Catch Up
キャッチアップ

この官能小説は、現在50代から60代の方々の若かりし時代を舞台背景にしています。貧しかったけれど希望に満ち溢れていたあの頃、そこには切なくも妖しい男と女の物語が今よりも数多く存在しました。人と人とが巡り合う一瞬の奇跡、そこから紡がれる摩訶不思議な性の世界をお楽しみください。 編集長
【童貞男子を翻弄した謎の淫乱少女】長月猛夫
1969年1月、東京大学安田講堂が陥落し、東大紛争は収束に向かう。その後、各地の大学や一部の高校では学生運動がくり広げられたものの、70年代に入ると急速に沈静化していった。
いっぽう、時代は高度経済成長期の真っただ中だった。1964年の東京オリンピック開催を機に公共インフラも整備され、「昭和元禄」なる言葉も生まれる。70年には万国博覧会が大阪で開催。日本は未曽有の好景気にわいていた。
そんななか、学生運動に身を投じていた藤原は挫折感を味わいつつ、都会の片隅で漫然と暮らしていた。
「カネ、カネ、カネ。日本中が拝金主義におちいっている。日本人はいつからゼニの亡者になり下がったんだろう」
藤原の住むアパートには、同じような境遇の男が二人住んでいた。児玉と中村だ。ヒマを持てあましていた3人は、夜になると藤原の部屋に集まってきた。
風呂はなく、炊事場、洗面所、トイレは共同。雨後のタケノコのように林立しはじめたビルの陰になり、部屋には満足に陽も差さない。年中、じめじめとした湿気にむしばまれ、雨が続くとわけのわからぬキノコが畳の間から生えてくることもあった。
11月半ばの季節、夜にもなると寒さがじわじわと床下から忍び込んでくる。
「でも、カネがないと生きていけないのは、まぎれもない事実です」
中村はいう。
「なにもカネが悪いっていうんじゃない。生きていくのに必要なのは百も承知だ。しかし、生きていく目的以上のカネは、はたして必要なのか」
「格差をなくせ」
藤原の言葉に児玉が同調する。
「そう、貧富の格差をなくせ。だいたいだな」
自分の思想と言葉に酔いはじめた藤原は、ケバ立った畳の上に立ちあがり、こぶしを握って演説した。
「富むものは、ますます裕福になり、貧しいものは際限のない困窮に苦しめられる。献金目当ての政治家たちは、大手企業やカネ持ちどもの言葉にしか耳を貸さない。おかげでいまの日本はどうだ。水俣病やイタイイタイ病、大気汚染。山河は切り崩され、交通戦争での死者は1万人を超えた。これらはすべて資本主義経済による拝金主義の影響だ。しかも安保で日本はアメリカの植民地のまま。沖縄からはベトナムに爆弾を落とすB52が毎日飛び立っている。それなのに、だ!」
そのとき、藤原の腹が「グ~~」と鳴った。
「もういいよ、藤原、メシにしようぜ」
児玉はいう。
「メシっていっても、食べるものあるんですか?」
中村はたずねる。
「お前たちいくら持っている」
藤原の問いかけに中村と児玉はポケットを探り、小銭を取り出した。
「なんだよ、足して120円かよ」
「藤原はどうなんだよ」
「オレか、オレは……」
藤原は10円硬貨3枚を取り出す。
「なんだよ、これでなにが食えるっていうんだよ」
「ボクの部屋に、今朝もらってきたパンの耳がありますが」
中村はいうが、藤原と児玉の顔はさえない。
「とりあえずさ、3食を満足にすませられる程度のカネはほしいよな」
児玉の言葉に、藤原と中村はうなずくしかなかった。
その夜は食パンの耳をつまみにし、児玉が隠し持っていたサントリーレッドを飲んで空腹をごまかした。翌日の午後早く、泥酔した3人は目をさましたものの、二日酔いと空腹で身体を動かすことができない。
「児玉~、きょうお前ドカチンのバイトじゃなかったか~」
藤原はたずねる。
「こんな状態でいけるわけないだろ」
児玉の答えを聞いて、次に藤原は中村に問う。
「中村~、次の仕送りはいつだ~」
「あしたです」
「あしたまで生きていられるかなぁ」
藤原の言葉に、児玉も中村も寝返りを打って背中を向けた。
「オレたちさぁ、なにやってるんだろ」
天井をながめて藤原は語りはじめた。
「中学、高校って必死で勉強してさ。村の人間が万歳三唱で見送ってくれるような大学入ってさ。それがさ……」
「オレは万歳で見送られてはいない」
児玉がつぶやく。
「中村はどうなんだ」
「ボクは母親のすすめで、父親と同じ大学に進学しました」
「そうなんだ。お父さんはなんの仕事してるの」
「文部官僚です」
その言葉を聞き、藤原は身を起こす。
「官僚? じゃあ、ヤバいんじゃねえの? 息子が学生運動なんて」
「内緒にしてます。それに、父親は子どもがなにをしてるかなんて興味を持っていません。仕事、仕事で、家族旅行とか遊園地にさえ連れて行ってもらったことがありません」
「そうかぁ。でもさ、学校辞めるのはヤバいんじゃないのか」
中村は答えなかった。
児玉は二人の会話を意に介さず、ゆらゆらと立ちあがる。
「どこへ行く?」
「水、飲んでくる」
「それじゃあさ。そこにヤカンがあるだろ」
藤原は部屋の隅に置かれたヤカンを指さす。
「そこに水、入れてってくれないか」
「水ぐらい自分で入れろよ」
「頼むよ、な、中村も飲みたいだろ水」
「はい」
中村は小さく答える。
「しかたねぇなぁ」
児玉はブツブツいいながら、ヤカンをもって部屋を出た。
「わ! きみ、どうしたの?」
廊下に出たとたん、児玉は驚きの声を出した。それを耳にした藤原は、四つん這いで扉のほうまで進む。
「どうしたんだよ」
「ほら、この子」
廊下には少女が一人、うずくまって震えていた。うなじで切りそろえられた髪はザンバラで、靴下も履かず、白いブラウスと緑色のスカートが泥だらけになっている。ここに来る途中に転んだのか、ひざには血がにじんでいた。
「こりゃ大変だ。とにかく部屋の中へ」
それまで指1本動かすことすら億劫だった藤原だが、起き上がると少女を部屋の中に招き入れようとする。中村も起き上がり、少女のそばで話しかける。
「お嬢さん、どうしたの?」
少女は顔をあげて3人を見まわすが、何も話そうとはしない。
「大丈夫、オレたち紳士だから」
藤原がいうと、児玉と中村は思わず吹き出してしまった。そんな笑顔に安心したのか、少女もほほ笑みを浮かべて3人を見あげるのだった。
部屋の中に導かれた少女は、部屋の隅でひざをかかえていた。
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「アケミ」
藤原の問いかけに少女は小さく答える。
「アケミちゃんかぁ。いくつなの?」
「……」
アケミは答えない。
「中村、いくつだと思う?」
「中学生くらいではないでしょうか」
「違うよ」
アケミは中村の推測を否定した。
「アケミ、中学生じゃない」
「じゃあ、高校生」
「……」
藤原の質問にアケミは口を閉ざす。
「まあ、身の上のことはおいおい教えてもらうとして。まずは身ぎれいにしないと」
児玉の提案に藤原と中村はうなずく。
「でも、どうするんですか。着替えとか」
「着替えは……、そうだな、とりあえずは中村のを貸す」
「ボクのをですか」
「オレたちと違って、お前はちゃんと洗濯してるし」
「うん、そのとおり」
藤原が納得する。
「別にいいですけど……。その前にひざの傷をなんとかしないと」
「そりゃそうだ。児玉、水は?」
「あ、忘れてた」
児玉は廊下に出て、置きっぱなしにしていたヤカンを取り、洗面所へ向かった。
「入れてきた」
「サンキュ」
ヤカンから洗面器へ水を入れ、藤原はタオルを浸して絞る。
「中村、そこに救急箱あるだろ」
「あ、はい」
「赤チンと包帯とガーゼを出しといてくれ」
絞ったタオルを傷口に当て、藤原は丁寧に泥と血をぬぐう。
「ちょっとしみるかもしれないけど、我慢してね」
中村の用意した赤チンを、藤原はアケミのひざに塗った。アケミはピクッと小さく身体を震わせ、顔をしかめる。
「大丈夫だから」
傷の上にガーゼを当て、包帯を巻きはじめる藤原。
「手際がいいな」
腕を組んで様子を見ていた児玉がいう。
「本当は医学部志望だったからな」
「へえ、藤原さん、医者になりたかったんですか。初めて聞きました」
「医者になって人助けをしたかったんだ。けど、親父は政治家になれってうるさくてさ。だから法学部に入った」
包帯を巻き終え、藤原は安堵の表情でアケミを見た。
「さてと、どうする?」
藤原は二人を見あげた。
「どうするって……」
「どうしましょう」
困惑の表情を浮かべる児玉、そして中村。
「アケミちゃん、お家は?」
藤原がたずねても、アケミは答えようとしない。
「その様子じゃ、メシも食ってないだろ」
児玉がいう。
「この子にもパンの耳を食べさせるんですか?」
中村がいうと、残りの二人は黙ってしまった。
「アケミ、お腹すいた」
突然、アケミがぽつりとつぶやいた。
「ラーメン食べたい」
「オレたちだって食べたいよ」
児玉が吐き捨てるようにいう。
「150円あればインスタントラーメンは買えますよ」
「でもさ、いまは大丈夫でも晩飯はどうする」
藤原がそういうと、アケミはポケットの中に手を入れた。
「おカネならあるよ」
アケミは数枚の札を取り出す。どれもが一万円札だった。藤原は、それを手に取ってひろげ、感嘆の声をあげる。
「おお、これがうわさに聞く一万円札」
「聖徳太子さま、お久しぶりです」
児玉は涙を流さんばかりに肖像画を見つめる。
「ダメですよ。このおカネは……」
「大丈夫、大丈夫。アケミちゃん、これでラーメン食べたいんだよな」
注意を促す中村を尻目に、藤原はアケミにきく。
「うん。その前に、アケミ、きれいになりたい」
「わかった、わかった。きれいになろうね」
「銭湯はまだだよ」
児玉は藤原にささやく。
「大丈夫。中村、そのヤカン、火にかけてお湯沸かしてくれ。それと、お前のシャツと下着持ってきてくれ」
「藤原、この子を行水させようっていうのか」
「お湯だから行水じゃないよ」
「たらいはどうするんです」
「洗濯用のを借りてくる。オレも銭湯にいくカネがない時、よくやってる。児玉は新聞紙ひろげといてくれ」
アケミのカネで出前を取り、藤原はビールまで用意した。
「さ、食べよう!」
満面の笑みでうながす藤原。目の前にはラーメンだけでなく、ギョウザやチャーハン、酢豚などずらりと料理が並べられる。
「いいんですか、本当に」
不安に駆られる中村はいう。
「大丈夫だよ。ね、アケミちゃん」
藤原に話しかけられ、アケミはうれしそうな笑みを浮かべた。
グラスが何度も空になり、部屋は宴席の様相を呈する。藤原は上機嫌でくだらない冗談を連発し、アケミを笑わせていた。
アケミは中村のワイシャツをはおり、下着も中村のブリーフをはいている。ブラジャーは着けてなく、最初見た印象よりも豊かなふくらみを誇示している。
「なあ、中村」
児玉は、そんなアケミを見て話しかけた。
「オレ、見たんだよ」
「なにを?」
「アケミちゃんの裸」
中村が出前を注文しに行き、藤原はビールを買いに出かける。その間、アケミは湯につかった。児玉は廊下に出て待っていたが、中の様子が気になって扉のすき間からのぞいてしまう。
全裸のアケミはたらいに座り、タオルで身体をぬぐう。白い素肌がまぶしく、しかも乳房の盛り上がりは豊満だ。腰はくびれて艶めかしい曲線を描いている。
「背は低いし、着ていた服も幼かったから勘違いしたけど、あの子、立派な大人だ」
「そうなんですか」
「こりゃ、楽しみが増えたよ」
児玉は野卑な笑みを浮かべる。
藤原は酔いがまわりはじめたのか、目を閉じてアケミの横で左右に揺れ、やがて前のめりになって居眠りしてしまった。
「ねえ、アケミちゃん」
児玉はいう。
「藤原を寝かせたいから、今度はオレの部屋に来ないか」
「え?」
「おもしろいマンガがあるんだ。読みたくない?」
「うん、アケミ読みたい」
「児玉さん」
児玉の意図を察した中村は、怪訝な表情で忠告する。
「よくないよ」
「なにが?」
「なにがって……」
「大丈夫だよ。あの子は十分大人だ」
「でも」
「大丈夫、大丈夫。さ、行こうか」
児玉はアケミを立ち上がらせ、部屋から連れ出そうとする。
「中村、藤原のこと頼むわ」
そう言い残し、児玉はアケミといっしょに、その場をあとにした。
大いびきをかいて眠っていた藤原は、むくりと身を起こした。
「いま何時だ」
時計を見ると午後5時。まだ酔いの冷めやらぬ藤原は、トイレに行こうと部屋を出る。
「藤原さん、起きたんですか」
炊事場で出前の皿とビールのグラスを洗っていた中村は、藤原の姿を見て声をかける。
「そのまま返せばいいのに。お前、ホント、マジメだな」
「いえ」
その時、児玉の部屋の扉が開いた。出てきたのは児玉ではなく、アケミだった。
藤原と中村は、無言でアケミを見る。アケミは妖しいまなざしを漂わせながら、少し乱れた髪をかきあげる。素肌は上気し、薄い桃色に染まっていた。
「ふう」
アケミは大きくため息を吐く。
「アケミちゃん、児玉は」
「寝てます」
そのままアケミはトイレに入る。藤原と中村は、あわてて児玉の部屋の中を見た。
児玉はあお向けになって熟睡していた。衣服は身に着けず、下半身にチリ紙をつけて大の字になっている。
無言で互いを見つめあう藤原と中村。やがてトイレからアケミが出てくる。
「アケミちゃん……」
自分の尿意を忘れて藤原はたずねる。
「いったい……」
「ダメ、ダメ。へたくそ」
「え?」
「やっぱり、ちゃんとお風呂に入りたい。お風呂屋さんはどこ?」
屈託のない表情でアケミはいう。藤原は場所を説明し、中村は、ワイシャツだけじゃ外に出られない、と薄手のコートをアケミに手わたした。
夜、今度は藤原がアケミを預かることになる。児玉は部屋にこもったきり、外へは出てこなかった。
「児玉がどんな目にあったのか、今度はオレが試してみるよ」
そういって、風呂から戻ったアケミの肩を抱き、藤原は部屋の扉を閉めた。
自分の部屋に戻った中村は、藤原とアケミのことを思うと気が気ではなかった。
アケミはたしかに幼い。中学生と見まがうほどに。しかし、児玉の部屋から出てきたアケミは淫靡な妖艶さをたたえていた。
「アケミは十分に大人だよ」
そんなふうに漏らした児玉の声が脳裏でこだまする。
「藤原さんは、いまごろ……」
裸にむいたアケミにおおいかぶさり、乳房を揉んで乳首を舐める。抵抗を示さないアケミの陰部をいじくり、そそり立った一物を挿入する。
そのとき、アケミはどのような表情を浮かべ、どのような声を漏らすのだろう。アケミの肉体の感触、肌のなめらかさはどんな感慨を藤原に与えるのだろう。そして、アケミの内部。
中村は女性を知らない。女性の肌や筋肉の質感は多少なりとも想像できる。しかし、女陰の感触については、まったくわからない。
悶々とした時間が過ぎる。テレビもない、本ばかりが積み上げられた部屋で、中村はひざをかかえて時間の過ぎるのを待った。
すると、藤原の部屋の方から扉の開く音がした。やがて小さな足音がして中村の部屋の前で止まる。
中村は聞き耳を立てた。足音は止まったまま、ドアが軽くノックされる。
「はい」
「アケミ」
少し鼻にかかったアケミの甘い声が中村の神経を揺さぶった。
中村がドアを開けると、髪を乱し、ワイシャツのボタンを全部はずしたアケミがいた。
「いい?」
「あ、はい」
中村が返事をすると、アケミは部屋に入ってドアを閉める。
「終わったよ」
「え?」
「藤原っていう人と終った」
アケミは両足を外側に曲げて腰をおろす。
「児玉っていう人よりはましかな。でも、へたくそ」
「そ、そうなんですか」
「次はあなたの番でしょ」
「いや、それは」
「シタくないの? アケミのこときらい?」
中村はアケミを見る。乳房の輪郭がはだけたシャツの間から見える。乳首の先が透けている。はいているのは中村の白いブリーフ。「きらいじゃないけど」
「じゃあ、どうして?」
「じつはボク……」
「あ、ひょっとして童貞?」
中村は素直にうなずいた。
「やだ、うれしい」
「え?」
「アケミが初めての女になるのよ。えぇっと中村さん?」
「はい」
「中村さんの初めての女にアケミがなるのよ。うれしい」
アケミは屈託のない笑みをこぼす。少女の面影を垣間見せるが、艶めかしい雰囲気に満ちている。
「ねえ、しよ。アケミを抱いて」
アケミはワイシャツを脱いだ。中村は思わず目をそむけてしまう。それでも好奇心に駆られて視線を向けると、アケミは下着も脱ぎ捨て裸体をあからさまにしていた。
「アケミを楽しんで」
「あ、アケミちゃん」
「なあに?」
「きみは、本当はいくつなの?」
「さあ」
「さあって……」
「アケミがいくつで、どうしてここへやって来たのか。そんなこと、必要ある?」
「それは……」
「ややこしいこというんなら、させてやんない。それでもいいの?」
アケミは前かがみになって中村に迫る。もはや中村にあらがう意思はない。
「さあ、アケミをごちそうしてあげる。これから、うんと気持ちよくなって」
アケミは中村の衣服を取り去り、あお向けに寝かす。緊張のためか、中村の男根は縮んだままだ。それを手に取り、舌を伸ばしてアケミは全体をぬぐった。
「あ、ああ……」
ねっとりとした感触がパルスとなって全身を駆けめぐる。またたく間に中村の肉棒は屹立に至る。
アケミは中村をほお張り、全身を揺らしながら刺激をあたえた。
「ああ、そんな……」
絡まる舌とほほの圧迫、唾液のヌルみと口腔の温かさに、中村は身体中の筋肉がしびれるのを知る。
「ふうう、うん……、気持ちいい?」
「いい、すごくいい」
「ふふふ、出したくなったら出してね」
中村を見つめながら根元に手をそえ、アケミは首を上下させる。くちゅぴちゅと淫猥な音がひびき、よだれがこぼれて中村の下半身を濡らす。
「ああ、ダメだ」
「うんふうう、出して、うんうん、出していいよ」
中村の脳髄が混濁する。身体中の体液が集中し、暴発が間近に迫ってくる。細胞の一つ一つが伸縮し、解放の時を待つ。
「あ……」
中村はほとばしりを放った。生まれて初めて女性にそそぐ射精の瞬間、目の前が白くなり意識と感覚が薄らいでいく。
「んん、むうん……」
発射の勢いに眉根にしわを寄せながら、アケミは全部を受け止める。そして最後の1滴まで搾り取ると、中村をいったん抜き取ってゴクリと全部を飲み干した。
「まだ大丈夫よね。初めてだもん」
しなびつつある中村を、ふたたびしゃぶり復活をうながす。肉柱はすぐに元気を取り戻す。
「上に乗ってあげる」
アケミは両手で髪をあげつつ、ふわりと中村の股間にまたがると、そのまま生の業物を迎え入れた。
「どう? アケミの中」
「いい、すごくいい」
「おっぱい触って」
中村の手をいざない、乳首を手のひらにあてる。中村は指に力をこめ、軽く食い込ませる。
「うん、もっと乱暴にしてもいいよ。やん、ねえ、舐めてもいいよ。舐めて、おっぱい舐めて」
上半身を起こし、中村はアケミの乳房に顔をうずめた。
アケミが体躯を上下させるたびに、ボリュームのある肉塊がほほを打つ。色づきの薄い乳首を含めば、極限まで甘さをおさえた砂糖水の味がする。
下半身はアケミの律動に合わせて、蜜壺を攪拌した。熱のこもった淫筒は、中村の一物を芯まで締めつける。
肉襞がまとわりつき、雌汁が染み込んでくる。アケミが腰を大きく上げると、とば口がカリに引っかかり抜け落ちを阻止する。
「やあん、いい、アケミも気持ちいい!」
小さな身体をバウンドさせ、アケミは甲高い声をあげた。中村は乳房にしゃぶりつきながら、徐々にアケミをあお向けにする。
アケミにおおいかぶさり、主導権を握った中村。アケミにキスをねだり、夢中で腰を振る。唇を重ね、舌を吸い、アケミは潤んだ眼差しで中村を見つめた。
「いい、中村さん、いい、ステキ」
中村の突き刺しに合わせ、リズミカルに揺れるアケミ。アケミは両脚を掲げ、中村の腰に巻きつける。
「だめ、もう……」
「出そうなの? イキそう?」
「うん」
「いいよ、アケミもイッちゃう。いっしょに」
「外に……」
「ダメ、中に」
「それは」
「抜いちゃ、ダメ」
アケミは脚に力をこめる。中村は腰を引くことができない。
「ダメだよ、ダメ」
「いいの、いいの、出して。やん、アケミもイク、イッちゃう!」
アケミは中村との密着を強くした。我慢の限界をおぼえた中村は、そのままアケミの胎内に精虫をほとばしらせたのだった。
「あいつ、どうしちゃったんだろ」
藤原はいう。
「小悪魔に寝取られた」
児玉はつぶやく。
「寝取られはおかしいだろう。誘惑に負けたってところか」
次の日、朝がきて昼になっても姿をあらわさない中村とアケミが心配になり、藤原はカギのかかっていない部屋を開けた。
部屋の中は蔵書が残されただけで、中村の姿も生活道具も、衣服も残されていなかった。もちろん、アケミの姿も見当たらない。
「あ、書置きだ」
児玉は座敷机の上に置かれた手紙を見つける。
「藤原さん、児玉さん、大変お世話になりました。ボクのことは探さないでください――、だってよ」
「いつの間に抜け出したんだよ」
藤原はアパートの玄関方向を見る。
「でもさ、藤原、すごい女だったよな」
児玉も同じ方向を見ていった。
「ああ、搾り取られたよ。子どもみたいな顔してさ、すっげえ淫乱」
「でもさ、どこからここへ来たんだ? しかも大金をもって」
「さあ。謎の小悪魔か」
「中村、童貞だっただろ。だからさ、たった1回でのめりこんじゃっただな」
「1回じゃないだろ。2発、3発はしてるよ」
含み笑いをする藤原。児玉はポケットから煙草を取り出して1本を咥え、もう1本を藤原に差し出した。
「なんだかさ、終わりって感じだな」
煙をくゆらせながら児玉はいう。
「終わり?」
マッチを振って火を消しつつ、藤原はたずねた。
「ああ、こんな生活も終わりだな。オレも、アパート出るわ」
「出てどうするんだよ」
「学校に戻る」
「え、児玉、お前退学してなかったの?」
「あああ、籍はおいたまんま。学費は親が払ってたみたいだし」
「なんだよ、オレだけ置いてけぼりかよ」
児玉は軽く手を振って自分の部屋へ戻った。藤原は、そんな児玉の姿を見て、一つの季節が通り過ぎたことを察したのだった。
- 【長月猛夫プロフィール】
- 1988年官能小説誌への投稿でデビュー。1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作。主な著作『ひとみ煌きの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)/『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)/『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)ほか。
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