足だけじゃなくて、身体のいたるところを、その足で踏みつけてくれ」
困惑と怪訝な表情を女は浮かべる。わたしを変態だと思ったに違いない。
さげすまされるのには慣れている。きれいな女の軽蔑のまなざしは、わたしをいっそう興奮させてくれる。
「頼む、お願いだ」
女はしばらく迷っていたが承諾してくれた。
「わかったわ、踏むだけでいいのね」
言葉づかいもぞんざいになり、ベッドにのぼると素足でわたしの顔、胸を踏みつけはじめた。
「ああ、いい、そう、もっと強くだ」
グリグリと女は足を押しつける。
スカートの中が丸見えになり、黒い下着が見える。わたしは、鼻の骨が折れるほどの圧力を感じながら光悦となる。
「今度はどこ? どこを踏めばいいの」
「胸を」
「こう?」
わたしは自分でワイシャツのボタンをはずし、肌着をまくりあげた。女は貧弱な胸板を踊るように踏み続ける。
「あああ、そうだ、もっと」
ズボンの上から股間を踏まれると、一物が10代のころのように勃起する。痛みが身体中を走り抜け、神経が震えながら快感を伝えてくれる。
「今度は座ってくれ、顔の上に」
「ふふふ、おもしろ~い」
調子に乗りはじめた女は、わたしの顔にスカートをかぶせ馬乗りになった。窒息しそうになりながらも、わたしは幸福だった。わたしの顔面にしゃがんだ女は、そのままかかとで股間を蹴り続ける。
「ああ、ああ、もっと、ああ、もっと!」
情けない声をあげ、わたしは女の感触に頂点をおぼえてしまった。そして、下着の中に精液をほとばしらせてしまうのであった。
それからも、満員電車に乗るとハイヒールの女をさがす。街を歩いていても、かかとの鋭い女に目がいってしまう。素人女ではなかなか相手にして貰えないのがわかると、風俗にいって頼む。
そのために借金もできたが、後悔はしない。できれば若い女の尻に鼻と口をふさがれて窒息、もしくは蹴られ、踏まれて内臓が破裂する。いまはそういう最期を望んでいる。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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