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昭和官能エレジー第31回「年上少女の誘惑」長月猛夫

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昭和官能エレジー第31回「年上少女の誘惑」長月猛夫

この官能小説は、現在50代から60代の方々の若かりし時代を舞台背景にしています。貧しかったけれど希望に満ち溢れていたあの頃、そこには切なくも妖しい男と女の物語が今よりも数多く存在しました。人と人とが巡り合う一瞬の奇跡、そこから紡がれる摩訶不思議な性の世界をお楽しみください。 編集長

【年上少女の誘惑】長月猛夫

 勉の実家は、関西のとある海水浴場の近くにあった。

 普段は閑散とした漁村だが、夏になると都会から大勢の人間が訪れてくる。ただ、さほど名の知れたところではないので、海水浴客がイモを洗うといった状態ではなく、家族連れが波打ち際でチャプチャプと戯れるような、のどかな場所だった。

 海岸は小高い山の麓にひろがっていて、その頂付近には数軒の別荘が建っていた。村には民宿程度しか宿泊施設がなく、余裕のある人たちはそこで寝泊りし、避暑を楽しんでいた。

 勉が中学3年生のとき、一人の少女と出会った。別荘に泊まっていた高校生で、名前は有里奈。色白で背が高く、長く伸ばした素直な黒髪と、大きなひとみが印象的な少女だ。

 その日、勉は八百屋を営んでいた親の手伝いで、自転車をこぎ、野菜を別荘の一つに届けた。その帰りに勉を呼び止めたのが有里奈だった。

「ねえ、本屋さんないかしら」

 有里奈は白いワンピースを身にまとい、縁の広い帽子をかぶって日傘をさしている。浜風が山裾から吹いてきて、友里奈のフリルのついた長いスカートを少しだけまくりあげた。

 勉はブレーキをかけ、サドルに座ったまま答える。

「本屋やったら駅前まで行かなあかんで」

「駅前? どれくらいかかるの?」

「歩いて30分くらいかなぁ。雑誌やったら村のよろず屋で売ってるけど」

 有里奈は困惑の表情を浮かべる。

「有里奈が欲しいのは文庫本」

「ほな、無理やなぁ」

 有里奈は愛想なく答える勉を見て、媚を売るように身をくねらせた。

「ねえ、駅前まで乗せてってくれない?」

「え?」

「自転車ならすぐでしょ。お願い、この通り」

 片目をつぶって手を合わせる。フランス人形を思わせる可憐な仕草と表情。空気を白く輝かせる真夏の光の中で、石英のかけらを散りばめたように有里奈の姿はきらめく。

 田舎の村には存在しえないたたずまいを見て、勉は胸の奥が締めつけられる感慨を知った。

 自転車の荷台に有里奈を乗せ、駅前まで勉は走る。有里奈の両腕は勉の腰にまわされていた。

 やわらかな圧迫が勉の神経を過敏にし、見慣れた海辺の風景が、薄い水彩絵の具で描かれたかのようににじんで見える。

 本屋の前に到着し、勉は自転車を停め、ガチャリとスタンドを立てる。有里奈は軽やかに身をひるがえし、乾いた地面におりた。

「待っててね」

「え?」

「だって、歩いて帰れないでしょ」

「そら、まあ……」

「それとも、なにか用事でも?」

「いや、別に」

「じゃあ、待ってて。すぐに戻るから」

 いい残して有里奈は書店に入る。しかし、10分が過ぎ、20分が過ぎても戻ってこない。

「なんだよ」

 勉は店の中をのぞいてみる。有里奈は本棚を前にして、どれを買おうか迷っていた。

 背の高さは勉より、少し高い。背中をそらして棚の上のほうをながめれば、腰まで髪の毛が垂れさがる。

 つつましやかな胸のふくらみと丸みを帯びたヒップライン。身体全体の曲線が、薄暗い店内を切り取るように浮かびあがっている。

 勉は、そんな有里奈の様子を見つめる。すると、癒されつつあった胸の締めつけがよみがえってくる。

 心臓の鼓動が早くなり、体温が上昇する。腹の中ほどが重くなり、筋肉がかすかに引きつって太ももの周りが弱くしびれる。

「お待たせ」

 やがて有里奈が姿をあらわした。

「ごめんなさい。じゃあ、お願い」

 立てていた自転車のスタンドを倒し、勉は飛びあがるようにしてサドルにまたがる。有里奈は宙に浮かぶような軽やかさで荷台に腰をおろした。

「レッツゴー!」

 右手のこぶしをあげて有里奈はいう。勉は真剣な表情で、ペダルに力を込めた。

 有里奈の父親は有名な建築会社のオーナー社長。5人兄妹の末娘ということもあって、かなり甘やかされて育った。そのために性格は、かなりわがままだ。

 そんな有里奈は、別荘の使用人が野菜を注文する際、電話を替わって勉に伝言を告げる。その内容は、買い物に行くから自転車に乗せていけ、もしくは甘いものが食べたくなったから買ってきてほしいなどなど。まるで勉を召使いのようにこき使う。

 八百屋の黒電話がジリジリと鳴り、母親は勉に取り次ぐ。有里奈は配達のついでにアイスクリームを買ってきてほしいとねだった。

「それくらい、自分で買うてきたらええやろ」

「やだ。足が痛くなる」

 受話器の向こうで有里奈はいう。

「自転車くらいあるやろ」

「危ないから乗っちゃいけないっていわれてる」

「別荘の人は?」

「ばあやは自分で選んだものしか食べさせてくれないの。だから物足りないの」

 仕方なく、勉は近くの駄菓子屋でアイスキャンディを買い、注文を受けた野菜と一緒に有里奈の別荘まで運んだ。

「ありがとう……」

 別荘の勝手口から中に入り、台所に野菜を置く。待ち構えていた有里奈は、勉からアイスを受け取るが、表情は不満げだ。

「有里奈の思っていたのと違う」

「なに?」

「有里奈は、こんなのじゃなくてカップに入ったバニラがいい」

 わざわざ買ってきてもらって、その言い草はないだろう。勉は些末な憤りをおぼえた。

「そんなんいうんやったら、自分で買うてこいや」

「うん、わかった。じゃあ、連れてって」

「え?」

「アイス売ってるとこまで、自転車で連れてって」

 有里奈はいたずらな笑みを浮かべていった。

 いくら不満に思っても、勉は有里奈のわがままをかたくなにこばむことができなかった。

 有里奈は二人乗りをするとき、必要以上に身体を密着させてきた。あまり大きいとはいえない胸のふくらみだが、それでも背中に柔軟さが伝わってくる。家に帰って服を脱いだときには、残り香がほのかに立ちのぼる。

 言葉は乱暴だし、ときにはお姉さんぶって服装や髪型にあれこれ文句をつける。しかし、村の女子にはない清楚さと気品が備わっている。そのうえ年上の色香も、そこはかとなく感じられる。

「勉、お嬢さんから電話やで」

 半ズボンにランニングシャツ姿で扇風機に当たっていた勉は、母親の声に飛び起きた。急いで受話器を持つ息子の姿を見て、母親は意味ありげな笑みを浮かべる。

「な、なんやねん」

 怪訝な表情を浮かべつつ、勉は心を弾ませながら有里奈の声を待った。

「こんにちは、きょうも配達にきてくれるんでしょ」

「ああ」

「じゃあねぇ、きょうの御用はねぇ」

 有里奈は言葉を選ぶ。じらされる勉は、受話器のコードを指に絡めながらイライラを募らせる。

「え~とね、なににしようかしら」

「用ないんやったら切るで」

「え、ちょっと待って、えっとね、そうだ、海を案内してほしいな」

 意外な申し出に勉は面食らってしまった。

「案内?」

「そう。有里奈ね、まだ海に出たことがないの」

「海水浴場の近所やのに」

「日に灼けるの、いやだから」

 夏に灼けるのは当たり前だ。夏場の太陽を存分に浴びれば、冬に風邪をひかないともいわれていた。

 勉は改めて、有里奈とは住む世界が違うと実感する。

「普通に案内してもらうだけじゃつまんないなぁ。ねえねえ、なにか秘密の場所ってない?」

「秘密の場所?」

「そう、だれも知らない、だれもこない。でも、とてもステキな場所」

 同じ村で10年以上暮らしている勉だ、地元の人間しか知らない穴場くらいは把握している。だが、有里奈が気に入るかどうかはわからない。

「そうやなぁ……」

「あるの?」

「あるちゅうたらあるし、ないいうたらないし……」

「もう、はっきりしてよ!」

 有里奈の声が、若干大きくなる。

「わかった。そやけど、気に入れへんかってもオレのせいとちゃうからな」

「うん、了解! じゃあ待ってる」

 電話は切れる。勉はいくつかの場所を思い浮かべる。

「あそこがええなかな、それとも……」

 有里奈と二人きりで過ごすことに、思わず表情がにやけてしまう勉。その様子を見た母親もニヤニヤとしとしているのに気づき、勉は顔をこわばらせた。

 外海に面した遠浅の岩場には、切り立った崖の中に小さな洞窟がある。干潮時には洞窟の前に畳一帖ほどの砂浜も姿を見せる。

 配達を終えた勉は、有里奈を案内した。だが、行き着くには人一人通るのがやっとの隘路を歩き、波が間近に迫る大きな岩を3つ越えなければならない。

「ねえ、まだぁ」

 おぼつかない足取りで勉の後ろについてきた有里奈はいった。

「もうちょっと」

「ほんとに、こんなところにステキな場所があるの?」

「そやから、気に入るかいらんかは、知らんていうたやろ」

 音をあげた有里奈は、勉に手を引くよう命じた。勉が右手を差し出すと、有里奈はぎゅっと力を込めて握り締めてくる。

 手のひらの感触はやわらかくて冷たい。勉は口の渇きと、みぞおちのせり上がりを感じてしまう。

「ほら、着いた」

 勉はいう。狭い砂浜に立つ有里奈は、海を見つめて歓声をあげた。

「うわあ、すごーい!」

 目の前にひろがる大海原。空はどこまでも青く晴れわたり、降りそそぐ陽光が波頭をまばゆくきらめかせている。

 おもちゃのような船が水平線に浮かんですべっていく。潮の香りが漂い、打ち寄せる波の音が規則正しくひびく。

 有里奈は、しばらく身動きもせずにたたずんでいた。勉は黙ってその姿を見つめる。

「ありがとう、すごいステキ。よかった、いい思い出ができたわ」

「え?」

「有里奈ね、あした帰るから。帰る前に、いいところに案内してもらってよかった。そうだ、お礼しなきゃね」

 有里奈はそういって勉のそばに近寄ってきた。

「ねえ、目をつぶって」

 勉は有里奈の言葉にしたがう。

 視界が閉じる。波の音だけしか耳には届かない。その瞬間、勉の唇に、やわらかく温かい感触が伝わった。

 勉は驚き、目を開けて身体を硬直させた。

 間近に有里奈のひとみが見える。密着した顔は、うっとりと目を閉じていて、反ったまつげが1本1本、数えられるほど近くにある。

 有里奈は唇を押し当てながら舌を差し込み、勉の歯茎を探ってきた。

「うん、ううん」

 鼻から切ない吐息を漏らし、有里奈は勉の手を自分の胸に誘った。

 手のひらに伝わる盛りあがりの弾力。勉の興奮は、下着の中の肉塊を膨張させる。

「ふふふ」

 顔を離した有里奈は、見せたことのない妖しい笑みを浮かべた。

「興奮、する?」

 勉はうろたえ、答えることができない。

「こんなところで、て思う? でも、こんなこと、二度とできないかもわからないし」

「え?」

「波の音、海の青と空の青、そして有里奈とあなたと二人きり」

 有里奈はそういって、身につけていたワンピースのボタンをはずしはじめた。

「大人になる前にしておきたいことってあるよね」

「よ、ようわからん……」

「じゃあ、教えてあげる」

 有里奈は大胆に衣裳を脱いだ。あらわれたのは、真っ白な素肌と、それを包む純白の下着。ちゅうちょすることなく、有里奈はすべてを脱ぎ捨てる。

 大海原を背にして立つ有里奈の姿を見て、勉は言葉をなくした。

 胸から太ももにいたるなだらかな曲線。こんもりとした乳房に小さく桜色に染まった乳首。そして、かすかな陰毛。

「気持ちいい、あなたも脱いだら」

 腕を頭の上で交差させ、伸びをしながら有里奈はいった。しかし、勉は羞恥で身動きできない。

「できないの? じゃあ、有里奈が脱がしてあげる」

 有里奈はひざまずいて勉のズボンに手をかけた。

「ふふふ、こんなになってる」

 屹立した一物を見て、有里奈はつぶやいた。勉が身を任せると、有里奈は下半身をむき出しにし、シャツも脱がす。

 もはや何が起きているのか、そして何が起ころうとしているのか見当もつかない。そんな勉に有里奈は抱きつき、耳もとでそっとささやく。

「ね、いいことしよう。気持ちいいことしようよ」

「気持ちええこと……」

「うん、すごく気持ちのいいこと」

 二人は抱き合ったまま寝転がり、勉は有里奈のリードで秘穴に侵入を果たす。

 有里奈の内部は温かで、窮屈で、それでいてぬるみに満ちている。勉は生まれて初めて知った感慨に身を震わせる。

 勉にまたがった有里奈は眉をひそめ、大きく口を開けながら勉の貫きを感じ取っていた。

「うん、気持ちいい、ステキ、すごくステキ」

 初めてだった勉はすぐに達してしまいそうになる。それを知った有里奈は直前に抜き取り、手で扱いて射精をうながしたのだった。

 翌日、有里奈は都会に帰った。だが勉は、来年の夏、いや秋の連休にでも訪ねてきて、ふたたび甘美な体験ができるものだと期待していた。

 けれど、二度と有里奈は村を訪れることがなかった。しかも、別荘も売りに出されてしまう。村のうわさでは、有里奈の父の会社が倒産し、家族は離散してしまったという。

 6年後、勉は長じて大学に進み、村を出た。長期の休みに帰ってくると、必ずあの場所へ出かける。洞窟も、岩場も、広がる海も、小さな砂浜もそのままだ。

 たった一度だけ小さな秘密を二人でつくった光景が、甘酸っぱい感傷とともによみがえる。

【長月猛夫プロフィール】
1988年官能小説誌への投稿でデビュー。1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作。主な著作『ひとみ煌きの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)/『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)/『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)ほか。

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