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キャッチアップ
このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長
【アルバイト先にいた熟女の誘惑】大阪府在住K・Yさん(61歳)
大学生時代、運送会社で仕分けのアルバイトをしていた。高校時代は柔道で鍛えた身体なので力仕事は得意。そのうえ深夜勤務をこなすとそこそこのカネになり、貧乏学生のわたしにはありがたかった。
アルバイトを使ってまで荷物を分けさせるほどだから、会社はかなりの規模だった。同じようなアルバイトのほか、運転手に事務員と従業員もかなりの数だ。けれど、職場自体が男臭いところなので、色気とはまったく無縁だった。
そんな中に里子という40過ぎの事務員がいた。歳はとっているが色白で、目鼻立ちもすっきり整っている。うわさに聞くと、ここにくるまでは水商売をしていたらしい。そういわれれば、どことなく玄人っぽい仕草や雰囲気を感じさせる女だった。
とはいうものの、20歳を過ぎてまだ間もないわたしだ。四十路といえば母親に近い年齢である。セクハラなどという言葉がまだ存在しない時代。中年運転手たちは卑猥な言葉で里子をからかい、彼女も軽くあしらっていたが、わたしはまったく興味をいだくことができなかった。
それは8月半ばの出来事。
夏期休暇でバイト仲間のほとんどが帰省したり旅行に出かけてしまい、仕分けをしていたのはわたし一人だけだった。お盆休みで荷物の量は少ないが、それでも会社は稼動している。夜遅くまで汗を流して働いていたわたしは、ようやく作業を終え、タイムカードを押すために事務所に入った。
「遅くまでご苦労さま。少し休んでったら」
そういって声をかけてきたのは里子だった。
彼女はわたしをソファーに座らせ、冷えた麦茶を用意してくれた。のどがカラカラだったわたしは一気に飲み干し、大きくため息をついた。
「実家には戻れへんの?」
里子はお代わりを入れながら話しかけてくる。
「はい、ボクには田舎がないもんで」
「ほな、土地の人なんや」
「そうです。生まれも育ちも大阪です」
「それにしても、エエ身体してんなぁ。なんかスポーツしてんの?」
「中学高校は柔道部でした」
「へえ、それでなんや」
彼女、は少し潤んだ目でわたしを見つめる。その視線に危ういものを感じ、わたしは席を立とうとした。
「あれ、もう帰んの?」
「は、はい、仕事も終わったことやし」
「もうちょっとエエやん。タイムカードは時間きっちりに押さんともったいないで」
規則で勤務時間は半時間刻みだった。つまり9時55分に終えても9時半まで、10時29分なら10時までの計算となる。壁にかけられた時計を見ると10時45分。中途半端だといわれれば、そのとおりだ。
「ホンマ、遅までがんばるんやね」
里子はいつの間にかわたしのとなりに座る。
「ええ……、そやけど、きょうはまだ、早いくらいで」
「ウチもね、きょうは残業。ほかの人は全部帰ったねん」
「そ、そうですか……」
「そやから、この会社には、いまアンタとウチの二人だけ」
里子は妖しい視線をわたしに送ってくる。緊張をおぼえたわたしは、もう一度時計を見あげるが、針は5分と動いていない。
「なあ」
「はい」
わたしは若干裏返った声で返事をする。
「ビールでも飲めへん?」
「え?」
「会社の冷蔵庫に冷やしてるねん。ドライバーさんが飲むように」
決して許されないことだが、当時の運転手たちは水やお茶の代わりにビールを愛飲していた。なかには景気づけだといって、ハンドルを握る前に1杯飲んでいく輩もいた。もちろん、法にふれる行為ではあるが、当時は今ほど飲酒運転に対して厳しくはなかった。
「持ってくるな」
そういって里子は立ちあがる。わたしはホッと安堵の息を吐く。
汗をかいた瓶ビールと、グラスを2つ持って彼女は現れた。そして、ふたたびわたしのとなりに座ると両手で持ったビールを差し出した。
「どうぞ」
「あ、いただきます」
グラスを手にして恐縮するわたし。飲めないほうではない。というよりも、どちらかといえば好きだし強い。
わたしはなみなみとそそがれたグラスを口に運ぶと、一気に飲み干した。
「あら、強いんやね。もう1杯」
「あ、どうも」
里子がむかし水商売をやっていたといううわさは、まんざらウソでないと思った。瓶の持ち方、グラスへのそそぎ方、そしてお代わりのすすめ方が、どことなく板についている。
「ウチもいただいてエエかしら」
「あ、どうぞ、どうぞ」
自分のカネで買ったものでもないのに、わたしはそう答えてしまう。
あっという間に1本目が空き、そして2本目、3本目。強い体質だが、空腹で、しかも里子がとなりにいるという緊張も手伝って、わたしは少し酔っていた。
「ホンマ、強いんやね。お酒の強い人ってウチ、大好き」
里子も酔っていたのだろうか、ほほを赤らめ、ホステスまがいの口調でいう。
「そうですか」
「それに、この筋肉。男の人はやっぱり、こうやないと……」
里子はわたしの腕をさすり、胸板をなではじめた。その感触に、わたしは思わず陶然となってしまう。
「若い肌ってきれいやわぁ。汗のにおいも違うし」
「そ、そ、そう、ですか」
しなだれかかってくる里子。熟女には興味のなかったわたしだが、その感触と立ちのぼる甘い匂いに興奮をおぼえてしまう。
里子の手はわたしの身体中をまさぐりはじめ、とうとう股間にまで伸びた。わたしの一物はすでに大きく勃起している。
「ここも大きて固い」
そうつぶやいた里子は、いきなりズボンをおろしブリーフを脱がす。
わたしには、あらがうすべが思いつかなかった。というよりも、里子がすり寄ってきた時から、期待をいだいていたのかもしれない。
歳をとっても女は女。そして里子には、若い女にない熟れた色香がそなわっている。
わたしは彼女のなすがままになった。里子は怒張する一物を手に取ると、ゆっくりとしごき、そしていきなり口にふくんだのだった。
「ふうん、美味しい」
艶然とした笑みを浮かべながらしゃぶりつく里子。ぬるりとした温かい感触に、わたしは思わずうめき声をあげてしまう。
「どうなん? 気持ちエエ?」
「は、はい」
「ふふ」
舌をサオに絡ませながら、里子は首を振りはじめる。伝わる強烈な快感に、わたしは天をあおぎ、固く目を閉じてしまう。
「アカン、ウチももう我慢でけへん」
わたしを散々舐りつくした里子は、うわずった声でそういった。
「ウチの中に挿れてエエ? なあ、エエやろ」
「中に」
「そう、ウチのオ×コにアンタのチンチン、挿れてエエやろ」
里子の目は、完全に欲情したメスのものへと変化していた。そして、わたしの返事を待たず、ストッキングとパンティを脱ぐと、またがって内部へ迎え入れたのだった。
「あ……、刺さってる、太いのん、刺さってる」
女の経験はある。飛田や信太山に買いに出かけたこともある。けれど、煌々と明かりのたかれた中で、しかも昼間は大勢の人間が右往左往する事務所の中で、服を着たままの女を抱くのは初めてのことだ。
だれかに見つかりはしないかという不安をおぼえながらも、わたしは里子の締めつけや愛液のぬめりを感じ取っていた。里子はそんなことまったくおかまいなしに、喘ぎ、悶え、よがっている。わたしの肩に手を置き、あごをあげて腰を振りながら、部屋中にひびき渡る嬌声をあげる。
「あああん、ああん、アカン、アカンて、イクイク、気ぃ、イッてしまう」
ガクンガクンと身体を揺らし、里子は達した。わたしは寸前で暴発をこらえる。しばらく茫然自失となっていた里子だが、わたしがまだなのを知ると、羞恥をふくんだ笑みを浮かべていった。
「ごめん、ウチだけ勝手に……」
「いえ」
「ごめんな、心配せんでもちゃんとイカせたるし」
里子は、わたしからおりると床にしゃがみこんだ。そして、自分の淫汁で濡れた一物をほおばる。うごめき絡まる舌使いと吸い込み。わたしはそのまま、里子の口にほとばしりを放ったのだった。
その後も里子は何度もモーションをかけてきたが、わたしは応じる気になれなかった。すると、彼女は冷たく接しはじめ、無視するどころかちょっとした失敗や遅刻にも厳しく叱責をあたえるようになる。いたたまれなくなったわたしは、バイトを辞めた。
今になって、あの日、本当に里子は残業で残っていたのだろうかと思ってしまう。ひょっとして、わたしとの行為を期待して待っていたのではないかと考える。
40年近くも前のことだし、里子が生きていたとしても80を超えているはずだから、たしかめる方法もないが。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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