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昭和官能エレジー第19回「哀願をくり返した通相手の少女」長月猛夫

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昭和官能エレジー第19回「哀願をくり返した通相手の少女」長月猛夫

この官能小説は、現在50代から60代の方々の若かりし時代を舞台背景にしています。貧しかったけれど希望に満ち溢れていたあの頃、そこには切なくも妖しい男と女の物語が今よりも数多く存在しました。人と人とが巡り合う一瞬の奇跡、そこから紡がれる摩訶不思議な性の世界をお楽しみください。 編集長

【哀願をくり返した通相手の少女】長月猛夫

『拝啓寒い日が続きますが、お変わりございませんでしょうか。私は元気に過ごしています。お会いできる日を心待ちにしておりますが、一つだけお伝えしたいことがあります。それは、私の年齢についてです。じつは私――』

 ここまで書いて、山口の手は止まった。

 手紙の送り先は文通相手の美咲。年齢は18歳の高校生だ。手紙をやり取りするきっかけは、山口の息子が定期購読していた学習雑誌だった。

 2年前、山口は長男の部屋の机の上に置かれていた雑誌を見つけた。ぺらぺらとめくってながめていると読者投稿のページがあり、文通相手を求めるコーナーも設けられている。

「勉強を教えてくれる人募集します」「お友だちになってください。ただし、男の子はお断り」など、さまざまな投稿が寄せられている。そんな中に美咲のコメントも掲載されていた。

「悩みの相談に乗ってくれる人を募集します。少し複雑な問題なので、冷やかしは困ります。きちんと答えてくれる人をお願いします」

 高校1年生の女の子が真剣に悩んでいる。見ず知らずのだれかに助けを求めるくらいだから、親にも友だちにも教師にも打ち明けられない問題かもしれない。

「力になれるかもしれない」

 そう思った山口は、美咲の住所をメモして手紙を送ることにする。このとき山口は45歳だった。

『突然のお手紙を失礼いたします。私は東京都に住む山口幸太郎と申します。文通相手を募集されている旨、拝読いたしました。私は21歳の大学生です。弟の雑誌を読み、お手紙を差しあげている次第です。何かお悩みのご様子。年上ということもあり、少しはお力になれるかもしれません。ご迷惑でなければ、お返事いただけると幸いです』

 年齢はサバを読んだ。さすがに、40代半ばの中年に返信をするわけがない。そう考えてのことだ。

 山口が30歳近くも年下の女子校生に手紙を書く気になったのは、なにも美咲がかわいそうだと思っただけではなかった。

 1年前に妻を事故で亡くし、いまは一人息子と暮らしている。仕事は多忙で、子どもの世話は近くに住む祖母、山口にとっての母親に任せっきりとなっている。

 仕事を終えて家に帰っても、自分で食事をつくって一人で食べる。話し相手がいるわけでもなく、かといって再婚相手を探す余裕もない。しかも内気で口下手、人見知りが強い性格なので、女性と知り合うこともできない。

 そんな寂しさを紛らわせたい。だからといって、真剣に女性と付き合いたいというわけでもない。

 子どもたちが成人し、独り立ちしてくれるまで再婚はしたくない。となれば、女性との付き合いは遊びでしかない。それは相手にも失礼だ。真面目な性格が、そんなふうに思わせる。

 手紙だけのやり取りなら、真剣になることもないだろう。どうせなら、まったく別の世界に住む年の離れた相手のほうがおもしろそうだ。

「まあ、返事は期待できないけど」

 山口は、そうつぶやきながら、ポストに封書を投函した。

 5日がたち、仕事から戻った山口は台所のテーブルに置かれた封筒を見つける。差出人は美咲だった。

 山口は封筒を開いて便箋を取り出す。そこには少女らしい丸い字で、簡単なあいさつ文がつづられていた。

『お手紙ありがとうございます。とてもうれしいです。大学生のお兄さんなら、わたしの相談に乗ってもらえるかもしれません。わたしは、いま高校の1年生ですが、悩み事が多くて困っています。家庭もちょっと複雑で。また、お手紙します。そのときはよろしくお願いします』

 山口は、小躍りしたい気持ちとなる。生まれてこの方、女性からの手紙など受け取ったことがない。見合い結婚なので付き合う期間が短く、亡くなった女房からももらったことはない。

「ただいまー」

 そのとき、息子が戻ってきた。山口はあわてて手紙を背広の内ポケットにしまい込んだ。

 それから美咲との文通がはじまった。

 美咲の悩みは、学校のこと、友だちのこと、進学のこと、そして家庭のこと。とくに家庭のことが深刻そうだった。

 美咲の母親は彼女が幼いときに亡くなり、いまは父親と継母との3人暮らし。継母は父親がいるときは美咲にやさしく接するが、二人だけの時は人が変わったかのように厳しくなるという。

 家事も学校から戻ったばかりの美咲に押し付け、夕食も美咲がつくる。それを父親がおいしいとほめると、自分のことのように自慢する。

『でも、おかげで料理は上手になりました。早く大人になって、お婿さんに食べてもらいたいです』

「けなげなことをいう」

 山口は思う。

「ひどい母親だ。けど、オレに何ができるんだろう」

 手紙に書かれたことに対し、励ますしかすべはない。それでも美咲は、『だれかに知ってもらえるだけでもうれしいです。こんなこと、友だちにもいえないし』と書いて送ってくる。

 ただ、深刻な悩みについては2カ月に1回程度。2週間に一度の割合で交わされる手紙には、勉強や恋愛など、ごくありきたりな悩み事しか記されていない。

 高校生レベルの勉強のことなら、大卒の山口も簡単に答えることはできる。が、恋愛問題だと荷が重い。そんなときは、新聞や雑誌の悩み相談を読み、いかにも自分が考えたような形で返答する。

『さすが大学生ですね。すごく助かります。これからも頼っていいですか?』

 そう書き送ってくる美咲の便箋に向かい、「もちろんだとも」と、山口はうなずきながら口にした。

 やがて2年がたち、美咲は高校3年生。年も改まり、卒業が間近となる。山口のアドバイスが功を奏したのか、美咲の成績は伸び、大学への進学も決まったという。

『進学先は東京です。家を出ることにしました。東京なら、山口さんとも直接お話できそうですし』

 2月に届いた手紙には、そう記されていた。そして、次のように文面は続く。

『その前に一度、お会いすることはできないでしょうか。これまでのお礼もいいたいし』

 山口は迷った。

 これまでウソをついてきた。勉強は対応できたが、恋愛問題は受け売りだし、友だち関係についても知人や子どもに頼ったことがある。そして、一番の問題は年齢だ。

 大学生なんかじゃない。その辺にいる冴えない中年男だ。会えばがっかりさせるに決まっている。

 美咲の顔も知らない。しかし、18歳の女の子だから、まぶしいほどの存在感を示すだろう。これまでの手紙から推測するに、理知的で気品のある少女に違いない。自分が落胆することはあり得ない。

「もはや、これまでか」

 覚悟を決めて、山口は手紙を書く。そこに本当のことを記した。

『じつは私、ウソをついていました。大学生なんかじゃありません。年齢は47歳で子どももいます。妻は事故で亡くなりました。その寂しさを埋めるために、手紙を差しあげた次第です。

 魔がさしたとしか、いいようはありません。心よりお詫び申しあげます。これまで、本当にありがとうございました。手紙が来るのを心待ちにしておりました。手紙だけでのお付き合いとはいえ、楽しかったです。少しでも私の戯言がお役に立てたのであれば、こんなにうれしいことはありません。

 お会いすることは、難しいと思います。これで最後にしましょう。返信は不要です。春になって、大学生活を謳歌できること祈念いたしております』

 ここまで書いて、山口は大きくため息をつく。

「まあ、一つの季節が終わったということで」

 だが、投函して5日後、美咲からの返事がきた。山口は「ウソつき!」「よくもいままでだましてくれたわね!」と罵倒が記されているのを覚悟で、封を開ける。

『知ってましたよ。だって、大学生が使うような言葉じゃなかったし、大人の書くような字だったし。わたしは山口さんが、ちゃんとした大人だとわかって悩み事を打ち明けてきました。だから、これで最後だなんていわないでください。会えないなんていわないでください。申し訳ないですけど、わたしの住んでいるところまで来ていただけますか。よければ、来週の土曜日に待ってます』

 文末には美咲の住む町の駅名と時間が記されていた。

 待ちわびた一週間が過ぎた。土曜日は午前中が仕事で、終わると大急ぎで最寄り駅に向かった。

 山口の職場から美咲の住む町までは、電車を乗り継いで2時間弱。美咲との約束は夕方の5時なので、十分間に合う。

 電車は都心を離れ、郊外へ向かう。その間、山口はあれこれ考えてしまい、落ち着かない。

 果たして、美咲はあらわれるのだろうか。大人をからかっているのではないだろうか。約束の場所にきても、自分の姿を見て、そのまま帰ってしまうのではないだろうか。

 もしくは、美咲も年をごまかしているのではないだろうか。それが10歳20歳ならいいが、自分と同じような年齢の女性がやってくるのではないだろうか。

 山口は逡巡する。しかし、このまま帰るわけにもいかない。

 美咲と会って、お茶を飲んで、話をして、それで終わりなのだろうか。待ち合わせの時間から1時間足らずで日が暮れる。食事も可能だし、ひょっとしたら……。

「いやいや、まだ18歳だろ」

 言葉が声となって出そうになり、山口は慌てて口を押えた。

 電車が到着する。5時までには30分近くある。山口は駅を降りて、辺りを散策してみた。

 駅前はにぎやかだが少し離れると住宅街で、古びた一戸建てやアパートが軒を連ねている。さらに進むと田畑が広がり、空には風にあおられた雲がたなびいている。

 山口はしばらく、そんな冬枯れの景色をながめていた。

「オレ、なにしてるんだろう」

 これから顔も知らない女の子と会う。そう考えると胸は弾む。しかし、手紙を待ち、内容を読み、返事を出すという関係は終わりを告げるだろう。

 どんな結果に見舞われようとも、覚悟はできている。これまでの楽しさを清算すると思えば、しかたあるまい。

 もはや幸運は訪れない。2年もの間、文通ができただけでも僥倖だ。美咲には大学での新しい出会いもあるだろうし、そうなれば頼る相手は自分でなくなる。

 山口は時計を見る。いまから駅に戻れば、5時には間に合うだろう。

「よし」

 そうつぶやいて踵を返す山口。風が冷たく、着ていたコートの裾を揺らした。

 駅につくと、公衆電話の近くに一人の少女が人待ち顔で立っていた。厚手のジャンバーを身にまとい、ひざ丈のスカートから膝小僧が顔をのぞかせている。髪は素直で長く、背丈は低い。

「まさか、あの子が……」

 山口は声をかけることもできずに立ちすくんでしまった。

 目はぱっちりと大きく、鼻筋が通り、口は小さい。反り返ったまつ毛にふくよかな頬。唇は肉厚があり、それらが小さな顔に品よく納まっている。

 刹那、山口は、このまま見知らぬ顔をして通り過ぎ、駅に入ろうかとも思った。

 もしも、あの少女が美咲なら、これから自分と過ごすことになる。たとえわずかであっても、二人きりの時間を持つ。そんな贅沢が許されるわけはない。きっと大きなしっぺ返しが待っている。過重な落胆に押しつぶされるに違いない。

 そう思えてしまうほどに、少女は可憐だった。

 だが、迷う山口の姿に気づき、少女は小走りで近づいてきた。

「間違っていたらごめんなさい。山口さんですか?」

 舌足らずな声も、神経を揺るがすほどの魅力に満ちている。

「は、はい」

「初めまして、美咲です」

「あ、は、初めまして、山口です」

「初めましてって、なんだかおかしい。2年もお手紙交換してきたのに」

 美咲は満面の笑みを浮かべる。その表情を見るだけで、山口は至福を実感する。

「喫茶店に入りましょうか。寒いし」

「あ、そうですね」

「わたし、入ったことないんです、喫茶店」

「大丈夫です。ボクは何度か……」

 いい大人のいうセリフじゃない。喫茶店くらい、入って当たり前の年齢だ。

「じゃあ、いきましょう」

 美咲は笑顔のまま歩きはじめる。山口はとなりに立ち、美咲のペースに合わせて歩を進めた。

 駅から一番近い店に入る。山口はコーヒーを注文し、美咲はココアを頼んだ。

「よかった」

 最初に話しはじめたのは美咲だった。

「山口さん、わたしが思い描いていたとおりの人」

「そ、そうなんですか」

「はい、やさしそうで落ち着いていて」

 そういわれて、山口の緊張はほぐれる。

「山口さんは?」

「はい?」

「わたしは、美咲は思っていたとおりの女の子ですか?」

 美咲は、少し不安そうな表情を浮かべた。

「思っていたとおりだなんて、それ以上」

「それ以上?」

「は、はい、いえ。思っていたとおりです」

「よかった」

イキなセリフを告げることのできる男なら、思っていた以上にカワイイ、とでもいえたのだろう。だが、山口はそんなタイプではない。

 美咲は山口に対し、これまでの礼を告げる。そして、いろいろあった高校生活も山口のおかげで乗り切ることができた、悩み事も解消できた、もし山口との文通がなければ、どうなっていたかわからない、と美咲はいう。

「そんな大げさな。ボクなんて」

「ううん、山口さんは美咲のことを、遠くから見守ってくれた。これからは近くで見守ってください」

 そのとき、美咲の表情に陰が走るのを山口は見逃さなかった。

「近くで、ですか。それは上京するから?」

「うん、それもあるけど」

「ほかには?」

 時間がたつにつれ、山口からも美咲に話しかけることができるようになる。

「山口さん」

 少し間をおいてから、美咲はいう。

「これから、ウチにきてくれませんか」

「え?」

「全部、お話しします。じつは……」

「じつは?」

「ウソついてたんです。美咲もウソをついてたんです。それをお話しします」

 喫茶店を出ると、日は完全に暮れていた。出会ったときの快活さを失い、美咲は黙ったまま歩く。山口は、そのあとにしたがった。

 駅前の繁華街を抜け、美咲は路地の奥にあるアパートを示す。

「あそこが美咲の住む部屋です」

 2階の角にある一室を美咲は指した。さびた鉄の階段をのぼり、部屋の前に立つと美咲はカギを開ける。

「きょうはだれもいないんです」

「え?」

 美咲は山口を一瞥して、扉を開けた。

 6畳と3畳の二間に簡単な流しだけがある室内は、すえたにおいが充満していた。それは汗と体臭が入り混じり、発酵しているようなにおいだと山口は思う。

 明かりをつけると、敷きっぱなしの布団と脱ぎ散らかされた下着や服が目に飛び込んでくる。美咲は靴を脱いで部屋にあがり、山口にもあがってくるように促す。

 動揺をおぼえる山口だったが、逃げ出すわけにもいかない。

 美咲はふすまを開けて、となりの3畳間に入った。そこには座敷机とビニールの衣装ケース、そして小さな本棚があった。

「この部屋で手紙を書いてたんです」

「そうなんですか」

「勉強もここでしました。でも、大学には行けません」

「え?」

 美咲は部屋の真ん中に腰をおろし、つぶらなひとみで山口を見あげる。

「大学なんか行けません。おカネないし。でも東京にはいきたい。ここから出たい」

「それは、お母さんが……」

「母なんていません。あれもウソ。父と二人暮らしです。その父も……」

「お父さんも」

「本当の父親じゃありません」

 美咲は、これまでのウソを詫びつつ、身の上を話した。

 美咲は私生児で、実の父親の顔を知らない。そんな美咲を母親はいつくしみ、水商売をしながら女手一つで育てあげた。

 美咲が中学生になったとき、母親は見知らぬ男を連れてきた。きょうからこの人が父親になる。母親は悪びれた様子もなく、美咲に告げた。

 それから義父である男を含めた3人の生活がはじまった。同居当初、男は工員として働いていたが、1年もたたない間に仕事を辞めてしまう。母親の仕事は夜からなので、出かけてしまうと美咲と男は二人きりになる。

 そして、その夜が訪れた。

 美咲は中学3年になっていた。受験が控えているので、あてがわれた3畳間で机に向かう。男は晩酌で泥酔し、いびきをかいて眠っていた。

「うるさいなぁ」

 そう思いながらも鉛筆を走らせていた美咲。すると、いびきがぴたりとやむ。静かになったことに安堵した美咲は勉強に夢中となり、部屋のふすまが開くのに気づかなかった。

「ん……」

 いきなり背後から抱きすくめられ、手で口がふさがれる。驚愕しつつも振り返ると、男が目を血走らせて美咲におおいかぶさってきたのだった。

 男は荒い息を吐きながら美咲を押し倒し、スカートをまくって下着をおろす。そして自分も下半身を露呈させると、怒張した一物を美咲の股間にあてがい、めり込ませた。

 何が起こったのか、何が起きているのかも理解できない美咲は、あらがうこともできない。酒臭い男の息を嗅ぎ、口臭のきつい唇を押し当てられ、メリメリと押し広げられる股間の痛みに耐える。

 やがて男は、性急に腰を振ったあと美咲の内部に精液を注ぎ込み、満足そうな笑みを浮かべていった。

「このことをバラしたら容赦しねえからな。お前ら二人を殺してトンズラしてやる」

 美咲は母親に、犯されてしまったことを告げることができなかった。男の言葉もあったが、母親に叱られることも恐れたからだ。

「でも、お母さんは、それに気づいて……」

 気丈な母親は娘が乱暴を受けていることを知り、男をさんざん罵倒して追い出した。母親は涙を流して美咲に謝罪。美咲は、ふたたび訪れた二人だけの生活に安心する。

 しかし、不幸は舞い戻ってきた。美咲が高校に進学した春、母親は心不全で急逝してしまう。そのとき、どこで聞きつけたのか、天涯孤独となった美咲のもとにあらわれたのが、あの男だった。

「義理とはいえ父親だから、オレが面倒みてやる。ただ、お前はオレのいうことをなんでも聞くんだ。いいな」

「そんなことが……」

 話を聞き終えた山口は、崩れ落ちるように畳の上に座り、じっと美咲の表情を見つめた。

「それから……」

 美咲の話は続く。

 男は母親に追い出されてから、日雇いの労務者として工事現場で働く。しかし3日に1度働きに出ればいいほうで、休んでいる日は朝から酒を飲み続ける。

 美咲は自分で弁当をこしらえ、学校が終わるとアルバイトに出て生活費を稼ぐ。夜にアパートに帰ると、男はたいてい酔って寝ているが、目をさませば美咲を求める。 

さすがに男は膣内へ注入することをはばかった。ただし、最後は美咲に咥えさせ、口の中に放出する。男は吐き出したザーメンを飲むよう美咲に強要した。

 話を聞いて山口は言葉を失う。

春の訪れと同時に咲き乱れる花びらのような少女が、劣情にまみれた鬼畜になぶられ、麗しい顔面に醜い肉棒が突き入れられ、忌まわしい白濁液がのどを伝って体内に流し込まれる。

「なんども家を出ようと思いました。けど行先はないし、学校を辞めるのもいやだったし。だから、自分のことを知ってもらいたくて文通をはじめたんです」

「でも」

 山口は言葉をつむぐ。

「きみは手紙に、そんなことを一度も……」

「見ず知らずの人に、そんなことを打ち明けられますか? だから継母にいじめられてるということにしたんです」

「そうなんだ」

「でも山口さんは、美咲のことを真剣に考えてくれた。世界に一人だけでも、美咲のことを思ってくれる人があらわれた。それだけで美咲はうれしかった。そして決めたんです」

「なにを?」

「連れて行ってもらおう。ここから逃げ出すのを手伝ってもらおうって」

 そういうと、美咲は四つん這いになって山口に近づき、顔を近づける。

「山口さん。美咲をここから連れ出してください。いっしょに逃げてくれませんか?」

 山口はたじろいでしまう。

「で、でも……」

「お礼はします。そう、これまでのお礼もしなくちゃ」

 そういうと美咲は立ちあがり、身に着けていたものを脱ぎはじめた。

 唖然とする山口の前で、美咲は一糸まとわぬ姿を披露する。蛍光灯の光を受けて艶を放つ白い肌。胸のふくらみはつつましく、腰のくびれも少ないが、まばゆいばかりのきらめきを放っている。

 その神々しいばかりの肢体を見つめ、山口はぽかんと口を開けるしかない。

「どうですか? 美咲の身体」

 山口は答えられない。

「粗末な身体ですけど、お礼代わりに」

 山口の前に正座し、美咲は唇を重ねる。そのまま山口の服のボタンをはずし、1枚1枚脱がしていった。

 全裸になった山口の前で前かがみになり、美咲は力のこもらない肉棒を舐める。先に唇を当て、舌を出して鈴口を探る。やがて山口が屹立すると、美咲は唇を開いてほお張った。

「うん、んん……」

 鼻から切ない息を漏らして美咲は首を振る。温かなぬめりの中で、山口の肉棒はどんどん膨張する。それを確認した美咲は、いったん口からはずして山口をあお向けに寝かせた。

「美咲を差しあげます。だから……」

「だから?」

「美咲を助け出してください。もういやなんです。もう、いや」

 美咲は山口の股間にまたがると、自ら部分にあてがって膣内に誘導した。

「うん、山口さんの、いい……」

 ゆっくりと腰を振り、小さく躍る美咲。山口は、そんな美咲を見つめながら現実の超越を感じ取る。

 興奮と快感が常識を遮断する。この少女と二人きりで生きていくのも悪くはない。世間は欲望にまみれている。自分にも享受する権利はあるはずだ。

 肉筒は窮屈に締まり、山口をとらえて離さない。自然と腰が浮きあがり、美咲を貫きあげてしまう。

「やああん、すごい、山口さん、ステキ」

 天使が羽を広げて舞うように、美咲は軽やかなバウンドをくり返す。摩擦で蜜があふれ出し、びちゅぴちゅと淫らなハーモニーを奏でる。

「なんだ、なにしてるんだ」

 突然ふすまが開き、男の声がひびく。行為を中断し、声の方向を見る美咲と山口。

「お、お義父さん……」

「なんだ美咲、とうとう男引きずり込むようになったんだ」

 美咲はあわてて山口から降り、部屋の隅に逃げた。山口も起きあがり、脱ぎ捨てたズボンで股間を隠す。

「彼氏って年でもねえな。あ、そうか、客か。ダメだなぁ美咲、売春はご法度だぜ」

 男は酔っていた。身体をふらつかせ、呂律のまわらないしゃべり方をし、部屋の真ん中であぐらをかく。

「おっさん、続けなよ。オレ、見といてやるからさ」

「い、いえ……」

「なんだよ、それじゃあ美咲がかわいそうだろ。中途半端はいけねぇな」

 酒臭いげっぷを吐いてそういうと、男は美咲を見すえた。

「好きもんなんだよ、美咲は。ああ見えてさ、自分から腰を振ってよがるんだ。おっさん、あんたが犯らないんなら、オレが」

 男はゆるゆると立ちあがり、美咲の手を取って部屋の中央に引きずりだす。

「やめて、やめて!」

「なにをいまさら」

 男は美咲を四つん這いにすると、ズボンと下着を同時におろし、背後から挿入をはたした。

「いやああ、やめて、こんなの、もういやだぁ」

 身体を伸縮させながら、美咲は山口に視線を送って哀願する。

「助けて、助けて、山口さん。お願い、もういや、もういや、こんなのいやなの。お願い、お願いします」

 男を受け止めながら身体を揺らし、美咲は山口に訴えた。

 だが、山口は美咲から視線をはずして服を着る。そして、美咲に背を向けて部屋を出ようとした。

「山口さん、信じてたのに、信じてたのに。美咲を、美咲を連れ出してくれる、美咲を助けてくれるって信じてたのに……!」

 涙で潤んだ美咲の声がひびく。山口は最後に一瞥し、そのまま振り返りもせずに部屋をあとにした。

 自宅に戻り、山口は手紙を書いた。

『ごめんなさい。私にはあなたを助け出す勇気はありませんでした。もっといい人を見つけてください。きっと見つかります。身勝手ですが、幸せになることを心から願っております』

 投函し、1か月が過ぎ、2か月が過ぎた。美咲からの返事は届かなかった。

【長月猛夫プロフィール】
1988年官能小説誌への投稿でデビュー。1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作。主な著作『ひとみ煌きの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)/『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)/『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)ほか。

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