Catch Up
キャッチアップ
この官能小説は、現在50代から60代の方々の若かりし時代を舞台背景にしています。貧しかったけれど希望に満ち溢れていたあの頃、そこには切なくも妖しい男と女の物語が今よりも数多く存在しました。人と人とが巡り合う一瞬の奇跡、そこから紡がれる摩訶不思議な性の世界をお楽しみください。 編集長
【別れを切り出された浅はかな男】長月猛夫
古びたアパートの2階にある四畳半一間の一室で、敏明は布団に転がり雑誌を見ていた。
「カッコいいよな、オレも入れないかな」
カバーもかけていない、ところどころ綿のはみ出た掛布団で腰のあたりを覆い、あお向けになって雑誌をめくる。布団は人一人分、余計に盛りあがっていて、もぞもぞうごめいていた。
「ねえ、なに見てるの?」
布団の中から敏明を見あげ、シミーズ姿の香織はたずねる。
「ほら、これ見てみろよ」
敏明は雑誌のグラビアを香織に示した。
1968年発売の週刊誌『平凡パンチ』。グラビアには、そろいの制服に身を包んだ若者たちが整然と並んでいる。からし色をしたダブルの詰襟。襟と袖口には緑色の当て布があり、胸の左右に6個ずつの金ボタン、袖当てにも左右3個ずつ金ボタンが施されていた。
「ふーん」
雑誌をながめた香織は、興味なさそうに返事をする。
「ふ~んて、男らしいと思わねえのか」
「思わない。軍人はきらいだ」
「軍人じゃねえよ」
「じゃあなに? 兵隊さんごっこ?」
「失礼だよ。三島由紀夫にさ」
「だれ、それ」
「盾の会の会長」
「なに、それ」
「この人たちだよ」
「何する人?」
「その、いまの日本をさ、何とかしようと頑張ってる人」
「政治家?」
「ちがう」
「運動してる学生?」
「ちがう」
「じゃあ、兵隊さんごっこじゃない」
香織はふたたび布団に潜り込む。そして、下半身がむき出しになった敏明の一物にしゃぶりつく。
「ふううん、うん……。うん、おいしい」
敏明に伝わる、ぬめりのある感触。舌がなめらかに這いずるまわり、カリ首やサオをなぞる。すっぽりとほお張れば、口腔の粘膜が温かな温度で包み込む。
「兵隊さんごっこって……」
ごっこじゃない。ならば、いったい何だろう。全学連のように派手な活動をしているわけでもないし、もちろん国の治安部隊でもない。
「けど、こんな制服着てみたいよな」
敏明はあこがれのまなざしを雑誌に向ける。香織はお構いなしに、舐りを続ける。垂れ落ちる髪の毛を何度もかきあげて耳にかけ、首を揺らして頭を上下させる。よだれが口の端からしたたり落ち、敏明のサオを濡らす。
「香織、出すよ」
「うん」
香織の動きは早くなる。敏明は布団をまくり、香織の様子をながめる。
「やだ、恥ずかしい」
香織は布団をもとに戻し、身体全体を使って抜き差しをする。大きく上下に動く香織を押さえ、敏明は腰を突き上げる。
「あ……」
香織の口のもっとも深い部分に突き入れて、敏明は精を放った。ドクドクと注ぎ込まれる白濁液を受け止めつつ、香織は最後の1滴まで搾り出すのだった。
敗戦の年に生まれた香織と敏明は、空襲を体験していないし、食糧不足の飢えも知らない。ただ、敏明の父親は戦死。香織の父親も戦地で亡くなり、母親は進駐軍相手に春を売って口を糊していたが、精神に異常をきたして入院中だ。
敏明は中学を卒業すると、母親のもとを離れて上京してきた。年齢よりも大人びて見える香織は、14の時から年をごまかして水商売で働く。
20歳になって工員として働いていた敏明は、先輩に連れられて入ったスナックで香織と知り合い意気投合する。やがて二人は付き合いはじめ、いっしょに暮すようになった。
「母さんはね、家にも客を連れ込んできたことがある」
初めての夜、香織はぽつりとつぶやいた。
「あたしを押し入れに閉じ込めて、進駐軍の兵隊と乳繰り合うんだ」
その様子を、幼い香織はふすまのすき間からのぞく。
「普段は死んだような眼をしていて、いつも怒ってばかりいた母さんが、その時だけはうれしそうな顔をするんだ。そんな母さんの血を受け継いでるのかな。あたしも好きなんだ、男に抱かれるの。男の人を気持ちよくさせるの」
敏明の前で、香織は自ら服を脱ぐ。シミーズを抜き取り、ブラジャーを外してパンティをおろすと、そこには彫刻の裸像のような肉体が露出した。
手脚は長く、贅沢な肉付きが煽情的な趣をみせる。乳房は張り裂けんばかりに盛りあがり、臀部の張り出しも大きい。肩より少し長く伸ばされた髪を無造作に垂らしながら、香織は妖しい目で敏明を見下ろした。
畳の上にあぐらをかき、呆然とながめていた敏明は、それだけで股間の疼きをおぼえる。そんな敏明の前に、香織はひざを折って座り、前かがみになるとズボンのチャックをおろして中から一物を取り出した。
「香織……」
「ふふふ」
まだ完全に力のこもっていない敏明に、首をかしげて舌を伸ばす香織。先端をなぞり、カリ首をぬぐい、茎を丹念に舐めまわし、やがてすっぽりと含む。
「はうううん、ううん、うん……。イキたくなったら出してね」
「いいのか」
「うん。飲むの、好きなの」
ちゅばくちゅと音を立て、香織は頭を揺らす。厚みのある唇がまくれ、出入りするたびに敏明の一物はぬるりとした光沢を示す。
次第に長大となる敏明の肉棒。香織は根元まで咥え、舌を縦横無尽にうごめかせた。
「出るよ、出る」
「出して、いっぱい出して」
伸びた背中を上下させ、香織は刺激を加える。敏明は香織の頭を押さえ、のけぞりながら暴発の時を待つ。
「あ……」
精虫が勢いづいて飛び出し、香織の口の中に充満した。感触を受け止めながら、香織は白粘液をためていく。そして、すべてが注ぎ終わったのを知ると、いったん抜き出して天を仰ぎ、喉を鳴らして飲み干した。
若い二人は、昼夜を問わずに互いを求めた。
敏明は工員のままなので朝に出勤する。香織は夜の商売だから夕方に部屋を出る。生活リズムが食い違っていることもあり、ともに居られる時間は限られている。そのせいもあってか、二人きりの時は、とくに香織が率先して敏明を責めた。
朝、香織は寝ている敏明の朝勃ちを舐って起こす。水やコーヒーではなく、精液が彼女の眼ざめの一杯となる。夜、香織が店から戻ると、寝ている敏明のズボンをおろし、口で勃たせてから中へいざなう。
香織が休みの日は、仕事から戻った敏明を押し倒して覆いかぶさる。敏明も自分が休みの時は、香織を朝から堪能する。互いの休日ともなれば、それこそ寝食を忘れてむさぼりあった。
二人にとってのセックスは、食べる、寝る、排せつすると同様に、生きていくうえで欠かせないものだった。ただ、そんな状態が続けば惰性的となり、快感はあれども感動は失われる。
それでも香織は敏明を舐り、精子を飲み、胎内への注ぎ込みを甘受する。敏明は香織に身を任せる。香織は自分が快感を得るよりも、敏明の満足に気をよくしていたのだった。
だが、東京生活が長くなるにつれ、敏明に変化が訪れた。そのこと香織が気付いたのは、二人で街を歩いているときだった。
混雑する繁華街の片隅に、二人の傷痍軍の姿があった。陸軍の戦闘帽をかぶり、白い着物を身に着け、一人はアコーディオンを弾き、もう一人は土下座をしている。土下座の男は両腕のひじから先がなく、両足も失われていた。
敏明は、その姿を見ると近寄って地面に置かれた箱の中に小銭を入れる。
「いまの日本は間違っている。そう思わないか」
敏明は香織にいった。
「オリンピックにもうすぐ開かれる万博、高速道路に新幹線。けど、儲けてるのは一部の人間だけ。国はもっとほかのところにカネを使わないと。たとえば、あんな人たちの補償を手厚くするとか」
香織は怪訝な表情で敏明を見る。
「あたしらみたいな人間に何ができるの?」
「それを考えてる」
「考えてるんだ」
「そう」
「デモでもするの?」
「あんなの、インテリ学生が自己満足でやってることだ。クソの役にも立たない」
「じゃあ、どうするの?」
「そうだなぁ……」
敏明は考え込みながら、歩きはじめる。
「もっとさあ、日本の誇りっていうか、伝統っていうか」
「わからない」
「戦争が終わってから、日本はだめになった」
「そう?」
「そう思わない?」
「わからない」
敏明は相変わらず、考えながら歩く。
「ねえ、敏明」
「ん?」
「だれに吹き込まれたの?」
「え?」
「敏明は、そんなこと考える人じゃない」
「オレだって、30に手が届くような年になれば、ちょっとは政治のこととか考える」
「だれに教え込まれたの?」
「……、会社の先輩」
「やっぱり」
香織は敏明を追い抜いて、さっさと歩きはじめた。
「どうしたんだよ」
「帰る」
「どうして」
「シたくなったから」
アパートに戻ると、香織は敏明に抱き着き、唇を重ねて押し倒した。そのままスカートの中に手を入れてパンティを脱ぐと、敏明のズボンと下着をおろす。洗ってもいない、しなびた状態の一物を舐め、血液が充満し始めたのを確認あうると、馬乗りになって内部へ納めた。
「いい、敏明の、いい」
スカートは履いたまま。香織は身に着けていたシャツとシミーズを脱ぎ去り、ブラジャーを外す。
「どうしたんだよ」
突然のことにかすかな狼狽をおぼえつつ、敏明は香織の乳房に手を伸ばした。
「敏明、いまのままじゃ不満なの?」
「どういう意味」
「こうやって二人で気持ちよくなって、二人で楽しく暮らしているのが不満なの」
「不満じゃない」
「じゃあ、よけいなこと考えないで」
香織は前かがみになり、敏明の唇を吸う。腰を激しく上下に揺らすと、ぴちゅくちゅと淫汁のこすれる音が響く。敏明は突き上げながら、締め付けの強い香織の膣内を味わった。
肉襞がうごめいて絡みついてくる。最深部に到達すれば、子宮口のこりっとした感触が伝わる。蜜はとめどもなくあふれ出し、互いの陰毛をじゅわりと濡らす。
「あああん、敏明、敏明。変わらないで、お願い、いままでの敏明でいて」
潤んだ目で敏明を見つめながら、香織は哀願する。
「わかった、わかったよ、香織」
「うれしい」
香織は身体を起こし、敏明に挿入部分を見せつけるように弓ぞりとなる。ゆるく口を開いた肉裂に突き刺さる業物をながめ、敏明は大量の精液を香織の中に注ぎ込むのだった。
しかし、敏明の政治的志向はエスカレートしていった。
休日には会社の先輩や同僚に誘われて集会に出かける。それまで新聞も読んだことはなかったのに、思想雑誌を持ち帰ってくる。
「日本はだめだ。戦争でメチャクチャにされたうえに、くだらない憲法を押しつけられる。むかしながらの伝統も、日本人としての誇りも」
「しかたないじゃない。日本はアメリカに負けたんだから」
「勝負は時の運。組織がしっかりしてりゃ、負けることはなかった。もっと天皇陛下のお言葉にしたがって……」
「受け売り。バカみたい」
休みだというのに一人部屋に残され、帰ってきて身体を合わせても、終われば浅はかな知識を振りかざす。そんな敏明に、香織は吐き捨てるようにいう。
「バカはいいすぎだろ」
「バカはバカよ。日本は負けたのよ。それもコテンパンに。勝てるわけないじゃない」
「いや、日本人には大和魂がある。今度戦争が起きれば……」
「今度? また戦争するの? また、あんなにひどい目にあうの?」
「だから、今度は……」
「もういい!」
香織は声を荒らげる。
「みんな死んじゃったのよ、あの戦争で。生き残っても地獄を見せつけられた。母さんだって戦争がなければ、身体を売ることもなかった。父さんだって生きていた。あと3か月早く戦争が終わってれば、父さんは兵隊にとられることもなかった」
「だからだなぁ……」
「もういい!」
香織は敏明に抱き着く。
「いいじゃない。あたしはいまが幸せ。敏明とこうあって身体を合わせているときが一番幸せなんだ。政治がどうだとか、日本がどうだとか、そんなのは頭のいい人に任せていればいい。あたしらは自分たちの幸せだけ考えていればいいんだ。あたしたちみたいな幸せな人が増えれば、みんなが幸せになれる。そうじゃないの?」
香織は敏明を見つめて涙を流す。その表情に憐憫をおぼえた敏明は、そっと香織の身体を離してつぶやいた。
「そうだな、ごめん。もう、こんな話はしない」
「ホント? 約束してくれる?」
「ああ、本当だ」
「うれしい」
香織は笑みを浮かべて敏明に身体を預ける。だが、敏明は宙に視線を漂わせ、大きく2、3度息を吐いた。
それから敏明は、休日に一人で出かけなくなった。ただ、平日の就業後には、誘われるまま集会に顔を出す。香織には内緒だ。
街では学生運動が激しくなり、1969年の年明けには東大の安田講堂が陥落するも、70年の安保改正に反対する動きやベトナム戦争への反対運動は継続される。
そんな様子を敏明は忸怩たる思いで見つめていた。何かをしなければという思いが募るものの、日々の労働に追い立てられ、学生のように運動に身を投じる余裕はない。しかも、集会で講義を聴いたり、雑誌を読んだりしてみても、右派の思想を完全に理解することはできない。
「ちくしょう。オレにもっと学があれば」
そんな日々を過ごしつつ、1970年の11月が訪れた。
25日の正午過ぎ、盾の会の隊長、三島由紀夫が陸上自衛隊市谷駐屯地の総監室で自決。そのニュースを敏明は、工場のテレビで知った。
「三島先生が自決された」
休みで部屋にいた香織に、戻ったばかりの敏明はいう。
「ふ~ん」
香織は興味なさげに答える。
「日本は、これからの日本はどうなる」
「知らないわよ、そんなこと」
香織の言葉に、敏明は激高してしまう。
「知らないじゃないだろ! お前も日本の女性として、ちょっとは国家というものを考えるべきだろ」
「考えてどうなるの? あたしは幸せでいられるの?」
「個人の幸福よりも、国家の……」
「国家ってなに? 国ってなに? あたしはあたしと敏明が幸せでいれるなら、日本なんか滅びてもいい」
「日本が滅んでもいい? お前には日本人としての誇りはないのか!」
「ないよ、そんなもの!」
香織の言葉に敏明は黙してしまった。
「日本、日本って、バカみたい。店のお客さんがいってた。兵隊は守ってくれない。ソ連が攻めてきたとき、真っ先に逃げ出したって」
「それはウソだ」
「ウソじゃない。沖縄だって同じだっていってた」
「お前こそ受け売りだ。皇軍の兵士が、そんなことするわけがない」
「もういい!」
香織はすくっと立ち上がって告げる。
「敏明、別れよ。サヨナラ」
「え、香織」
「敏明、変わっちゃったね。出会ったころは、こんなんじゃなかった。いっしょに暮らしはじめた時も。敏明はやさしくて、あたしのこといっぱい好きでいてくれて、身体の相性もよかった。最近はまったくダメ。もういっしょに暮らす理由がない」
香織は、部屋の隅にあらかじめまとめておいた荷物を手にする。
「香織、どこに行くんだ?」
「どこでもいいでしょ。サヨナラ。いままでありがとう」
振り向きもせずに、香織は部屋を出ようとする。
「香織、待てよ」
立ち上がって後を追う敏明。しかし、香織は部屋のドアを乱暴に閉め、姿を消した。
「香織……」
鉄製の階段を降りていく音がする。敏明は遠ざかっていく靴音を聞きながら、ところどころはがれたドアのクロスを、ぼんやりとながめていた。
- 【長月猛夫プロフィール】
- 1988年官能小説誌への投稿でデビュー。1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作。主な著作『ひとみ煌きの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)/『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)/『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)ほか。
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