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※はじめに
この連載は中高年の皆様に素晴らしき日本の性文化への憧憬をさらに深めていただくために、東京・吉原に書店を構える「カストリ書房」の店主・渡辺豪氏に毎回、お勧めの本や雑誌を紹介いただくものです。
カストリ書房は遊郭専門書店として2015年に誕生し、店主の渡辺氏は自らも遊郭、赤線、青線があった地域を巡って聴き取り調査や取材を行なっており、これまでに訪れた場所は約500箇所。現在も書店を運営する傍ら様々な日本の性文化に関する文献の考察やイベントを行なっております。
夕やけ大衆では、そんな渡辺氏が未来永劫残したい「性書」を厳選してご紹介いたします。さあ皆様、知識と誘惑の扉を開いてみましょう。
〈夕やけ大衆編集長より〉
第5回『赤線跡を歩く』木村聡(筑摩書房)
バイト感覚の売春──
1990年代に女性高生を中心とした売春「援助交際」が社会問題化したとき、バイトでお金を稼ぐように身体を売ることへの、こうした嘆きをよく聞いたが、今から60年ほど前の日本では、「コンビニ感覚の売春」が当り前に見られた。しかし今となってはあまり知られていない。
昭和33年に売春防止法が施行される以前、日本には公然と売春を営む街が数多存在し、それらは「赤線」と俗称された。
赤線の名称は、警察が地図上に赤い線で囲って取締管理にあたったことに由来すると紹介されることも多いが、あくまで俗説に過ぎず、実際は不明だ。
我が国が昭和20年に敗戦を迎えると、明治以来続いた遊廓はGHQの指令により関連法令が廃止されたことで消滅、そこで従事していた娼婦も私娼(自由意志により売春を行う者)扱いとなった。
遊廓は廃止されたが、実態として公然とした売春街は存続し、戦前からの私娼窟と遊廓は、いつしか赤線と呼ばれるようになった。
昭和30年、労働省の調査によれば、沖縄県を除く全国には約3万7000軒もの売春店が存在し、これは当時の人口10万人あたり約41軒に相当する。
令和元年現在、コンビニの密度は人口10人あたり44軒であることからすると、密度の上では売春店はコンビニ感覚で存在していた。少なくとも都市部に住む男性にとっては、「売春できる店はどこにでもある」という感覚だった。
日本国土に遍在していた売春街・赤線だが、売春防止法から半世紀も過ぎようとする頃には、当時の建物の多くは取り壊されるなどして失われようとしていた。そうしたタイミングで取材され、発行されたのが本作。
現在は筑摩書房から文庫化されていて入手も容易いが、1998(平成10)年に自由国民社から発行されたのがオリジナル。
著者の木村聡氏は、群雄出版社や白夜書房で成人男性誌を手掛ける編集者だったが、各地の風俗街を取材で訪ねる傍ら、赤線があったエリアすなわち「赤線跡」も取材し、その成果を纏めたもの。
風俗街を訪ねることが、なぜ赤線跡の取材にもなるのか?と思われた方もおられよう。現行の風俗街はかつての売春街・赤線を前身に持つ街も多いのだ。
何かと人の口の端にのぼることが避けられ、結果、成り立ちや沿革が忘れ去られてつつあった赤線をギリギリのタイミングで取材し、記録している。
ネットを中心として、赤線の歴史を愛好するゆるいコミュニティが存在するが、その手の人たちにとってはバイブル的名著。
ちなみに本書がつくられる経緯は、約20年後にカストリ出版から発行された『赤線全集』で明らかにされているが、稿を改めて紹介したい。
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『赤線跡を歩く』木村聡著(筑摩書房)
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