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キャッチアップ

このコーナーは週刊大衆ベテラン記者の柚月怜氏が、街のタクシー運転手さんに乗客の破廉恥な行状をお伺いしたものです。タクシー運転手さんといえば、世の中で一番「街の事情に詳しい方々」といっても過言ではありません。新聞やテレビでは決して報じられない一般人たちの「ハシタナイ素顔」に腰を抜かしていただければ幸いです。なぜなら、この報告書には「真実」しかないのですから。
編集長
- 【被害ドライバー】
- 古田陽介さん(仮名=65歳)。タクシー歴は30年以上のベテランドライバー。大手タクシー会社に10数年勤務後、個人タクシーに。昔から夜の銀座界隈を流しており、有名芸能人を乗せたマル秘エピソードも多数。趣味はプロ野球観戦。好きなプロ野球チームは読売ジャイアンツ。
『高級本革シートの座席に“出された”ものは…?』
「この仕事を長年やっていると、酔っぱらったお客さんに車内で吐かれたことは山ほどあります。正直、腹は立ちますよ。でも、ついつい飲みすぎてしまうことは誰だってあるわけですから、致し方ないとも思うんです」
古谷陽介さんは白髭の似合う穏やかな顔立ちで、こう語る落ち着いた口調からは品性も感じる。その品性は古谷さんのタクシーにもあらわれている。
とくに座席には高級本革シートで、後部座席に座らせてもらったところ、座り心地の良さにただただ驚かされた。長時間の乗車であっても、腰が痛くなるなんてこともなさそうだ。
「安全運転は当然ながら、お客さんにちょっとした特別感を楽しんでもらいたいのです。費用はかかりますけどね。それでもお客さんが気持ちよさそうに座っていらっしゃると、それだけでタクシードライバー冥利につきます」
まさにタクシードライバーの鑑のような古谷さん。
そんなお金をかけた座席に吐かれても、「致し方ない」と言えるのは、古谷さんの人間が出来ているからに違いない。だが、古谷さんはこう反省する。
「一度だけ……絶対に言ってはいけない言葉で、怒鳴ってしまったことがあるんです」
それは数年前の夏のこと。いつものように深夜の銀座を流していると、明らかに酔っぱらっている40代のカップルが手を上げたという。
「酔っているのは女性のほうでした。足取りはフラフラなのに男性の腕をしっかり掴んでいて、〝絶対に今夜は帰さない〟といった雰囲気でしたね(笑)。スーツ姿の男性は若干、困っている様子でした」
40代前半と思しき女性は胸元に花をあしらったような薄ピンクのブラウスに、黒のロングスカートだった。最初はどこかの企業の社員さんだと思ったが、会話を聞いていると、二人は学校の先生であることが分かってきた。
「とにかく乗車するなり、泥酔状態の女の先生は男性の肩に手をまわして、さらに片足を男性の股間のあたりに乗せたんです。甘えるようにしがみついている感じでした」
聖職者とは思えぬ痴態であったが、古谷さんは冷静に行先を男性に尋ねて、車を発進させた。
「車を走らせると、後部座席ではさらに激しいことを始めたんです。女の先生はどっかりと男性の股間に跨る形ですね。抱っこちゃんスタイルというんですか?(笑)そんな体勢になって、お尻をハシタなくクネらせ始めたんです」
さすがに危険なので注意しようかと思ったが、女性教師の泥酔ぶりからして、下手に言葉をかけるとトラブルになりかねない。古谷さんはヒヤヒヤしながら、たびたびルームミラーで後部座席を確認していた。
「そのうち、一人で息を荒くしている女の先生が男性の顔に胸を押し付けながら『触って、触ってよ』と訴えだしたんです。こちらからは彼女の背中しか見えないのですが、どうやら、スカートの中に指を入れさせようとしているみたいで……」
何度も「お客さん、危ないのでちゃんと座ってください」と言いそうになったが、完全に雌と化して発情している女性教師の放つオーラに圧倒されて、どうしても言えないでいた。
「男性は楽しんでいるというより、困惑していましたね。おそらく女性が先輩で、立場も上といった感じでした。いわゆる逆セクハラですよね」
ちなみにこの時、古谷さんは女性教師が囁いている「触って」は、胸のことだと想像していた。
「結局、男性は触ってあげたんでしょうね。女の先生は途端に色っぽい声を漏らし始めて、それこそもどかしそうに跨ったまま、上下にバウンドまでし始めたんです」
そろそろ古谷さんも限界で、冷静だと思われる男性に一言言おうとした。
しかし、時すでに遅し。
「うわっ、ちょっと、ちょっと、ちょっと!」
男性が慌てふためいていた。何事かと思って、ルームミラーを確認した。
「パッと見た時は、何の異変もなかったんです。ちょうど信号待ちになったので、私も後ろを振りむいたんです。そしたら座席がぐっしょりと濡れているんです……。オモラシだと思いましたね。真っ青になりましたよ」
漏らしたのは間違いなく、女性教師だ。現に男性は自分のズボンも濡れたようで、大慌ててで、いまもまだ跨っている女性教師をどかそうとしていた。
古谷さんもすぐに「一度、止めますね」と言って、路肩に移動した。
ご自慢の高級本革シートを汚されたことで動揺していたが、それでも、
「オシッコを漏らされたのなら致し方ありません。吐かれるのと同じで、酔ってつい……ということはありますからね」
こう考えていたと言うが、次に女性教師が呟いた言葉を耳にして、堪忍袋の緒が切れた。
「違うの~。誤解しないで。これはオシッコじゃないの~。潮なの~。無味無臭でしょ」
古谷さんは続ける。
「反省しております。のちに分かるのですが、オシッコもゲロも潮も生理現象の一つですから、致し方ないのです。だけどあの時は、女性の潮というものは勝手に出るのでなく、意識して出すものだと思っていたのです。男性の射精のように。だから、つい怒鳴ってしまったんです。『どうして我慢できなかったのですか!?』と……」
今日も古谷さんはお客さんのために、高級本革シートをピカピカに磨いている。
- 取材&記事:柚月怜(ゆづきれい)
- 20代の頃より「週刊大衆」の記者として、街の妖しい噂やエロスポットを中心に取材。官能作家として、著書『惑わせ天使』(双葉社刊)もある。
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