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このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長
【夏風邪のわたしを誘惑した下宿屋の出戻り娘】東京都在住H・Nさん(81歳)
学生時代は田舎を離れ下宿していた。いまの学生たちのようにマンションだ、アパートだという贅沢なものではなく、年寄り夫婦が住む一軒家の2階に間借りしていた。
3度の食事や洗濯などは下宿の老夫人がこなしてくれたので、わたしは何不自由なく勉学に打ち込むことができた。60年前も学問そっちのけで遊ぶ輩や、奇妙な主義思想に走る連中は多くいたが、わたしは世のため人のため、故郷に錦を飾るために夜遅くまで机に向かっていた。
そんな生活に変化を来したのは、ちょうどいまくらいの季節。梅雨も終わりかけの蒸し暑い時期だった。
老夫妻には一人娘がいて、嫁ぎ先との折り合いが悪く戻ってきた。年の頃なら10歳ほど年上の、目もとの涼しい美人だった。
細い身体だが胸のふくらみは大きく、田舎者のわたしが知ることもなかった色気を振りまいていた。
それから、わたしと下宿の老夫婦、そして、出戻り娘の生活がはじまった。
娘の名は麻紀。「子」のつかない名前もしゃれているとわたしは思った。
そんな麻紀さんは実家に戻ってきてから、かなり奔放な生活を送っていたように思う。どこを出歩いているのか、帰ってくるのは夜遅く。昼過ぎまで寝ていて、わたしが早くに学校を終えたときなど、まだ洗面所で顔を洗っているところに出くわすのもたびたびだった。
そんな麻紀さんと下宿の老主人が言い争っているのも、よく耳にした。「世間体が悪い」と主人が怒鳴ると、「石女に産んだ親が悪い」と麻紀さんは言い返す。
そのやりとりから、麻紀さんは子どもを産めない身体で、それが原因で離縁を言いわたされたことがわかった。
くり返すが、麻紀さんはきれいな人だった。ぽってりとした唇に、いつも潤んだひとみ。長い髪は漆黒の艶を放ち、近づくと甘い香りがする。遅くに風呂をもらうときなど、麻紀さんの匂いが充満し、ときには湯船に長い髪が浮いている。それどころか縮れた陰毛らしきものが浮いているときなど、わたしはたまらず自慰にふけってしまうことがあった。
そんなある日、わたしは風邪をこじらし、寝込んでしまった。
夏の風邪は治りにくい。老婦人が粥やうどんを運んでくれるが、どうにも喉に通らない。けれど、このときほど、まかないつきの下宿を選んだことに感謝したときはなかった。
それでもわたしは、勉強が遅れることを危惧し、少しでも調子がよくなると机に向かった。それが災いしたのだろう、わたしの病状はますます悪化し、もはや頭をあげることもできなくなっていた。
焦る気持ちをおさえつつ寝床に横たわっているわたしのところへ、麻紀さんが訪ねてきたのは、雨の降る午後だった。
主夫婦は留守にしていて、わたしの看病を任されたという。
「すごいわね、この本、全部読んだの?」
麻紀さんは、わたしの本棚に並ぶ書籍を見ていった。
「でも、勉強ばかりで身体を壊しちゃ、意味ないわよね」
黒いワンピース姿の麻紀さんは、そういう。わたしは返事をするだけで精一杯だった。
「熱はどう? まだ苦しいの?」
麻紀さんは、突然そういってわたしの額と自分の額を合わせた。
間近に迫る華麗な顔。わたしは身体が震え、心臓が早鐘のように鼓動するのを知る。
「あら、苦しそう。大丈夫?」
そんなわたしを見て麻紀さんはいう。
「汗かいてる。着替えなくっちゃ」
麻紀さんは着替えを取り出すと、わたしの身を起こし、汗でじんわりと濡れた寝間着を脱がしはじめる。
そのなめらかな指の感触、そして間近に感じる女の匂い。
バテマラというやつか。身体がどうしようもなく疲れているときなど、不意に息子が大きく勃起することがある。そのときのわたしもそうだった。
風邪でうなされ、起きあがることも、考えることもできないのに、息子だけがビンビンに勃起しはじめた。
「あら」
そんなわたしを見て、麻紀さんは驚いた表情を見せる。
「風邪で死にそうなくせに」
麻紀さんはそういって、妖しくほほ笑んだ。
「そうね、もっと汗をかいたほうがいいかも知れない」
麻紀さんはわたしの寝間着をはがし、下着も脱がせると、直立した息子を手に取り、おもむろに顔を近づけ舌を伸ばした。
「ああああ、うう……」
うわ言しかいえないわたしは、それでも伝わる感触に声をあげるしかなかった。
なめらかで温かでやわらかい舌の動き。やがてわたしをすっぽりとほお張ると、その感触はいっそう強く伝わってくる。
「ふぅううん、うん……」
ため息を漏らしながら、麻紀さんは大きく首を上下させ、わたしを呑み込む。その麗しい顔面にわたしの醜い息子が突き刺さるさまは、見ているだけで興奮を禁じ得ない。
やがて、麻紀さんの動きは大きく早くなる。髪の毛が大きく揺れ、身体全体でわたしに愛撫を加える。
「うううう、ううう……」
「ん、はぁん、出ちゃうの? いいわよ、出して」
麻紀さんはぢゅぷぢゅぷとよだれを垂らしながら、わたしにむしゃぶりついてきた。わたしは我慢できなくなり、そのまま麻紀さんの口の中に射精してしまう。
麻紀さんはしばらく身動きせずに、吐き出されるわたしの精液を受け止めていた。そして、すべてを口腔に溜めると、喉を鳴らして飲み込んだ。
わたしは虚脱と倦怠をおぼえ、しばらくは小指1本、動かすことができなかった。
「ふふふ、どう、気持ちよかった?」
唇を舌でぬぐいながら麻紀さんはいう。わたしは首を上下させるしかない。
「でも、これじゃあ、汗かかないわね。もっと激しくしなきゃ」
麻紀さんはそういうと、すくっと立ちあがってワンピースを脱ぐ。そして、下着も全部はずし、わたしに裸体を披露してくれた。
透き通るような白い肌に、見あげれば顔が隠れてしまうほど実った乳房。陰部を覆う茂みは薄く、肉の亀裂がぱっくりと口を開けている。
「もう一度舐めてあげる。その代わり、わたしのも舐めて」
麻紀さんはわたしの顔をまたぎ、しなびていた息子をふたたびしゃぶりはじめた。わたしは意識がもうろうとしながらも、麻紀さんの陰部にしゃぶりつく。
「ああん、そうよ、そこ、うん、気持ちいい」
麻紀さんの部分からは、ねっとりとした汁がにじみ出し、わたしはそれをすする。やがて、またもや勃起したわたしを、麻紀さんは馬乗りになって陰部に迎え入れる。
「あ、うん……」
麻紀さんは大きく腰を振り、身体を上下させる。
「やんやん、ああん、気持ちいい、ああん、届くぅ」
麻紀さんの中はぬめぬめとやわらかく、発熱したように温かかった。そのうえ、わたしにとっては初めての性体験だった。
一度口で果てたにもかかわらず、わたしは2度目の射精を迎えてしまう。
「あ……、ああん、もうイっちゃったの? もう」
麻紀さんは不満げな様子だったが、表情はやわらかだった。
それから、わたしと麻紀さんは、老夫婦のすきを見て、互いにむさぼり合った。
年寄りの夜は早い。寝静まったころを見計らい、麻紀さんはわたしの部屋を訪れる。そしてわたしは誘惑に負け、麻紀さんの身体を堪能し、妊娠しない身体であるのをいいことに、全部をその妖しく美しい身体の中に吐き出すのだった。
けれど、わたしはその下宿を引き払った。理由は留年が決まったからである。後ろ髪引かれる思いだったが、苦労して学費を捻出してくれる親に迷惑はかけられない。
出ていく日、麻紀さんはわたしを見送ってくれなかった。理由はわからない。でも、それはそれでよかったと、いまでも口にするときがある。少し胸が痛みはするが。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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