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【昭和官能エレジー】第6回「雨とカラオケとスナックの女」長月猛夫

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【昭和官能エレジー】第6回「雨とカラオケとスナックの女」長月猛夫

この官能小説は、現在50代から60代の方々の若かりし時代を舞台背景にしています。貧しかったけれど希望に満ち溢れていたあの頃、そこには切なくも妖しい男と女の物語が今よりも数多く存在しました。人と人とが巡り合う一瞬の奇跡、そこから紡がれる摩訶不思議な性の世界をお楽しみください。 編集長

【雨とカラオケとスナックの女】長月猛夫

「よく降るわね」

 カウンターの中でめぐみはいう。

「そうだね。けど、梅雨ももうすぐ終わるよ」

 グラスの底に残った水割りを飲み干したあとで、島崎は答える。

「今年も暑いのかなぁ。冷房代がかかっちゃう」

 めぐみは壁からむき出しになった茶色のエアコンを見つめ、島崎のお代わりをつくる。

「ボトル、空になっちゃった。新しいの入れていい?」

 めぐみはたずねる。

「うん」

「同じの?」

「そう、ダルマで」

 棚に整然と並んだ中から、ずんぐりとした黒いボトルを取り出して島崎の前に置き、めぐみは黒いマジックをわたす。受け取った島崎は、サントリー・オールドのラベルに自分の名前を書き込んだ。

 10人も入れば満席のスナック。カウンターだけの店内で、めぐみと島崎は向かい合う。BGMは有線から流れる流行のブルース。

「そうそう、ウチもカラオケ置いたの」

「えー、ようやく?」

「うん。本当は置きたくなかったんだけど、置いてほしいっていうお客さんが多いから」

「そうなんだ」

「流しの洋ちゃんも姿を見せないし。わたしも唄うのは、そんなに嫌いじゃないし」

「ふうん」

「ねえ島ちゃん、なにか唄ってよ」

「えー、ママから唄ってよ」

「そう? じゃあ遠慮なく」

 めぐみは分厚い冊子を取り出す。歌詞カードがビニールのページに差し込まれていて、それをながめながら曲を選ぶ。

 島崎は、そんなめぐみを見つめつつ、これまでに思いを巡らせていた。

 めぐみと知り合って3年がたつ。最初にこの店を訪れたのは、地元の友人たちとの飲み会の帰りだった。友人の一人が行きつけだといい、4人が陣取る。めぐみは35歳、島崎は55歳だった。

 最初めぐみを見たとき、歳も歳だし、そんなに美人とも思わなかった。だが、めぐみには、それまで島崎が知り合った女たちとは異なる魅力が備わっていた。

 毛先が軽くカールした長い髪、頃合いよく盛りあがった胸元、視線のゆるい潤んだひとみに肉厚のある唇。

 見つめられると、背中がゾクッとするような色気を感じてしまう。めぐみは、そんな女だった。

 やがて島崎は、めぐみの店に足しげく通うようになる。めぐみも島崎を歓待したが、スナックのママと客という関係以上には発展しなかった。

「あ、これにしよう」

 めぐみは歌詞の冊子を開いたまま、8トラックのカセットを選び機械に差し込む。ガチャと派手な音を立ててカセットは納まり、めぐみが曲の番号を押すと、しばらくして快活なリズムの前奏が流れはじめた。

 島崎はバツイチの独身だった。独り身の寂しさをまぎらわせるために、めぐみの店に通ったともいえる。めぐみも独身だが、16歳のときに生まれた子どもがいた。そのことを初めて聞いたとき、島崎はめぐみの過去を詮索しないよう決めた。

 複雑であろう過去を知ってしまうよりも、いまのめぐみを知り、これからのめぐみを知っていきたい。そう考えたからだ。

 50代も半ばを過ぎると、自分が使える力の限界を知る。何でも見てやろう、何でも知ってやろうは、20代から30代までの話だ。

 知識を得るにも体力はいる。いまの満足を保つのに、無駄なエネルギーは必要ない。余力があるというのであれば、現状の維持と将来への展開に向けるべきだ。少なくとも、めぐみに対してはそうあるべきだと考える。

 めぐみの歌が終わる。島崎は拍手を送る。

「じゃあ、次は島ちゃん。あ、1曲100円だけど、いい?」

「え、カネかかるの?」

「だって、機械のリース代だって、結構なお値段だし」

 めぐみは少しすねた表情の上目づかいで島崎を見る。その眼差しに逆らえる勇気を、島崎は持ち合わせていない。

「じゃあ、歌詞、見せて」

「はーい」

 めぐみは明るい笑みを浮かべて冊子を渡す。島崎はページをめくりながら、自分の唄う曲を探した。

 酔いが回り始めたのも手伝って、島崎は歌謡曲からフォークソング、演歌までを歌う。めぐみは島崎の歌声をほめそやし、自分も交代でマイクを握る。

 スナックのママという仕事に就きながら、めぐみはあまり飲めるほうではなかった。それでもこの日は、唄って喉が渇く、といって水割りを数杯お代わりした。

 雨は降り続いていた。平日の夜、店を訪れる客の姿はない。時間は午前0時。

 そのときドアが開き、ギターをかかえた初老の男が店内をのぞき込んだ。

「こんばんは。1曲いかがですか」

「あら、洋ちゃん、お久しぶり」

 めぐみは流しの男に声をかける。

「けど、ごめんなさい。お客さん一人だし、カラオケもあるし」

 その言葉に男は、かすかに目を伏せながらドアを閉じた。

「なんだか悪いことしちゃった」

「しかたないさ。でも、どこの店にもカラオケが置かれるようになったら、流しの人らは大変だ」

「生ギターの伴奏もいいけどねぇ。1曲1000円じゃ、そんなに唄えないし」

 めぐみは冊子をめくりながら、次の歌を探す。

「あ、そうだ」

 急にめぐみは顔をあげていった。

「お店、閉めちゃおうか。もうお客さんも来そうにないし」

「え、いいけど……」

「島ちゃんはいてくれていいのよ。閉めちゃえば、カラオケ代はタダでいいから」

「そうなの?」

「うん。ちょっと待ってね」

 めぐみはカウンターから出て入り口に赴き、ドアを開けて外に出る。やがて看板を店の中に納め、外灯の明かりを落とした。

「これで大丈夫。あ、念のため」

 ドアに鍵をかけるめぐみ。

「ねえ、島ちゃん、デュエットしない?」

「いいけど、なにを?」

「銀恋でいい?」

「うん」

 カウンターに戻っためぐみは機械を操作する。『銀座の恋の物語』の前奏が流れ出すと、めぐみはふたたびカウンターを出て、島崎のとなりに座った。

「一緒に唄うんだから、となり同士の方が気分も出るでしょ」

 曲がはじまる。めぐみは身体を左右に揺らしながら唄う。その姿を見て、島崎は緊張をおぼえる。

 めぐみの身につけているドレスは胸元が大きく広がり、白い肌と胸の谷間があらわになっている。スカートの丈は短く、実った太ももが間近に迫る。

 何度か髪をかきあげるめぐみ。男のパートになれば、うっとりとした目で島崎を見つめる。

 甘い香水の匂いが島崎の鼻をくすぐる。めぐみの揺れる肩が、ときおり島崎の腕に当たる。

 曲が終わった。めぐみはマイクを置いて小さく拍手をする。島崎は緊張をごまかすために、水割りをゴクリと喉に流し込んだ。

「ねえ、島ちゃん」

 歌にも飽きてきたころ、めぐみは小さくあくびをしてからポツリとつぶやいた。

「島ちゃんはめぐみが聞けば、自分のことを何でも話してくれるけど、島ちゃんはめぐみのこと聞かないのね」

「聞いてもいいの?」

「う~ん、話せることと話せないことはある」

「じゃあいい。知りたいのはいまのママ。むかしのことはどうでもいい」

 めぐみは身体をかたむけ、頭を島崎の胸にあずける。

「なんだか、島ちゃんて不思議」

「そうかなぁ」

「だって、知り合って3年もたつのに、めぐみのこと口説いてくれない」

 その言葉に、島崎は胃袋をつかまれるような圧迫を知る。

 めぐみをモノにしたい。それは以前から思っている。だが、何をどうしていいのかがわからない。勇気もないし、きっかけもなかった。単刀直入に、抱かせてくれというのもはばかられる。

「ねえ、島ちゃん」

「は、はい……」

「島ちゃんはめぐみとどうなりたいの?」

「どうって……」

「めぐみは結婚とか、だれかと暮らすとかはうんざりだけど、島ちゃんとは仲良しのままでいたい。でも島ちゃんは、いまのままで大丈夫?」

「うん、大丈夫」

「ホント? めぐみのことほしくない?」

 妖しい視線を送るめぐみ。島崎は筋肉の強張りを感じはじめる。

「ねえ」

「はい」

「めぐみのこと抱いてよ。ここで」

「ここで……」

「そう」

「ママ、酔ってるよ」

「酔っちゃいけないの? 酔ってるめぐみは抱けないの?」

 めぐみの視線が危うく突き刺さる。島崎の心臓は早鐘のように鳴り、昏倒してしまいそうなめまいをおぼえる。

「ママ……」

「めぐみって呼んで」

 めぐみはそのまま島崎に抱きつき、唇を押し当ててきた。

 舌の絡まりあう接吻を交わしつつ、島崎は手をめぐみの胸元に伸ばした。手のひらに納まる乳房のふくらみは、衣装の上からでも柔軟さが感じ取れる。

 めぐみは背中のファスナーに手を伸ばし、ドレスを肩からおろす。そしてブラジャーのホックをはずすと、島崎に胸乳を与えた。

 形よくも盛りあがった乳房に手のひらを当て、島崎は指に力を加える。簡単にちぎれ取れそうなほどのやわらかさを湛えながらも、素肌の張りが指の腹に吸いついてくる。

 めぐみは島崎のズボンのチャックをおろし、中に手を入れて肉棒を握り締めた。

「島ちゃん、大きくなってる」

「う、うん」

「めぐみで興奮してくれるんだ。うれしい」

 めぐみは島崎を取り出し、つまんで上下にしごく。島崎の尖端からはぬるりとした汁がにじみ出し、めぐみはそれを手のひらで亀頭に塗りこむ。

「島ちゃん、挿れたい?」

「ああ」

「じゃあ、めぐみも気持ちよくして」

 めぐみは島崎の手を取り、ドレスの裾の中にいざなう。小さな下着のすき間から秘部を探り当てた島崎は、肉裂を上下にさすり、裂け目の頂点にある核をなぞった。

「あ、いい、ステキ」

 身をのけ反らせ、舌の先端を見せながらめぐみは甘い声を漏らす。

 めぐみの乳首に吸いつきながら、島崎は軽く指を挿入させた。部分は早くもじっとりとした潤いを見せ、充血した淫唇が口を開け閉めしはじめる。

 その間も、めぐみは島崎を握って離さない。カリ首のくびれを指でなぞり、緩急を加えながら茎を絞り、包皮をこする。

「ズボン、脱いで。汚れちゃう」

「あ、ああ」

 島崎はあせりをおぼえつつ、ズボンと下着を脱いだ。それと同時に、めぐみは島崎にまたがってくる。

 脚の長い椅子がキュッと音を立てる。めぐみはドレスの裾をまくり、両脚を島崎の腰に絡める。

「挿れちゃう。挿れるよ」

 おぼろげな眼差しで島崎を見つめたまま、めぐみは手にした肉棒の先を股間にあてがい、尖端を膣口の中にめり込ませた。

「あ、……、うん……」

 粘膜に覆われた肉襞が、島崎の生身と密着する。やがて、島崎の全部がめぐみの肉筒に納まる。めぐみは腰を前後させ、島崎の突き入れと攪拌を受け止める。

「うん、気持ちいい、いい」

「マ、ママ……」

「めぐみって呼んで」

「めぐみちゃん……、気持ちいいよ」

「うん、めぐみもいい」

 脚を宙に浮かせたまま、めぐみは肢体を揺らし、島崎との摩擦を感じ取る。突き刺さった男柱は、めぐみのもっとも深い部分にまで達する。

 椅子がキシキシと悲鳴をあげる。激しく動くことはできないが、それでも快感は股座から脊髄を通って脳を刺激する。めぐみの内部は伸縮をくり返し、強い圧迫で島崎を締めつける。

 島崎は床についた足に力を込め、めぐみを上下に揺さぶった。小柄なめぐみは髪を振り乱しつつ、島崎の律動に合わせて身を躍らせる。

「ああああん、いい、すごい、島ちゃん、すごい」

「めぐみちゃん、めぐみ……」

「いやん、めぐみ、イッちゃいそう」

「お、オレも……」

「出そうなの? 出してもいいわよ。やあああん、めぐみ、イッちゃうぅ!」

 めぐみの淫穴がキュキュッと圧力を増す。肉襞が島崎を覆いつくし、小さな粒が表面にまとわりつく。粘り気のある愛蜜が一物に浸透し、胎内の熱で全体が浸食される。

 島崎は、そのままめぐみの中に吐き出した。数回に分かれてそそぎこまれる勢いに、めぐみは上体を震わせながら反応を示す。

「し、島ちゃん」

「なに」

「島ちゃんのが、めぐみの中で泳いでるの、わかる」

 めぐみはうっすらと目を開け、艶然とほほ笑む。島崎はその表情を見て、いっそうの愛おしさを募らせるのであった。

 その後も島崎はめぐみの店に通った。そして、ほかに客がいないとき、もしくは店を閉めたあとに身体を交わらせることもあった。

 二人は特別な関係になる。めぐみは、ほかの客がいるときでも、島崎を特別扱いする。カウンターの中では、常に島崎の前に立ち、カラオケのデュエットも島崎としか唄わない。客に勧められても、めぐみはコップ一杯程度しか飲まないが、島崎となら何杯もお代わりし、店が終わって二人きりになると互いを求め合った。

 やがて、灼熱の夏が訪れた。

「お店、もうちょっと広いところに移りたいな」

 ある日、めぐみはいった。

「いい物件があるの。今度、一緒に見に行かない」

「それはいいけど」

「でもね、予算が」

 悲しそうな表情でめぐみは島崎を見る。めぐみが何を求めているのか、島崎は察する。しかし、新しい店を出すとなると、かなりの金額が必要なことくらい島崎にもわかる。

「めぐみちゃん、ゴメン、おカネのことは……」

「そうなんだ。ううん、大丈夫。ゴメンなさい、変なこといっちゃって」

 めぐみはペロッと舌を出して笑みを返す。島崎は救われた気になった。

 しかし、それからのめぐみの態度は変わった。

 飲みに行けば笑顔は見せてくれるし、会話も弾む。しかし、どことなくよそよそしさを感じてしまう。ほかの客と平等にあつかわれ、店が終われば帰りをうながされる。

 そしてとうとう、めぐみは島崎に告げた。

「新しいお店に移転するの」

「そうなんだ」

「おカネを援助してくれる人が見つかったんだ」

 めぐみの視線が島崎に突き刺さった。

「それって、もしかして……」

「ん? なに?」

「い、いや……」

 めぐみとの官能的なひとときがよみがえる。

「新しいお店にも来てね」

 こともなげにめぐみはいう。

 そのとき、店のドアが開き一人の男が入ってきた。

「あ、アーちゃん、いらっしゃい」

 弾んだ声でめぐみは男を迎える。

「めぐみ、オープンの準備は進んでるのか?」

「うん、アーちゃんのおかげ」

「いやいや、めぐみを堪能できるんだから安いもんだ」

「やだぁ、ほかのお客さんの前で」

 めぐみは島崎を一瞥する。すべてを悟った島崎は、空になったグラスをカウンターに置き、静かに席を立つ。

「あら、もうお帰り?」

「うん」

「また、お待ちしてま~す」

 めぐみはそういうと、視線を男に向ける。島崎は料金をカウンターの上に置き、黙って店をあとにした。

【長月猛夫プロフィール】
1988年官能小説誌への投稿でデビュー。1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作。主な著作『ひとみ煌きの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)/『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)/『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)ほか。

  • 【昭和官能エレジー】第6回「雨とカラオケとスナックの女」長月猛夫

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