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中高年の性告白

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【中高年の性告白】第114回「物欲の強かったわがままな元妻」東京都在住T・Kさん(58歳)

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【中高年の性告白】第114回「物欲の強かったわがままな元妻」東京都在住T・Kさん(58歳)

このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長

【物欲の強かったわがままな元妻】東京都在住T・Kさん(58歳)

 彼女とは見合いで知り合った。歳は32。わたしにとっては6回目の相手だった。

 ちょっと派手なタイプではあったが、ムチムチした身体が印象的。当時わたしは44歳。ようやく自分の医院を開業したばかりだった。

 それまでは勤務医として救急病院に勤めていた。医者といえばたんまり給料をもらっているイメージを持たれがちだが、同世代のサラリーマンよりちょっと多い程度でしかない。そのうえ不規則な毎日なので出会いも少なく、若くして頭は禿げあがり、度の強いメガネに肥満気味。女性看護師たちにも敬遠され、わたしはずっと独身を通していたのだ。

「まあまあ、見た目はどうあれお医者さまだし、なんといっても一国一城の主。見た目はどうあれ、心のおやさしい方ですし」

 見合いの席で、仲人である親戚のおばさんはいいにくいことをはっきりと口にする。

「そうですよねぇ。見た目はどうあれ、ウチの娘も選り好みできる歳でもありませんし」

 彼女のお母さんもはっきりという。

「ええ、見た目はどうあれ、幼いころからやさしい子どもで」

 ウチの母親までも。

 彼女は不機嫌そうな顔つきで視線を宙に泳がせていた。

 けれど、瓢箪から駒というか、青天の霹靂というか、後日彼女のほうからOKの返事をもらう。もちろん、わたしに異存はなく、早速二人だけで会う機会をつくった。

 初めてのデートの日、わたしはドキドキしながら彼女を待った。約束の時間よりも30分早く到着してしまい、緊張しながら行き交う人をながめる。

「お待たせ」

 10分遅れで彼女は姿をあらわした。

 真っ赤なTシャツにジーンズ姿。胸元が大きく盛りあがり、シャツの裾からへそがチラチラと見える。しかし、その表情は憮然としていた。

「ど、どうも、こんにちは。ど、どこに行きましょうか?」

 その言葉に、彼女はあきれたような顔でそっぽを向く。

「デートの段取りくらいキチンとしてよね」

「あ……、すいません」

「まず、お茶かしら」

 わたしは彼女を連れて喫茶店に入った。

「ぼ、ボクはコーヒーを」

「わたしもホット」

 脚を組み、頬づえをつきながら彼女は注文する。

「きょ、きょうは来てくれてありがとう。い、いや、感激だな。ボクとの交際をOKしてくれるだなんて」

 わたしは、たいして暑くもないのに汗をふきながら話す。

「勘違いしないでね」

「え?」

「ママがさ、あまりもしつこくいうから来ただけだから。承諾の返事もママが勝手にしたの。ホント、やんなっちゃう」

「そ、そうですか……」

 彼女は、そういってバッグからタバコを取り出す。わたしは驚き、目を丸くして見つめてしまう。

「なに?」

「い、いえ……」

「いまどき、女がタバコ吸っちゃいけない、なんていうんじゃないでしょうね」

「いいえ、でも……」

「でも、なに?」

「医者の奥さんがタバコを吸うのは……」

 彼女は灰皿に吸い殻を押しつけ、立ちあがる。

「アタシ、帰る」

「え?」

「やっぱりダメ。生理的に受けつけない」

 彼女はさっさと店を出ていった。わたしはあわてて勘定を済ませると、彼女のあとを追いかけた。

 彼女が先に立ち、わたしがあとへ続く形で沈黙のまま街を歩く。そのとき、とあるブランドショップの前で彼女は立ち止まった。

「いいなぁ、このバッグ」

 ショーウィンドウをのぞき込み、彼女はいう。わたしはとなりに並んで見つめる。

「そうだ、ねえねえ」

「はい?」

「このバッグ、買ってよ」

「え?」

「買ってくれたら、もう少しいっしょにいてあげる。お医者さんなんだから、それくらいのおカネ、持ってるでしょ」

 わたしは躊躇しました。

 まだ開業したばかりなので、膨大な借金をかかえていた。貯えはあるものの、贅沢できる身分ではない。けれど、初めて見る彼女の明るい表情に、心が揺れ動く。

「わかりました」

「キャ、ホント?」

「はい」

 彼女はいきなりわたしに腕をからめてきた。すると、ひじに何やらやわらかい感触が伝わってくる。それは乳房の感触だった。

 わたしは感激をおぼえ、彼女といっしょに店に入った。

 バッグは目が飛び出るほど高価だった。わたしはクレジットカードで、なんとか支払いを済ませる。

 その後、わたしたちは食事に出かけた。彼女の選択で、豪華なレストランに入る。

「ここ、芸能人もよく来るらしいのよ。ほら、あれ、お笑いのTじゃない?」

 いままで見せたことのない明るい笑顔で彼女はいう。

 目はパッチリと大きく、鼻筋が通って頬骨が高く、肉厚のある唇は締まりがゆるい。細い首に、大きな襟元から浮き出る鎖骨。肌の色は健康的な色合いを見せ、うつむけば乳房の谷間がはっきりと見える。

 わたしは緊張の笑みを浮かべ、彼女とのお喋りを楽しんでいた。

 飲んだことのないワインや食べたことのない料理を口に運び、楽しいひとときは終わりを告げた。伝票を見ると、これまたあきれてしまう値段が表示されていたが、やはりクレジットで済ませる。

「今度はどこ行く?」

「時間は大丈夫ですか?」

「平気、平気。お酒、飲みに行こうか」

 しゃれたバーに連れて行かれ、わたしはビールを、彼女はシャンパンをベースにした赤いカクテルを頼む。

「さすがお医者さまねぇ。シャンパンのカクテルを頼んでも、顔色ひとつ変えないなんて」

「そ、そうですか」

「わたし、なんだか好きになっちゃいそう」

 潤んだひとみで彼女はいう。わたしの身体は熱を帯び、汗が吹きだし、心臓が信じられない速さで鼓動をはじめた。

 その後、彼女は同じカクテルを2杯お代わりし、わたしたちは店を出る。勘定を見ると、あのカクテルのどこにそれだけの価値があるのか、と憤りをおぼえるほどの値段だった。

 その日から、わたしたちの正式な付き合いがスタートした。

 彼女はわたしと会うたびに、ネックレスや洋服、カバンや靴をねだる。そして食事は、寿司に焼き肉、フレンチ、イタリアン。

「そうそう、ドライブに行こうよ」

「ええ、でも、クルマが」

「買えばいいジャン」

「買う?」

「そう、おカネ持ちなんだもん。もちろん外車」

 とうとうわたしは定期預金を崩し、60回払いでベンツを購入する羽目になってしまった。

 けれど初めてのドライブの日、彼女はわたしにしなだれかかって告げた。

「きょうは帰りたくない」

 わたしはゴクリと唾を飲み込んでしまう。

「どこかでいっしょに朝まで過ごしたい」

「いいん、ですか」

「ええ、でもラブホはイヤよ」

 格式では日本国内でも1、2を争うホテル。さすがにスィートは無理だったが、ツインの部屋から見おろす夜景に彼女は感激してくれた。

「やっぱり、男はおカネとやさしさよね。見た目なんかより」

「そうですか」

「ねえ」

「はい」

「結婚して」

「はい」

 交代でシャワーを浴び、バスローブのまま抱き合い、ベッドに転がり落ちる。震える手で衣裳を脱がすと、彼女は下着をつけていなかった。

 薄暗い照明に浮きあがる光沢のある肌。胸から腰にかけてのラインは感嘆のため息を漏らすほどエロチックで、身体全体をムッチリとした脂肪が覆っている。ハト胸がちな胸板をより大きく盛りあげる両の乳房は輪郭がわきからはみ出し、色づいた乳首が乳輪の真ん中に納まっていた。

 わたしは苦しいほどの動悸をこらえながら、彼女に覆いかぶさる。

「うん、やさしく」

 乳房に吸いつき、下から持ちあげるように乳房を揉みほぐす。その感触は水を張った風船のようでもあり、味わいは幼いころに大好きだったカスタードプリンのようだった。

 わたしは無我夢中になって彼女の肉体をまさぐった。へそを舐め、薄い茂みに覆われた恥丘を舐り、ぬめりのあるヴァギナをさぐる。

「あん、そこ、イイ」

 わたしの愛撫に、彼女はキチンと応えてくれる。わたしはそれがうれしくて、飢えたイヌのように部分へしゃぶりついていく。

「あ、ああん、ステキ、気持ちいい!」

 甲高い喘ぎ声をあげながら、彼女はわたしの頭を押さえつけてくる。わたしはあふれ出る愛蜜をすすり、尖ったクリトリスを舐る。

「ああん、ヤン、いい、感じちゃう!」

 わたしはころ合いを見計らい、顔をはずして彼女にのしかかった。彼女は愛らしく、美しく、淫靡な表情を見せ、わたしの首に腕を絡ませる。

「わたしのわがまま、ずっと聞いてくれる?」

「ああ、もちろん」

「約束してね」

 わたしはそそり立つペニスを挿入した。

 彼女の内部は熱く潤い、わたしを素直に受け止めてくれた。そして、うねうねと膣襞をうごめかせ、しっかりと圧力を加えてくる。

「ああん、そう、いい、気持ちいい」

「いいですか、いいんですか」

「ステキ、ああん、もっと、もっとぉ!」

 歓喜にゆがむ表情。抽送をくり返せば、乳房がプルプルと揺れ動く。わたしは感動をおぼえつつ、脊髄が震えるほどの快感を甘受する。

「やん、ああん、イク、イッちゃう」

「ぼ、ボクもです」

「イクイク、ああん、いっょにイッて、やんあん、ダメ、いくいく、イクー!」

 彼女は達した。わたしは寸前に抜き取り、下腹部に精液を放つ。

「うん、中に出してくれてもよかったのに」

「でも」

「結婚するんだから。今度はちゃんと出してね」

「え?」

「大丈夫でしょ、もう1回くらい」

 わたしのペニスは射精でしなびていました。彼女はそれを認めると、身体をずらし、わたしの股間に顔をうずめ、しゃぶりついてくる。

「すぐに大きくしてあげる」

 絡みつく舌と唾液のぬめり。わたしはすぐに復活し、ふたたび彼女に挑んでいったのだった。

 半年後、わたしは分不相応な結婚式を挙げ、晴れて新婚生活をスタートさせた。新婚旅行はアメリカ西海岸からハワイ、オーストラリアとニュージーランド。それも彼女の希望だった。

 彼女の肉体と美しさに魅了されていたわたしは、それこそ毎日が楽しくてしかたがなかった。淫乱体質の彼女は、毎晩のようにわたしを貪欲に求めくる。わたしも忠実に応えていた。

 だが、結婚数ヶ月後くらいから、ある問題が浮上してきた。それは彼女の浪費癖だ。

 最初のころは、通販やデパートでの買い物、友人たちとの食事程度だったが、次第にエスカレートし、宝飾店や百貨店の外商が訪ねてくるようになる。

「ちょっと控えてくれないかな」

「なによ、医者の妻だから恥ずかしいカッコできないでしょ」

「けど、開業資金もクルマのローンも、まだ払い終えていないのに」

「働けばいいじゃない。医者なんだから、バカみたいにもうかるんでしょ」

 彼女は勘違いをしているようだった。けれど、わたしは逆らうこともできず、土日にはほかの病院でアルバイトをしなければいけないほど窮してしまった。

 ところが、そんなわたしの収入が追いつかないほど、彼女はものを買いあさった。わたしはとうとう、信販系や消費者金融のカードまでつくってしまい、過労もともって心身ともに追いつめられていくのがわかった。

 このままではダメになる、破産するか過労死だ、と考えたわたしは、離婚を決意した。

「そう、わかった」

 それを伝えると、彼女はあっさり承諾してくれた。その代わりに、彼女が買い求めた宝石や時計、服、電化製品は持ち出され、そのうえ慰謝料まで請求された。

 法的には慰謝料を払う義務は生じない。けれど、少なくとも当初のわたしは満足していたし、彼女に魅力を感じていたこともあって黙ってしたがった。

 それからわたしは再婚することもなく、この歳まで一人で生きてきた。仕事も軌道に乗って順調で、もうすぐ借金も返済できる。さびしくなれば風俗で処理をする。このほうがカネもかからなくていい。

 けれど、ときどき別れた彼女のことを思い出す。初めて見た彼女の明るい笑顔を。

  • 【選者紹介】
  • 長月タケオ(ながつきたけお)
  • 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
  • 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
  • 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
  • おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
  • 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
  • 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
  • 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
  • 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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