Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。
編集長
【脳の不思議「昨日の晩飯より遠い昔の自慢話」】
年を重ねると記憶力が曖昧になってくる。しかし大昔のことは、どんどん鮮明に思い出されてくる。一昨日の晩ご飯は思い出せないのに、小学校の夏休みとてもおいしかった昼ご飯が、いきなり皿の配置まで細かく思い出されるという、謎の現象が起こるらしい(母談)。脳というのは本当に不思議だ。
しかも関西シニアは、それを堂々と会話に持ち込んでくる。私が眼科に行ったとき、偶然耳にしたシニアW氏の話もそうであった。
「はい、Wさん、では検査の前にいろいろ聞いていきますねー」
検査室と待合室はカーテンでしか区切られていないので、声がダダ漏れだ。
「Wさん、いつから調子悪いですかー」
するとWさん。
「うーん18歳くらいからかな、目が弱くなったのは」
じゅじゅじゅ18!! そこから振り返るの? しかし看護師さんは慣れていらっしゃるようで、慌てず聞き返す。
「最近はいつでしょう」
「最近……。30歳くらいからかな。仕事が忙しくて何か国も行っててなあ」
声からすると、Wさんはどう考えても老人である。「最近」という言葉から、自分が一番充実していた時期であろう30歳の話を持ってくるとは、なかなかの自慢テクニック。
そしてその後Wさんは、ロンドンに行ったとき目が痛かっただの、アメリカでジャズを聴いたが、音が聴こえにくくて耳も悪いのか心配になっただの、世界中飛び回った輝かしい経歴と体調の悪さを強引にリンクし、延々と自慢話を語るのであった。
20分ほど後、私は別の検査室に呼ばれたので、結局Wさんが何時間話したのか確認出来ずじまい。Wさんの話の続きが気になり、視力検査で左を右と言い間違えたほどである。
いや、見事だった……。看護師さんの質問を取り上げ、後の人の都合も考えず、18歳から己の歴史を遡りアピろうとする強引さ。目の不調を抱えているというのに、検査より人生を誇るのが先、という情熱!
Wさんがもっと年を取り、どれだけいろんなことを忘れても、世界を股にかけ飛び回った30代の思い出を、最近のことのように言い続けるんだろうなあ、と思った。
ううむ、面倒臭い。でもすごく羨ましい。私もシニアになったとき、病院で強引に話したいくらいの自慢話が欲しい! 還暦までに、それを作ろうと決めた。
Wさんを超える世界レベルのネタが欲しいので、早く海外旅行が自由に行けるくらい、コロナが落ち着きますように。
【法善寺灯子さんのプロフィール】
関西在住ライター。性別:女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。
この記事の画像
関連キーワード
Linkage
関連記事

FANZA新着動画
特選素人娘マル秘動画
FANZA新着動画一覧 >>
