Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長
【旅先で出会った酒乱女】東京都在住T・Kさん(55歳)
今年の夏の初め、コロナ禍の影響もあって経営していた会社が潰れた。
長年連れ添った女房は子どもを連れて出て行くし、債鬼が毎日のように押し寄せてくる。これまでは社長、社長とおだてていた奴らも手のひらを裏返したように冷たくなる。
もはやこれまでと覚悟を決め、わたしは死に場所を求めて旅に出た。
北陸の小さな港町にわたしはたどり着いた。別に理由はない。カネがそこで尽きたのだ。
わたしは小さな駅前旅館に荷物を預け、夜の街に出た。ポケットには1万円札が1枚だけ。人生最後の夜だから久しぶりに贅沢をしようと、小さな居酒屋ののれんをくぐった。
無愛想なオヤジが一人で切り盛りしている、カウンターだけの小さな店だった。夜の8時だというのに、客の姿はわたしだけ。
ビールを頼んでのどを潤すと、久しぶりのアルコールに身体が芯から震えた。
「こんなところ、債権者に見つかれば大事だろうな」
わたしは自虐的にほほ笑む。そして、オヤジが見つくろってくれた肴を口に運びながら、冷や酒をコップで頼んだ。
そのとき店の扉が開き、人が入ってきた。こんな所にわたしを知る人間など来るわけはないのだが、ついビクッとしてしまう。
それは40代くらいの中年女だった。
「オヤジ、酒」
もうかなり飲んでいるのか、女はわたしのとなりにどさりと座ると、呂律のまわらない声でいう。
「お前になんか飲ませる酒はねぇよ」
「なんだよ。こう見えても客だよ。ほら、カネなら」
薄汚れたワンピース姿の女は、ポケットからしわくちゃの千円札を数枚出す。
「これで飲ませてくれよ。酒、飲ませてよ」
「帰んな。お客さんの迷惑だ」
その声に、女はうつろな目でわたしを見る。
「客ってあんたかい。見かけない顔だね」
「ええ、きょう着いたばかりですから」
「仕事? まさかね。こんな田舎に仕事で来るヤツはいねぇよ。まさか観光でもないだろ」
「ええ、まあ……」
わたしはグラスを口に運びながら視線をそらす。
「ふ~ん、なんかわけありみたいだね」
わたしはその言葉にギクッとなる。
「話、聞いてあげようか」
「え?」
「話せば、少しは気分も楽になるってもんだよ」
「やめれ、やめれ」
「うるさいよ! オヤジ」
わたしは席を立ち、店を出ようとした。
「逃げるの?」
「え?」
「逃げるのかいっていってんの。そうやって逃げてばかりでどうする」
わたしは女を注視した。酔っぱらってはいるが、よく見るとなかなか整った顔立ちをしている。
「飲ませてくれたらさ、なぐめてやるよ。どうせ泊まってんのは、駅前の木賃宿だろ」
「ええ」
「いこう」
女も立ちあがり、そしてわたしに腕を絡めてくる。
「オヤジ、終わったら来るよ」
女の声に、店のオヤジは何も答えなかった。
旅館の部屋に入り、わたしと女は酒を並べて飲み始めた。
女はかなりのピッチでグラスを空ける。調子に合わせていると、わたしもいつしか酔いがまわりはじめる。
「あんたさ、どこの人?」
「東京」
「だろうね、言葉がそうだもん」
「お姉さんもそうだろ」
「わかる? 方言が使えないもんね」
彼女は自分の生い立ちを語りはじめた。
高校のとき両親が事業に失敗し、母親は行方不明、父親は自殺。親戚を頼ってこの土地に来たが、満足に学校にも行かせてもらえず、卒業すると水商売の道に入る。
「この辺は温泉街が近いから、カネを稼ぐのはわけなかった。スケベなオヤジ相手に股開くとさ、ガッポガッポ稼げたもんだ。でも、この歳になっちゃダメだね。それに、いまはギャル? カネ目当てにさ、若い子がどんどんやってくる」
「お姉さん。いまでも十分、大丈夫だよ」
「うれしいこと、いってくれるじゃない」
女はわたしにすり寄ってくる。
「ウチの父親さ、首くくって死んだんだ。天井からロープ垂らして、ブラーン、ブラーンってぶらさがってた。わけのわからない汁、いっぱい垂らしてさ」
わたしは息を呑んで彼女の顔を見る。
「死んだパパを最初に見つけたのはわたしだったけど、生きていたパパを最後に見たのもわたし」
「そ、そう……」
「あんた」
「え?」
「そのときのパパと同じ目してる」
彼女の目にあわれみが浮かぶ。わたしは視線をそらすことができない。
「もうちょっと、なんとかできなかったのかなって、いまでも思う。わたしが一言声をかけてやれば、助かったんじゃないかなって思う。やさしいパパだった。大好きだった。だから、同じ目をしてる人見ると、ほおっておけないんだ」
「わたしが……」
「死ぬなら勝手にすればいいよ。けど、わたしに後悔させないでよ。わたしができること、いまできることしてあげるからさ。することして、気持ちよくなって、それから死ぬなりなんなり、好きにしておくれ」
彼女は立ちあがり、いきなり服を脱いだ。
くすんだ壁に毛羽立った畳。とてもじゃないがきれい、清潔とはいえない部屋の中で立ちすくむ姿に、わたしは茫然となる。
白く澄んだ肌は白磁のような光沢を放っている。乳房は形よく盛りあがり、春を売る商売をしていたとは考えられないほど乳首の色は薄い。
「電気、消して」
わたしはいわれるままに明かりを消す。
「アンタは、なにもしなくていいから。なにも考えなくていいから」
声色がやさしい。
窓から青い月の光が差し込んでいる。遠くに聞こえる波の音。
彼女はわたしをあお向けに横たえ、服を脱がしてくれた。
「うんとよがればいいさ。なにもかも忘れて」
わたしの胸や腹を舐め、股間に顔をうずめる。そして、力のこもらない一物に舌をはわせると、おもむろにほお張る。そのやわらかでなめらかな感触に、わたしは声をあげてしまった。
「ほら、死にたい人間のオチンチンが固くなってきた」
モノはグングン硬張し、そそり立つ。彼女は手をそえながらわたしにまたがると、そのまま腰を沈めてきた。
「う……、く……」
短い喘ぎ声をあげ、最初はゆっくり、やがて激しく腰を振りはじめる。細かく動く内部の襞と圧力のある締めつけ。わたしは薄い闇にうごめく彼女を見ながら、乳房に手を伸ばす。
「いいよ、吸ってもいいよ」
身体を起こしてしゃぶりつく。まるで母親が赤児を抱くように、彼女は迎え入れてくれる。
「悲しいねえ、苦しいねぇ、でも、でも……」
「死にたくねえ、死にたくなんかない」
「生きればいいんだよ。どんなにつらくたって、どんなに苦しくったって。もうイヤだよ。悲しい目、苦しい目を見るのはもうイヤだ」
わたしは下から彼女を突きあげた。彼女は大きく身をのけ反らせて歓喜を示した。
わたしはそのまま射精する。彼女は最後の1滴まで受け止め、身を震わせた。
朝起きると彼女の姿はなかった。わたしはなんとなく清々しい気分のまま宿を出た。
もはや死ぬ気はなかった。死ぬ以上に怖くて苦しいことなどないと思っていた。それは彼女の言葉によるものだった。
「もう、後悔はさせないで」
彼女のおかげでわたしは助かった。あれほどおびえていた債権者たちとも、冷静に交渉できる勇気を持った。
いまは生活保護を受けながら仕事を探している。カネができたらまた、あの港町に行きたいと思っている。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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