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昭和官能エレジー第7回「不良少女との残念な初体験」長月猛夫

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昭和官能エレジー第7回「不良少女との残念な初体験」長月猛夫

この官能小説は、現在50代から60代の方々の若かりし時代を舞台背景にしています。貧しかったけれど希望に満ち溢れていたあの頃、そこには切なくも妖しい男と女の物語が今よりも数多く存在しました。人と人とが巡り合う一瞬の奇跡、そこから紡がれる摩訶不思議な性の世界をお楽しみください。 編集長

【不良少女との残念な初体験】長月猛夫

 母親が厳格なこともあり、飯塚は異性や性的なことに関して奥手だった。そのうえ身体は細くて身長は低く、体力もなく、運動音痴で色白といった風体なので「オカマ、オカマ」といじめられる。

それは高校生になっても同じで、女性に興味は持つものの自ら行動を起こすことはなく、気のあった男友だち同士で、あれこれ他愛のない話をするほうが楽しいという学生生活を送っていた。

夏休みを間近に控えた雨の日のことだった。飯塚は一人で帰宅を急いでいた。すると、道の途中で女子の集団がたむろしているのを見つけた。

制服は近所でも指折りの不良女子高のもの。全員が靴のかかとを潰してはき、ぺらぺらのカバンを持って地面すれすれのスカートをはいていた。

「イヤだな」

 そう思った飯塚は、傘を前に倒し、足早に通り過ぎようとした。すると、その中の一人が飯塚を呼び止める。

「待ちなよ」

 飯塚は立ち止まり、うつむき加減で立ち止まった。

「京子がさぁ、話し、あるんだってさ」

 周囲にうながされ、京子と呼ばれた女子が飯塚の前に立ちふさがる。

なにをされるのだろう。こんな連中に待ち伏せされるようなことはしていない。カツアゲか。それなら小銭をわたして、さっさと退散するのが得策だ。

飯塚は傘を片手にポケットの中を探る。すると京子は、飯塚が思いもよらないような言葉を口にした。

「アンタ、付き合ってる子、いるの?」

 質問の意味が飲み込めない飯塚は、ポケットに手を入れたまま、呆然と京子を見つめてしまう。

「はっきりしなよ。いるの? いないの?」

 雨脚が強くなる。傘の上でパラパラという音が響く。

「い、いない」

 飯塚は、それだけを答えるのがやっとだ。

「じゃあ、アタシと付き合いなよ」

「は、はい?」

「なんべんも同じこといわせるな。アタシと付き合おうっていってんだよ!」

 飯塚は驚き、改めて京子を見る。

髪の毛はチリチリのパーマがかけられ、制服姿に似合わない派手な化粧をしている。とてもじゃないが好みのタイプではなかったし、まったく別の世界に住む人間だという意識をいだいてしまう。

「なんだよ、か弱い女の子が決死の覚悟で告白してんだぜ。ちゃんと答えろよ」

 周りの女子が飯塚を責める。

「い、いえ、答えろっていわれても……」

「だからさぁ、いったじゃん。こんな男のどこがいいんだよ」

「いいじゃん。アタシにはアタシの好みっていうものがあるんだから」

「好み……、ですか」

 京子の言葉に飯塚は聞き返す。

「そうだよ。京子はさ、なんでか知らないけど、お前みたいなナヨナヨっとした男がいいっていうんだよ」

「だからさ、アタシらがキューピット役を引き受けたんだよ」

「でさ、どっちなんだよ、答えは!」

 キューピットは脅しや恫喝をしない。飯塚は思う。

「答えは……」

「いいんだな。京子と付き合うのOKなんだな」

「え、いえ、それは……」

「OKだってさ。京子、おめでとう!」

 勝手に決まる。雨はますます強くなる。そんな中で女子たちは京子を囲んではしゃいでいる。

「まいったなぁ」

 飯塚は一言漏らし、早くこの場から解放されることだけを願った。

 不良少女たちの勢いに負け、飯塚と京子は付き合うようになった。とはいうものの、飯塚が好きで、好きでたまらない相手ではない。どちらかというと、あまりお近づきになりたくないタイプだ。そのため飯塚は、その後まったく連絡もせず日々をやり過ごしていた。

 そんなある水曜日のこと。友人数人と家路に着こうと校門を出たとき、京子と彼女の友人が飯塚を待ちかまえていた。

「やだな、J女子の不良だよ」

「あんなのとは、口もききたくないよね」

 飯塚の友人はいう。飯塚は曖昧な返事をして、気づかれないよう願う。しかし京子の友人の一人が目ざとく飯塚を見つけ、近寄ってきた。

「おい、顔、貸しなよ」

 飯塚の友人たちはおびえ、そそくさとその場を立ち去ってしまった。飯塚は腕をつかまれ、京子の前に差し出される。

「アンタ、どういうつもりなんだよ。アタシとアンタは付き合ってるんだろ? 恋人同士なんだろ?」

「そう……、なりますか」

「いい加減なこといってんじゃねえよ!」

 京子はいきなり飯塚のひざを蹴飛ばした。その勢いと痛みに、飯塚はうずくまってしまう。

「今度の日曜日、暇か?」

 飯塚の頭上から京子が声をかける。

「日曜日は、ちょっと……」

 痛みに耐えながら、京子を見あげて飯塚は答える。

「なんでだよ」

「いや、その、まあ、なんていうか……」

「暇なんだな!」

「はい」

 京子の勢いに臆し、飯塚は承諾してしまった。

「じゃあ、11時に駅で待っとけ」

「11時? どうして?」

「デートだよ、アタシと二人きりで楽しいデートだ。わかったな」

 そういい残して京子たちは去った。飯塚は大きくため息を吐いて見送る。その様子を遠巻きにながめていた学生たちは、怪訝な表情でひそひそ話をくり返す。

「まいったなぁ、もう」

 立ちあがり、ズボンの汚れをはたき落としながら、飯塚は周囲を見まわす。学生たちは飯塚と目を合わさないようにして、次々に移動をはじめた。

なんとかして逃げ出せないものか。その日から四六時中、飯塚は考えた。

親戚が亡くなった、急にお腹が痛くなった、母親から男女交際は禁じられているなどなど、言い訳はすぐに思い浮かぶ。しかし、急用や体調不良は一時的な言い逃れでしかないし、母親の忠告にしたがって逃げるなどは、さすがの飯塚も高校生男子としてのプライドが許さない。

「デート、デートねぇ」

 恋人と楽しく過ごしたことを自慢げに話す同級生もいた。話を聞いて、飯塚はあこがれをいだいてしまう。

好きな女の子と長い時間、二人きりで過ごす。愛らしい表情を独占し、間近に気配を感じ取り続ける。気配だけでなく、手を握って感触をたしかめる。

だが、今回の相手は京子だ。

「どうしよう、いったい、どうしよう」

 待ち合わせ場所に行かなければ済むことかも知れない。だが京子は、いきなり飯塚を足蹴にした凶暴な性格だ。すっぽかせば、今度はどんな仕打ちが待ち受けているかわからない。ふたたび放課後の校門で待ち伏せをする。いや、自宅に乗り込んでくるかもしれない。

「いや、待てよ……」

 飯塚は思った。

 京子は飯塚のナヨナヨしたところがいいといっていた。ならば、逆のタイプになればいい。力強くて強引で、凛々しい男に生まれ変わる。

「無理だよ、いまさら」

ならば京子の、いや女性全般が嫌悪する男を演じればいい。それならば簡単だ。功を奏すれば、二度と会うこともあるまい。

「なるほど」

 飯塚は土曜日の夜に風呂にも入らず、当日はヨレヨレのシャツとズボンという出で立ち。しかも寝ぐせのついた髪型のまま、京子の待つ駅前へ向かった。

 京子は待っていた。そして飯塚は私服の彼女を見て、驚きの感情をおぼえてしまう。

 京子はすそのひろがったパンタロンに、ぴっちりとしたTシャツを着ていた。色彩は流行のサイケ模様。つばの広い帽子をかぶりサングラスをかけている。

その姿は、とても17歳の高校生とは思えないほど大人びていた。

「あ……」

 手持ちぶさたにたたずんでいた京子は、飯塚を見つけると小走りで近寄ってくる。表情は満面の笑顔。化粧も薄く、その変わりように飯塚はポカンと口を開けてしまう。

「なんだよ、せっかくのデートなのに、そのかっこうは」

 飯塚をジロジロながめて京子はいう。

「いや、ボクは、その……」

 さすがに飯塚は気まずさをおぼえる。

「まあいいや、どこ行く? 映画? 遊園地?」

「え、どうしよう」

「じゃあ、映画にしよう。見たいのがあったんだ」

 そういうと、京子はいきなり腕を組んできた。

京子の胸は、案外ふくよかだ。とくにこの日は身体に張りつくシャツを着ていたので、よけいにそのふくらみが強調されている。

飯塚の腕は京子の腕と絡まり、半そで同士の素肌が密着する。しかもひじが胸乳に当たり、やわらかな感触が伝わってくる。

気恥ずかしさを感じ取りながら、飯塚はかすかな興奮もおぼえてしまう。

「女の子って、いいもんだな」

「え? なんかいった?」

 聞き返す京子の眼差しが、サングラス越しにうかがえる。飯塚は大きく首を横に振り、映画館に向かって街を歩いた。

 京子が映画を指名したのは、飯塚にとっても幸いだった。館内に入れば話をする必要もないので、気が楽だからだ。ただ、薄い闇の中で、飯塚は何度も京子の表情をうかがった。

スクリーンの光に浮かぶ面立ちは、まつげが長く、ひとみは大きく、鼻筋が真っ直ぐで小鼻は小さい。唇に肉厚があり、あごが少しとがっている。

愉快なシーンでは大きく口を開けて笑い、悲しい場面では少し涙ぐんだりする。思いのほか表情は豊かで、飯塚はすなおにきれいだと思ってしまった。

 映画館を出てから喫茶店に入る。飯塚にとっては初めての体験で、緊張を禁じえない。

「これからどうする?」

 ソーダ水のストローをもてあそびながら、向かい合った京子は飯塚にたずねた。

「どうしよう」

「なんだよ。はっきりしなよ、男だろ」

 男であろうがなかろうが、これが自分の性格だ。そんな自分を選んだのは君のほうだろうが――と、いいそうになったが、飯塚は口をつぐむ。

「そうだな、お酒でも飲まない?」

「え!」

「そんなに驚くことないだろ」

「でも、ボクら高校生だし」

「臆病だな。けどまあ、アンタのそのカッコじゃ断られるよな。う~ん、そうだな……」

 京子は深く考える。

「そうだ、二人きりで飲めるとこがある」

「え? どこ?」

「まかしときなって。ついておいで」

 そういって京子は席を立った。

 この日、飯塚は京子と会うのがイヤでイヤで仕方なかった。だが、時間がたつにつれ、もう少しいっしょにいたいという気持ちが強くなる。決して恋愛感情を持ったわけではない。しかし、好意が湧き出しつつあるのはたしかだ。

 制服でない京子は飯塚より大人だ。それでも、少女らしい愛らしさを兼ね備えている。言葉遣いは荒いが、ときおりやさしさや飯塚に対する気遣いも見せてくれる。感情表現も豊かだし、顔立ちも整っている。

 それに、飯塚は京子の感触を知ってしまった。肌が触れ合い、乳房の柔軟さも感じとった。わずかではあるが、女性というものを少しは知りえたような錯覚におちいる。もう少し時間がたてば、もっとわかることが出来るかもしれない。

 期待はふくらむ。

「なにしてるんだよ」

 京子の後姿をながめていた飯塚は、せかされるままに席を立ち、あとに続いた。

京子が飯塚を連れていったのは、今でいうラブホテル。さかさクラゲ、連れ込み宿とか呼ばれ、もちろん飯塚にとっては初めての体験だ。

「さ、はやく」

 この時点になって、飯塚はとんでもないことが起きそうな予感がした。京子と契ってしまうのではないかという恐れだ。

 飯塚には理想がある。それは、将来を誓い合った本当に好きな女性と、海の近くのホテルで初めてを迎えるというものだ。もちろん、女性も初めてであってほしい。

乙女チックと笑われようがかまわない。夢は簡単に諦めるものではない。しかし、このままだと、場末の宿でまだ知り合ったばかりの相手と交わってしまう。

京子への思いは変化した。とはいえ、まだ心を許してしまったわけではない。初めての相手が京子であったとしても、もっと時間をかけて愛を育み、互いを分かり合い、納得の上で重なり合う。それに、こんな場所に誘うくらいだから、京子は経験済みなのだろう。

「こんなところはやめとこうよ」

「びびってるの?」

「そうじゃないけど、ボクたち高校生だし」

「高校生、高校生って、制服脱いだら、ただの男と女だよ。それに」

「それに?」

「アタシはもう、結婚できる歳なんだから」

 たしかに、京子のいうとおりかもしれない。だが、飯塚にとっては一大事であることに変わりはない。なんとか逃れようとあれこれ考えては見たものの、いい案は思い浮かばない。そうこうしているうちに、じれた京子は飯塚を玄関に押し込んだ。

「いらっしゃい」

 若すぎる二人に怪訝な表情を浮かべたが、案内のおばさんは部屋を用意した。

 風呂に湯が入れられ、茶が運ばれてくる。京子は慣れているのか、堂々とした態度で接する。一方の飯塚は、緊張と不安で今にも昏倒してしまいそうになるのをこらえる。

「じゃあ、ビールでも飲むか」

 備えつけの冷蔵庫から、京子は瓶ビールを取り出した。コップが二つ用意され、こぽこぽと音を立ててそそがれる。

「じゃあ、かんぱ~い」

 酒類を口にするのは、正月のお屠蘇以外経験がない。しかし、のどが渇いていた飯塚は一気に飲み干してしまう。

「お、いける口じゃん。ほら、もう1杯」

 そそがれるままに、飯塚はグラスを空にした。すると、いままでの緊張がほぐれてきたと同時に睡魔に襲われてしまう。

飯塚はコクリコクリと船をこぎはじめ、そのまま眠りに落ちたのだった。

 気づいたとき、飯塚はベッドの上にいた。頭に痛みをおぼえつつ目を凝らすと、浴衣姿の京子が飯塚に覆いかぶさっている。

「な、なに!」

 飯塚は驚き、身を起こす。

「じっとしてればいいんだよ。アンタ、どうせ初めてだろ。アタシが全部してあげるから」

 そういって京子は飯塚に抱きついてきた。

「い、いやだよ、いやだ!」

 飯塚は叫んで逃げだそうとする。

「どうしてだよ!」

「だ、だって……」

「はは~ん、こわいんだ」

「そんなことない」

「じゃあ、どうして」

「どうしても」

「これを見ても?」

 京子は浴衣を脱いだ。下着はなく、肌理細やかな素肌が露呈される。

ぷっくりと形よく盛りあがった乳房に桜色の乳首。下腹には薄い茂みが生えそろい、腰から臀部にかけて艶美な曲線が描かれている。

飯塚は彼女の裸体を見て、逃げる意志を失った。それを知った京子は、ふたたび飯塚に襲いかかり、ズボンと下着に手をかける。

「や、やめて!」

 我に返った飯塚は、やはり拒絶を示す。

「そんなこといっても。ほら」

 むき出しになった飯塚の股間に京子は手を伸ばした。そして、半ば力のこもった肉棒を握り、しごきはじめる。

「あ……」

 飯塚の意思に反し、一物は大きく固く勃起をはたした。京子はうれしそうに長大になった男根をもてあそぶ。

「ほらほら、挿れたい、したいっていってるよ」

「ダメだよ、いやだ、こんなのいやだ」

「犯される女みたいなこといわないの。それともなに? アタシじゃダメなの?」

「そ、そんなことないけど」

「じゃあ、ほら、オッパイ、触っていいよ」

 京子は飯塚の手を胸にいざなう。感触はなめらかで艶やかで、少し指に力を加えると形はゆがんでしまうものの、弾き返す力がこもっている。

「舐めてもいいよ」

 妖艶な仕草と声、そして表情で京子はいう。飯塚は欲情に屈し、彼女の乳房にむさぼりついた。

「どう? おいしい?」

「う、うん」

「ふふふ、アンタ、かわいいね。かわいい男、大好き」

 京子は自分でいじくって部分を濡らし、飯塚にまたがった。ほどなくして、ぬるりとした感触と温かさで飯塚が全部覆われる。

「ああ……」

 か細い声を出して、京子は表情を淫靡にしかめる。飯塚は、もはや頑なな拒絶を示すこともできず、京子にすべてをゆだねてしまう。

「ううん、いいよ、気持ちいい」

 京子は飯塚の上で身体を揺さぶり、快感を口にする。

「どう、アタシ、気持ちいい?」

「う、うん」

「アタシも。やん、当たる」

 肢体を弓ぞりにし、京子は躍る。飯塚も陶然となり、悦楽を享受する。

 京子の内部は飯塚を圧迫し、力強さで攻め立てる。それでいて温度や粘りのある湿潤、なめらかな膣襞のまとわりつきが、慈愛に満ちた刺激をもたらす。

 飯塚は頂点を迎えつつあった。だが、ゴムもつけていない生身の状態だ。このまま吐き出すわけにはいかない。

「ダメだ、出そうだ」

 頂点の訪れを京子に訴えた。

「え、もうイッちゃうの?」

「だって」

「中はダメだよ。うん、もう、しかたないなぁ」

 京子は抜き取って飯塚から身体を離した。そしてうつ伏せになって一物を握り、激しくしごく。

「あ……」

 刺激に耐えられず、飯塚は射精した。大量に吹き出した精液は弧を描き、飯塚の胸から腹にかけて飛び散ったのであった。

 コトが終わり、京子は憮然とした表情になる。

「なんだよ、ちょっとは楽しそうにしろよな」

 射精によって平常心を取り戻し、同時に虚脱をおぼえた飯塚は、後悔にさいなまれて嗚咽をあげてしまう。

「こんなの、こんなのはイヤだ」

「なにがイヤなんだよ。アタシがそんなにイヤなのかよ」

「違う、違うけど」

 うまくはいえない。京子に嫌悪をいだいているわけではない。そして、興奮もしたい極度の快感も得た。そこは後悔しない。しかし、理想とはかけ離れた初体験に悔いてしまう。

 一度、あふれ出した涙を飯塚はとめることができなかった。

「かわいい、女みたいな男もいいけどさ、ここまでくると興ざめだよ」

 そういって京子は飯塚から離れ、風呂で身体を洗うと、さっさと身支度を整えて部屋を出て行った。

 その後、京子からの連絡は途絶えた。しかし、飯塚は一度体験した感触が忘れられなくなっていた。

最初のときは突然で、心の準備もできていなかった。互いをよく知って、初体験同士が結ばれるという理想はかなわなかったが、それでも京子に不満は感じなかった。

2度目はじっくりと甘美な世界を体験してみたい。順番は入れ違ったが、それから京子とわかり合えればいい。その先には、きっと楽しくて満足できる世界が待っているはずだ。

飯塚は最初のころとは逆に、京子の学校の校門前で待ち伏せた。しかし、京子は飯塚を一瞥するなり、いきなりビンタを加える。

「なんだよ、偉そうに彼氏面すんなよ。テメエなんかもう相手にしたくねえんだ。二度とアタシの前に姿、見せるんじゃないよ!」

 京子は飯塚に背中を見せ、振り返りもせずに去っていく。飯塚は平手打ちをくらったほほを押さえ、長いスカートの中で左右に揺れる京子のヒップを、いつまでもながめていた。

【長月猛夫プロフィール】
1988年官能小説誌への投稿でデビュー。1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作。主な著作『ひとみ煌きの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)/『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)/『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)ほか。

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