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【昭和官能エレジー】第15回「女のたずねてくる電話ボックス」

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【昭和官能エレジー】第15回「女のたずねてくる電話ボックス」

この官能小説は、現在50代から60代の方々の若かりし時代を舞台背景にしています。貧しかったけれど希望に満ち溢れていたあの頃、そこには切なくも妖しい男と女の物語が今よりも数多く存在しました。人と人とが巡り合う一瞬の奇跡、そこから紡がれる摩訶不思議な性の世界をお楽しみください。 編集長

【女のたずねてくる電話ボックス】長月猛夫

 深夜2時に駅前にある電話ボックスから、あるところへ電話をすると女が来る。

 そんなうわさを、岩崎は耳にする。

「で、女が来ると、どうなるの?」

 岩崎は、友人の田中にたずねる。

「尺八だよ。運がよければ本番も」

「ボックスの中でか?」

「ああ」

 田中は品のない笑みを浮かべて答えた。

 岩崎は高校2年の17歳。いまだ童貞だ。同世代の男子と同様、性に関する好奇心は満々。毎晩、『平凡パンチ』や『プレイボーイ』のグラビアを見て自慰をくり返すも、完全な性欲解消には至らない。

 あるとき週刊誌の記事に、口の中と女性の陰部の感触は似ている、との記事を見つける。それならば、自分の口で試してみればいい。

 岩崎はパンツを脱いでペニスを勃起させ、前かがみになって口を近づけた。けれど、身体は固いし、一物もそんなに大きくない。

 懸命になって唇の先が先端に到達しそうになったとき、「グキッ」といやな音が鳴って腰を痛めた。

 そんな悶々とした日を送りつつも、自分から行動に移す勇気もない。カネさえ払えば相手をしてくれる女性がいることも知っていたが、機会がない。だれかの誘いを心待ちにしながらも、声をかけてくれるものは一人もいない。

 口をひろげて空を見あげ、エサの落ちてくるのを待ち続けている状態である。

「タダかなぁ」

「そんなこと、ないだろ」

「いくらくらいかなぁ」

「さあ。けど、トルコ風呂よりは安いはずだよ」

「トルコって、いくら?」

「知らない」

 同じような境遇の田中は、首をかしげた。

 その日から、岩崎は駅前の電話ボックスが気になって仕方がなかった。

 薄いベージュの電話ボックスは上半分がガラス窓になっていて、下半分は隠れて中が見えない。我慢できなくなった酔っ払いが、公衆便所代わりに用を足すこともあった。

 電車通学をしていた岩崎は学校帰り、用もないのにボックスの中に入ってみた。

「この中で……」

 女性がひざまずけば、確かに咥えてもらうことは可能だ。しかし、セックスをするには狭すぎるし、外からも見えてしまう。

「しょせん、うわさかなぁ」

 そうつぶやいて、岩崎は外に出ようとした。そのとき、公衆電話の横に置かれた電話帳の上に書かれた数字に気がつく。それは電話番号で、数字の横にはこう記されていた。

【お電話ください。ご満足を約束します】

「まさか……」

 岩崎はボックスの中から、外の周囲をうかがう。行きかう人は、だれも岩崎に気を留めていない。

 岩崎は生徒手帳を取り出して電話番号をメモする。そして、もう一度周囲をうかがい、手帳をカバンの中に納めた。

 テレビを見ながら食事をし、自分の部屋で宿題を片づける。母親にうながされて銭湯にいき、帰ってくると就寝前の時間をベッドの上に転がって過ごす。

 ラジオからは、早口でまくし立てるDJの声が流れている。合間に流行りの曲が流れる。テレビの歌謡番組では流れないフォークや洋楽ロックが、ラジオならオンエアーされる。

 いつもは楽しみにして聞き入る岩崎だが、この日だけは気もそぞろだった。

 時計を見ると午後10時。午前2時まで、あと4時間。

「バカ、オレはなに考えてんだよ」

 落書きの電話番号など、公衆トイレの壁に書かれたものと同じレベルだ。信じてかけてみたところで、何がどうなるわけでもない。いたずらな迷惑電話に加担してしまうことにもなりかねない。

「けど……」

 田中の言葉が、頭の中で交差する。

「尺八だよ。運がよければ本番も」

 童貞を捨てるのに理想なんてない。単純に心地よさを味わえればいい。ふくよかでやわらかく、なめらかな肉体を確かめつつ、温かでヌルヌルしているという女性の内部に挿入したい。

 いつの間にか時間は午前0時をまわっていた。それでも、まだ2時間ある。

 もしも電話番号が本物なら、どんな女性が現れるのだろう。田中はしゃぶってくれるといったけれど、どんなに心地いいんだろう。

 まさか全裸になりはしないだろうが、乳房くらいは揉ませてくれるのか。狭い中で、もしも本番ということになれば、やはり後ろから挿入するのだろうか。

岩崎は妄想してしまう。そして興奮してしまった岩崎は、そのままズボンとパンツを脱ぎ捨て、自身をしごいた。頂点に達するのは早く、またたく間に精液をほとばしらせてしまう。

「ふう」

 吐き出したあとの虚脱と悔恨。いつものことではあるけれど、早くこんな状況から脱却したい。そればかりを願う。

 時計を見る。まだ0時30分だ。

「え、えええい!」

 パンツを上げて、部屋着からジーパンとネルのシャツに着替えた岩崎は、ジャンバーをはおり、ラジオのスイッチを切って部屋から飛び出した。

 秋が深まり、冬が間近に迫った11月。流れる雲の間には、白い半月が浮かんでいた。

 地方都市の駅前は、終電が出てしまったこともあり、ひっそりとしている。人気はなく、駅の照明も消え、頼りない街灯の光が電話ボックスを浮かび上がらせていた。

 家族に気づかれないよう、足を音を忍ばせて家を出た岩崎は、電話ボックスに近づくと、ポケットから財布を取り出して中身を確認する。

「足りるかな?」

 千円札が数枚。岩崎の全財産ではある。

 期待と不安にさいなまれながら扉を開け、生徒手帳を取り出す。受話器を取ろうとするが、手が震えてうまくつかめない。

「ど、どうしよう、どうしよう」

 手だけではなく、身体中が震える。戻るならいまだ、とも考える。心臓が苦しいくらいに鼓動を早め、体温は上がり、汗が背中を伝う。

「大丈夫、大丈夫」

 そう言い聞かせて受話器を取り、10円硬貨を投入する。しかし、すぐに受話器を置いてしまう。

「ふ~」

 大きく息を吐く岩崎。

「落ち着け、落ち着け」

 ふたたび受話器を手に取る。手のひらが汗でじっとりと濡れている。10円を入れると、ツーという音が響き、岩崎は恐る恐るダイヤルを回す。

 呼び出し音が鳴る。心のどこかで、だれも出るな、と願ってしまう。だれも出なければ、明日から普通どおりに生活が送れる。だれかが出れば――。

「はい」

 受話器を通して声が耳に届いた。岩崎は口を開けたまま、言葉を紡ぐことができない。

「もしもし」

 低く落ち着いた女の声。

「あ、あ、あの……、じつは……」

「駅前から?」

「は、はい」

「すぐ行きます」

 そういうと電話は切れた。

 岩崎は受話器を握ったまま、呆然と立ちつくしてしまう。

「あ、あ、やった……」

 とりあえず第一関門は突破。あとは、女性が来るのを待つだけだった。

 どんな女性が姿を現すのか。歳はいくつくらい。顔は、スタイルは。そして、本当に……。

 期待と不安が交差する。逃げてしまおうかとも考える。いったい自分は何をしてるんだ、ともいぶかしがる。とんでもないことが始まるのではないか、ともおびえてしまう。

 20分ほど待っただろうか、電話ボックスの前に女性の姿が見えた。彼女は扉をノックもせずに開く。

「お待たせ。あら、若いわね」

 岩崎の顔を見るなり、彼女はいった。

 ひざ丈のスカートに薄汚れたセーターを着た彼女は、扉を閉めて岩崎と向かい合う。

 化粧は薄く、長い髪を一つに束ねている。全体的に細身のスタイルだが、胸のふくらみはふくよかだ。

 年齢は30歳手前といったところか。香水をつけてもいないだろうに、メスの香りがほのかに漂う。

「最初におカネちょうだい」

「い、いくら」

 彼女は指を3本立てる。岩崎は財布から3千円を抜き出した。

「よけいなことはしないでね。ユカリには触らないでね」

 名前はユカリだということを岩崎は知る。

「じゃ、はじめようか」

 ユカリはひざまずき、岩崎のズボンのチャックをおろす。そして、まだ力のこもっていない一物を取り出すと、指を添えてしごいた。

 冷たくしなやかな感触に、岩崎の男根は膨張する。すりとユカリは口を開け、吸い込みながらほおばった。

「あ……」

 途端に伝わる、温かでぬるみのある感触。舌が絡まりつき、内頬の粘膜で全体を覆う。

 ユカリは岩崎を奥まで呑み込むと、頭を振って前後させる。

「あ、あ、あ……」

 岩崎はすぐに達してしまった。ほとばしる精液を受け止め、ユカリは動きを止める。

「ふう」

 口にたまったものを、チリ紙を出して吐き出したユカリは、大きくため息をついた。

「早いのね。助かっちゃった」

 ユカリは岩崎を見てつぶやいた。

「またヌキたくなったら電話してね」

 そう言い残してユカリはボックスから出ていく。岩崎はぼんやりと、その姿を見送るしかなかった。

 その日から岩崎は小遣いがたまると、深夜2時の電話ボックスへ向かう。電話をすると、ユカリは現れ、口でヌイて去っていく。

「ねえ」

 ある日、ユカリはたずねた。

「いつもひいきにしてくれるから、きょうはもっといいことしようか」

「え?」

「いいよ、ユカリの中に挿れても。でもね、5千円はほしいな」

 財布の中には4千円しかない。小銭を探すと、100円玉が5枚。

「これで全部……」

「え? もう、しょうがないなぁ。でも、あなた初めてでしょ」

「は、はい」

「じゃあ、特別サービス」

 札と硬貨を受け取り、ユカリはポケットにしまう。そして、スカートの中に手を入れて下着を脱ぐ。

「こんなところで」

「大丈夫よ。じゃあ、これも特別サービス」

 ユカリは岩崎と向かい合い、顔を近づけて唇を重ねる。そのままズボンの中から一物を取り出し、しごきながら勃起をうながす。

「ふふふ、大きくなってきた」

 妖艶に微笑み、ユカリは身をねじって岩崎に背中を向けた。

「挿れるね」

 スカートの中に岩崎を忍ばせ、ユカリは部分の秘裂にあてがう。そのまま腰を押し付けると、青い硬度をたもった肉棒が、ずにゅりと内部に納まった。

「あ……」

「どう、初めての女の感触」

「い、いいです、気持ちいい」

「初めてがユカリでもよかったの?」

「よかった、ユカリさんでよかった」

「ありがと。じゃあ、もう一つサービス」

 ユカリは岩崎の手をセーターの中に入れ、乳房に誘う。ブラジャーは着けていない。岩崎はボリュームと柔軟な質感を得ながら腰を振った。

「そ、そう、うん、いい感じ」

 狭い空間で密着しながら、ユカリも岩崎に合わせて腰を揺らす。

「い、いいです。ユカリさん、気持ちいい」

「いいの? うれしい。やん、ユカリもいい……」

 互いの吐く息でガラスが曇る。ユカリは手のひらを扉にあて、喘ぎ声を漏らす。

 ユカリの体躯が伸縮する。岩崎は我慢の限界をおぼえつつあった。

「出ちゃう、出そうです」

「いいわよ、ユカリの中に出しても」

「いいんですか?」

「うん……、やん、ユカリもいい!」

 前後するユカリの動きが大きく激しくなる。締め付けるとば口が岩崎のカリ首に引っかかり、刺激を高める。

「あ、出る……」

 岩崎は精液だまりを暴発させた。勢いのある注入に、ユカリは背中をそらして身を震わせ、胎内ですべて受け止めたのだった。

「なあ、知ってる?」

 田中はいった。

「何を?」

 岩崎はたずねる。

「駅前の電話ボックス、新しいタイプに変わるらしいぜ」

「え?」

「外から全部丸見えのタイプに」

「そんな……」

「もう、あそこで尺八してもらえねえな」

「田中、してもらったことあるの?」

「ないよ」

「そうか……」

 初体験のあと、岩崎は1度だけユカリを呼び出した。5千円を渡すと、ユカリは本番を許してくれた。

だが、5千円は岩崎にとって大金だ。学生食堂で食べるための、親からもらった昼食代を貯め、参考書を買う、問題集を買うといっては小遣いを無心する。

そして、ようやく5千円が貯まったときに、田中から話を聞いた。

次の日、通学のために駅へ行くと、古い電話ボックスが撤去される真っ最中だった。

その夜、午前2時、岩崎は試しにゆかりのところに電話をした。しかし、「現在使われておりません」のアナウンスが繰り返されるだけだった。

【長月猛夫プロフィール】
1988年官能小説誌への投稿でデビュー。1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作。主な著作『ひとみ煌きの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)/『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)/『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)ほか。

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