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中高年の性告白

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【中高年の性告白】第183回「定年後に英会話教室で回春」埼玉県在住Y・Yさん(67歳)

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このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長

【定年後に英会話教室で回春】埼玉県在住Y・Yさん(67歳)

 娘は10年前に留学先で相手を見つけて結婚した。その後、子どもが産まれ、いまは小学校にかよっている。父親の血を多く引き継いだらしく金髪碧眼であるが、なんといっても初孫だ、かわいいのに変わりはない。

最近はたどたどしい日本語で手紙を送ってきてくれたりもするが、電話となるとほとんど日本語が通じない。それではいくらなんでもあんまりだ、ということで英会話を習うようになった。

 60歳の定年後、65歳まで嘱託で勤務していたが2年前に退職した。時間はあり余るほどある。それに、一日中ブラブラしていると、古女房が明らかにいやな表情を浮かべる。

本当のところ、英会話教室へかようことをすすめたのは、女房のほうだ。
「なにもしないでボーっとしてると、ボケるわよ」

 それもそうだし、まったく心得がないわけでもない。大学は英文科卒だし、商社勤めだったので海外の取引先も多かった。

ただ、文法や形式的な会話はなんとかなるが、最近の流行言葉やスラングが心もとない。60の手習いと覚悟を決め一念発起、わたしは近くにある教室にかよいはじめた。

 娘と同い年くらいの外国人講師に教えられ、わたしはむかしおぼえた単語を思い出しながら悪戦苦闘していた。しかも、かよっているのは20代から30代の若者ばかり。

それでも基礎英語はたしかだから、講師からほめられることもあり、臆することなく授業を続けることはできた。

 ある日、大学4年生のTという青年が話しかけてきた。

「すごいですね。失礼ですけど、正直、最初見たときは、こんなおじさんが大丈夫かな、と思いました。けど、ボクなんかよりも発音なんか、ずっとおじょうずで感心しました」

 同じような思いは、ほかの生徒たちも持っていたらしい。そんなこともあって、最初は若い世代に混じって講習を受けることに抵抗を感じていたが、次第に仲よくうちとけるようになっていた。

 彼らは髪の毛を染めていたり、耳にピアスをはめてみたり、服装もだらしなく見える。しかし、礼儀正しく、言葉づかいや考えもしっかりしていて、わたしたちの若いころのほうが、もっと頼りなかったのではないかという気がしてきた。
英会話を習うのも、海外に留学したいとか、世界を飛び回る仕事に就きたいとか、英米文学を原書で読みたいとか、目的がはっきりしている。

わたしは彼らと接するのが楽しくなり、また、若い人たちの話を聞いていると自分自身も若返るような気がしてきたのだった。

 年の瀬も押し迫ってきたころ、レッスンが終わるとTくんが忘年会をしないかと誘ってきた。ちゅうちょしてみたが、会社を辞めてから宴会というものにはとんと顔を出していない。それに、そのころになると彼らの話を聞くのが楽しみになっていた。

わたしはTくんの誘いに応じ、用意された居酒屋に顔を出した。

 集まっていたのは同じ教室のかよう若者たちだった。すでに社会人になっているものもいるが、ほとんどが学生だ。

わたしが到着するとみんなは拍手喝采で迎えてくれた。照れながらも上座に座らされ、ビールがそそがれて乾杯をした。

 普段は礼儀正しいとはいえ、そこはまだまだひよっ子たち。宴が進むに連れ話がはずみ、だれもがまっ赤な顔をして無礼講状態となった。Tくんも呂律の回らない話しかたでわたしにあれこれたずねてくる。

「YさんはM物産に勤めてたんですよね。いいなぁ、ボクみたいな三流学生には夢のまた夢だ」

「そんな、たいしたことないよ」

「たいしたことない~! よくいいますよ。ボクはね、どうして英会話を習ってるか知ってますか」

「仕事で海外に出るのが夢なんだろ」

「あれ? なんで知ってるんです?」

「この前、話してたじゃないか」

「あ、そうか~。そうなんですよ。世界をまたにかける商社マンがボクの夢なんです。でもね、ダメなんですよ。M物産、S商事、ことごとくフラレちゃって。残るは三流商社ばかり」

「T! 何をからんでんの?」

 そのとき、わたしたちの間にKという女の子が割り込んできた。彼女も大学生。海外留学が夢らしい。

「Yさん、年長者、人生の先輩として相談に乗っていただけませんか?」

「ん? なに?」

「コラ、K! オレが先だろ!」

「アンタは黙ってて!」

 髪を短く切りそろえ、チャーミングな顔立ちをしたKさんはTくんを突き飛ばす。

「じつはわたし、つき合ってる人がいるんです。でも、わたしの夢は海外留学。彼をとるか夢をとるか迷ってるんです」

「それは難しいな」

「彼は年上で社会人だし、わたしといっしょに行くのは無理。でも、夢は捨てきれないし」

「じゃあ、オレとつき合え。オレならよろこんでついてくぞ!」

「もう、酔っ払い!」

 しなだれかかるTくんをKさんは払いのける。

「わたしの娘も留学してるんだ。向こうで相手を見つけて結婚したけれど」

「へえ、そうなんですか」

「残酷なようだけど、夢は一度限り、男はチャンスがあればいつでも見つかる。後悔ていうのは、しなかったときのほうがダメージが大きい。それに、本当に好きなら彼氏も待ってくれるだろうし、いまならメールとかSNSで簡単に連絡も取れるだろう」

「ですよね。わたしもそう思ってたんです」

 にこやかにほほ笑んでKさんは頭をさげる。そのとき、うつむいた襟もとから白い素肌が乳房の谷間まで見えた。

「じゃあ、オレもいいですか」

 今度は社会人1年生のOくんが話しかけてきた。

「猥雑な話で恐縮なんですけど、わたし、風俗の女の子を好きになってしまったんですよ」

 先輩に連れられてヘルスに行った。そこで出会った女の子に、ほれてしまったというのだ。

かわいいし、彼好みのトランジスタグラマー。

「そのうえテクニックがすごくって」

「ねえねえ、風俗ってどんなコトしてくれるの?」

 興味をおぼえたのか、Kさんがたずねてくる。

「え……、いや、口で……」

「口? フェラ?」

 愛らしい童顔をしたKさんから淫猥な言葉が出て、わたしもOくんも驚いてしまう。

「そ、そう……」

「ヤダなぁ。わたしなら本番のほうが我慢できるな。だって、好きでもない人のオチンチン、舐めるだなんて信じられない」

 彼女の言葉に、もう一度目を丸くする。そのようすを、あっけらかんとした表情でKさんは見つめる。

「わたし、なんか変なこといいました?」

「い、いや……」

 傾城の恋は真の恋ならず。風俗嬢が悪いとはいわないが、慎重になったほうがいい、とわたしはOくんにアドバイスした。

 宴はますます盛りあがり、わたしもかなり飲んでしまった。しかし、心は軽く気分も快活だ。

こんな気分は久しぶりだと思いながら、わたしは若者たちを見つめ愛好を崩していた。

 二次会にも誘われたが、いくらなんでもここは遠慮すべきだろうと考え、その場を辞した。真冬の風が吹きすさんでいたが、気持ちはホカホカと暖かかった。

「けど、あの子があんな言葉を」

 フェラ、本番、オチンチンを舐める。いまどきの女の子は全部、ああなのだろうか。それとも彼女だけなのだろうか。

思いながら歩いていると、チラリと見えてしまったKさんの乳房が頭に浮かぶ。もちろん谷間とかすかな輪郭だけだが、艶やかな光沢を放ち、きめ細やかでなめらかな弾力を誇示し、そのうえ豊満な盛りあがりを保った部分が久々の興奮をあたえてくれる。

「ただいま」

 わたしは少しもやもやした興奮をおぼえながら家に到着した。

「お帰りなさい。どうだった?」

「いやあ、若い人たちに囲まれて少し疲れた。やっぱり、彼らのバイタリティには負ける」

 わたしはリビングのソファーに腰かけていう。

「当たり前でしょ」

 にこやかな表情で女房は迎えてくれる。すでに寝間着に着替えていて、風呂からあがったばかりなのか、かすかにほほが上気している。
わたしはそんな女房を見て、妙な気分をいだいてしまった。

白い襟足、丸まった腰つき、そしてほのかににおう石鹸の香り。

「お風呂にする。それとも軽く何か食べる?」

「いや、そんなことより」

 わたしはいきなり背中から抱きついた。

「や、何するの」

「いいじゃないか」

 そのまま唇をふさぎ、押し倒す。頭の中には、ふたたびKさんの白い素肌が浮かびあがる。

「や、やめて、やめてったら……」

 そういいながらも、わたしが乳房を揉み、秘部に手を伸ばすと、女房はあらがいを見せなくなった。

わたしはそのまま女房の服を脱がし、自分も裸になって交接をはたす。わたしの一物は若いころのように怒張していた。

悶える女房。わたしは思うがままにつらぬき通し、無上の快感をえたのだった。

 英会話教室には、それからもかよい続けた。Tくんは、小さいとはいえ、外資系の企業に就職が決まり、海外出張もこなしているらしい。Kさんは彼氏をあきらめオーストラリアへ旅立った。

Oくんは、その後どうなったのかわからない。仕事が忙しくなって教室をやめてしまったからだ。

 それでも、新しい若者たちが訪れてくる。彼らはわたしをしたい、仲よくしてくれる。わたしも彼らといると気分が若返り、最近は肌艶もよくなってきた。

もちろんアッチのほうも元気そのもので、最近の言葉でいうと「ヤバい」くらいに超バリバリだ。

年をとったからといって、同じような輩とばかり付き合うより、少し勇気を出して若者たちの中に混ざるのをおすすめしたい。

  • 【選者紹介】
  • 長月タケオ(ながつきたけお)
  • 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
  • 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
  • 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
  • おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
  • 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
  • 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
  • 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
  • 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集

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