このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【重要課題「キャッシュレス大激論」の巻】

　最近、コンビニなどでよく見る「キャッシュレス支払い」。私の友人は、コロナ感染が怖く、お金を触りたくないという一心で、最近やっと取り入れたという。

　私はその話を聞いて「えらいなあ」と思った。が同時に「私は無理」とも思った。

　スマホをかざすだけで買い物ができる。しかもポイントがたまるからオトク、というが、支払いの手ごたえがピローン♪という音だけなので、お金が減った気がしない。しかも財布から現金を出す手間がないから、ラクでサクサク使ってしまい、散財する予感大。おお、デンジャラース……。

　やはりお金は手で触れてナンボ。減りがその場で確認出来てナンボ。という理由から、私の現金主義は揺るがない。

　私の周りのシニア達に聞いてみると、別の意味でキャッシュレスに対して苦手意識があるようだ。

　最近スマホデビューしたばかりの母（80）は、「スマホをいじるだけで大事件なのに、そんな新しい文化を取り入れる余裕はない」という堅実的な理由でスマホに付いているauペイを拒否。

60手前のライターの大先輩は「今の時代、スマホに全てを託し過ぎ。失ったときのダメージが怖い」という理由で拒否。スマホを落とし、最終的に見つからず買い直した経験のある彼の言葉は重い。

　70歳の叔父は「ペイペイというフザケた名前のサービスに、ワシの金銭管理を委ねることはできない」とネーミングのユルさが理由で拒否。自尊心がチョモランマの如く高い団塊の世代に取って「ペイ」は「Pay（支払い）」ではなく「ペーペー（下っ端）」のイメージを真っ先に思い浮かべるらしい。

例えば「セレブマネー」や「High High（ハイハイ）」など、格上感のある響きなら、彼は間違いなくサービスを取り入れていただろう。関西シニアにとって、見た目や呼び名など、パッケージはとても重要なのだ。

　では、懐にも気持ちにも余裕のある大金持ちシニアはどうなのか。夕やけ大衆編集長から、なんともナイスなエピソードを教えていただいたので、ここに紹介したい。

　編集長の知り合いであるリッチな関西シニアは、ポシェットをパイスラッシュしていて、その中にギッチリと札束を詰めて夜の酒場を練り歩いていたという。が、このキャッシュレスサービスが普及した時代になり、店で、「釣りはいらないよ」が言えず、がっかりしているという。

　なんということだろう……！　キャッスレスサービスは、現金利用と同時に、ナイスミドルの粋な振る舞いチャンスも減らしていたのだ。

　これはいかがなものか。関西シニアを愛する私は、いろんな意味で現金主義を守らなければならない。そんな使命をにわかに感じた。

　ということで、今日も私はペットボトル一本だろうがなんだろうが、現金で払う！

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。