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キャッチアップ
このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長
【友人の許婚と寝た過ち】香川県在住I・Kさん(57歳)
いまから30年ほど前の夏、友人に許嫁ができたと聞いた。わたしは早速、紹介しろといった。
その男はチビでヤセの公務員。幼いころからスポーツが苦手で勉強も中の下だ。
だから、どうせ大した女じゃないだろうと思ったが、少なくとも当時独身のわたしより先に結婚するのだ。単純に祝福してやろう、もしくはこんな男を気に入る物好きを見てやろうという気持ちでアパートに招待した。
土曜日の晩、わたしは酒とつまみを用意して二人を待った。
「ごめん、ごめん、遅くなって」
あわてる友人のうしろに一人の女性が立っている。
「紹介するわい。オレの許嫁」
「ユリカです」
頭をペコリとさげて、その女は会釈した。わたしはその姿を見て驚いてしまった。
真っ白な肌にすらっとしたスタイル、目鼻立ちのはっきりとした顔立ちに、艶やかに光る長い髪。そして身につけていたブラウスの胸は、大きく盛りあがっている。
「ん? どうした?」
言葉も出せないわたしに友人はいう。
「い、いや……」
わたしは努めて平静を装い、彼女を部屋の中央に招き入れた。
わたしはそこそこいける口だが、友人はまったく飲めない。だから、酒もビールも少ししか用意していなかったが、ユリカは相当の飲み助。チビチビと麦茶をすする友人を尻目に、カパカパとグラスを空けていく。
「ところで、二人のなれそめは?」
「見合いじゃわい。親戚の紹介。わしってさ、自分でいうのもなんやけど、あんまりもてるタイプやないじゃろ。じゃけん、ビックリしたわい。彼女の方からOKの返事もろうたときは」
友人のいうとおりだ。ユリカは得意げに話す彼とは対照的に、黙って飲み続けている。そして、時おりつくり笑顔を浮かべるだけで、とてもじゃないが楽しそうには見えない。
「ユリカさんは、こいつのどこがよかったの?」
わたしは話を振ってみた。
「え~、公務員てところかな。それに、浮気のできんタイプやし」
一瞬にして場が白けた。彼女の言うことはもっともだが、本人を目の前にしていうべきことではない。
気まずい雰囲気が流れる。そのとき、気を利かせた友人がいった。
「さ、酒、もうないわいなぁ。買うてくる」
「ええよ、わしが」
「ええ、ええ。最初はお前が用意したんやけん、今度はわしが買うてくる」
彼はそう言って部屋を出ていった。
残されたわたしは、ユリカを前にして緊張していた。言葉づかいや態度に問題があったとしても、美形であることには違いない。
「暑いね、この部屋。クーラーないん?」
「ごめん、扇風機しか」
「アナタって、あの人と知り合うてどれくらい?」
「高校時代からじゃけん、かれこれ10年かな」
「むかしから、あなんの?」
「え?」
「臆病でさ、頼りのうてさ、女のウチにペコペコしてさ」
わたしはかすかに憤りをおぼえた。たしかに彼女のいうとおりだが、友だちを面と向かってバカにされ、気分のいいヤツはいない。
「そなん男と結婚しようって女もどうか思うけど。しかも見合いで」
「はっきりいうやない。やけど、そのとおり。親に無理矢理。困ってんのはこっち」
「偉そうなこといって。親にも逆らえんお嬢ちゃんか」
「借金があるんよ」
「え?」
「バカしてしもうてね。前の男の責任で借金があるの。男はどっかにトンズラしてしもうたけど、ウチ名義で数百万の借金があるの。けどさ、親がいうこと聞けばチャラにしたるっていうけん」
「そなんで?」
「そなん? ウチにとっては大問題よ。やくざが取り立てにくるし、もう少しで売り飛ばされそうにもなるし。まあ、自業自得やけどなぁ。それに、歳も歳じゃけん落ち着くにはええかなあって」
何度も髪をかきあげ、ユリカはいう。わたしはいつしか、はっきりした物いいの彼女に好感をおぼえる。
「そやけど、そなんけん長続きするの?」
「わからん。イヤになったら別れればええし」
「そなんもんかなぁ、結婚て」
「少のうともウチにとってはそうなん。そやけど、子どもはほしいかな。カワイイ赤ちゃん。ふわふわでニコニコした赤ちゃん。ウチに似とるとええな」
かいま見せる女の子らしい表情。わたしの想いはよけいにつのる。
「すまん、すまん、開いてる店がのおて」
コンビニは存在したが、田舎のことなので距離もあるし、当時は酒類を売っていない。友人は夜の街を、アチコチ探し歩いていたらしい。
それから宴はふたたびはじまり、ユリカは無口な女に戻った。
時間が過ぎ、夜もふけ、友人はそろそろ帰ろうと提案した。
「え? もう帰るん? ウチはまだ……」
ユリカは呂律のまわらない声で言った。
「けど、悪いし」
「まだ飲むのぉ。なんならアンタ、先に帰れば?」
その言葉に、わたしは邪な思いを起こす。
本来なら、無理矢理にでも友人と一緒に帰らせるべきだ。友だち同士とはいえ、許嫁を一人、独身の男の部屋に残していくべきではない。
だが、そのときわたしもかなり酔っぱらっていた。前後不覚というわけではないが、物事の善悪がつきにくくなっている。
「彼女もそういうてんやし、一人で帰れよ」
普通なら、そんな言葉に反発をおぼえるはずだ。けれど友人は、仕方ないという表情でいう。
「わかった。あんまり飲み過ぎんように」
お人好しにもほどがある。彼はそのまま、わたしの部屋を出ていった。
「さ、邪魔者はおらんくなったし。飲み直しましょ」
夜はどんどんふけていく。彼女は身体を左右に揺らしながらグラスに酒をそそぐ。
「お、おっと……」
その拍子に手元が狂って、ブラウスとスカートを濡らしてしまう。
「あ、タオル」
「う~、ええ、脱いでしまう」
いうが早いか、ユリカはブラウスを脱ぎ、スカートをおろした。
シミーズ1枚姿になったユリカは、床にあぐらを組んで飲み続けた。わたしは目のやり場に困りながら、チラリチラリと様子をうかがう。
着痩せするタイプなのか、薄着になると思ったよりもふくよかな肉づきをしている。ムッチリとした太ももにはハリがあり、グラスからこぼれるしずくが玉になって転がり落ちる。
「なん見てんのよ」
首を振って髪を揺らし、妖しい笑みを浮かべて彼女はいった。
「なあ、ウチってきれい?」
少し前屈みになってユリカはたずねる。そのときシミーズの肩紐がずれ、ブラジャーから胸の谷間があらわになった。
「なあ? ウチと寝てみたい?」
「え!」
「アンタ、なんやら気に入ってしもうた。あいつと結婚したら、しばらくおとなしゅうせないけんのやもん。いまがチャンス」
ちゅうちょするわたしにユリカはにじり寄ってくる。わたしはあとずさりするも、とうとうつかまってしまう。
ユリカは唇を突きだし、重ねてくる。ネットリとした舌の絡まり。わたしの良識はそこで吹っ飛んでしまった。
「ええい!」
わたしはユリカを押し倒し、シミーズをはいだ。あらわれたのは小さなパンティーと巨大な乳房をおおうフリルつきのブラジャー。わたしはそれをずらし、乳肉をわしづかみにする。
「ああん!」
全く抵抗を見せず、されるがままになるユリカ。わたしは大急ぎで裸になり、彼女の下着に手を忍ばせる。
ユリカの部分は早くも潤っていた。ウネウネと呼吸する肉ビラをかき分け、指を挿入させる。
「あん、いい、いやあん、気持ちいい!」
甲高く嬌声をあげる。わたしは内部をかき混ぜながら乳首を吸う。ユリカは敏感な反応を示し、屹立する肉棒に手をそえてくる。
「これが入るんやね。ステキ」
わたしはユリカのパンティーをずらして吸いついた。
わたしの股間はユリカの顔面にある。彼女も口で愛撫してくれる。互いの部分を舐め合いながら、わたしはあふれ出る淫汁をすする。
「やああん、もういい、いい、お願い、挿れて!」
わたしは、絡みつく舌の動きをまだ味わいたいと思いながらも、態勢を入れ替えて両脚を割った。
「はやく、はやくぅ」
ねだるユリカ。わたしは肉裂に先をあてがい、ググッと押し込む。
「やあああん!」
腰をかかえて貫き通すと、よろこびを満面に浮かべてユリカは喘ぐ。わたしは性急に抽送をくり返し、やがて内部に迸りを放ったのだった。
数ヶ月後、友人とユリカは結婚した。式に呼ばれたわたしは、緊張の面もちで二人を見守った。
「あいつにしては上出来だよな」
花嫁衣装のユリカを見て同席の輩がいう。
「ああ」
わたしは言葉少なに答えた。
予想に反して二人の結婚生活は長続きし、母親にそっくりな娘も授かった。わたしとの交友関係も途絶えず、いまも正月には年賀状が届くし、ネットのSNSでもつながっている。もうすぐ孫が生まれるらしい。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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