Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【お医者ごっこで楽しい入院生活】
N・K 71歳 東京都在住
大学時代は、大型のオートバイに乗って走り回るカミナリ族だった。だが、うるさいだけのいまの暴走族とは違い、走りや曲乗り専門で、しかも金持ちの息子ばかりで徒党を組んでいた。だから世間も、ボンボンの道楽くらいにしか受け止めていなかったように思う。
というのも、オートバイ、特に大型のやつは高価な代物で、そのうえすぐに壊れるから維持費や修理代もバカにならない。貧乏人には買うことはもちろん、ガソリン代も払うことができない。ウチの親父は、今わたしが社長を務める貿易会社の先代だから、そんな贅沢もできたわけだ。
だから、革ジャンを着てリーゼントにして街を流していれば、女の子の一人や二人はすぐに引っかけることができた。これはという女の子を見つけ、「後ろに乗らないか?」と声をかけるだけでホイホイついてくる。小づかいにも不自由していなかったから、食べたいものを食べて、飲みたいものを飲んで、着たいものを着て。それはもう、お祭り騒ぎのような毎日を送っていた。
そんなわたしが骨を折って入院したのは、学生生活もあと少しの秋のことだった。
入院費は親父が出してくれたので個室だった。そして、最初のころはグループの連中が毎日のように見舞いに来てくれ、まったく退屈をしなかった。けれど、日がたち、季節も深まってくると、見舞客も足が遠のき、わたしは手持ちぶさたな日々を過ごすようになっていた。
「最近、お友だちも来なくなったわね」
そんなわたしに声をかけてくれたのが、歳も同じくらいの看護婦、由美さんだ。
彼女はわたしが街で拾っていたズベ公とは違い、涼しげで清楚な面立ちをしていた。化粧のしない素顔がゆで卵の殻をむいたように艶やかで、窓際に立って花瓶の花を活け変えるときなんかは、思わずうっとりと見つめてしまうほどだった。
退屈しのぎにあれこれ話を交わしているうちにうち解けはじめ、わたしたちは自分たちの身の上話まで語り合うようになった。けれど、自慢気なわたしの内容とは違い、彼女は辛い人生を送っていた。
父親は早くに亡くなり母親は病気。中学を卒業してからすぐに看護学校に入り、働きはじめる。
「だって、女が一生できる仕事ってこれくらいでしょ。これからは女も手に職を持っていないと」
そんな時代だった。わたしは憐憫をおぼえ、自分の自堕落な生活を恥じたりもした。
そんなある日、親父がわたしの病室を訪れた。高度経済成長期のまっただ中、多忙な親父がわざわざ見舞いに来るなんて、少し驚きだった。
「どうだ、調子は」
わたしは親父が40手前に生まれた子どもなので、甘やかされて育てられた。けれど、来年の春に卒業すれば、社会人として働かなくてはならない。親父の会社に行くことは決まっていたが、これまでみたいに甘い顔は見せないだろう。
私生活と仕事はきっちりと切り分ける。親父から最初に教えられた経営哲学だ。
「だから、遊びほうけるのも、もう終わりにしろ。早く嫁を見つけて身を固め、わしの下で経営を学べ」
嫁、結婚。まだまだ先だと思っていた現実を突きつけられる。そして、わたしの青い時代も終わりを告げようとしている。そんなことが認識できた。
「さっきの看護婦。あんなのがいいんじゃないか。腰つきもしっかりしてるし、唇や目もとも色っぽい」
「そ、そうかなぁ」
「ああ。いや、あの人相は淫乱の気がある。あんな女を嫁にしたら家が壊れる」
勝手なことを言い残して親父は帰っていった。わたしは反感をいだきながらも、それから由美さんを少し違った目で見てしまうようになった。
「お父さま、なんのお話を?」
「いや、別に」
夜、体温を測りに来ていた由美さんはいった。それまではまったく気にならなかった彼女の指の感触が、妙に身体をうずうずさせる。
親父の言ったとおり、由美さんの厚ぼったい唇や常に眠たそうな目はかなり艶っぽい。白衣の胸もとを盛りあげるふくらみは大きく、腰つきもなんとなくいやらしい。それまで付き合ってきた女の子とは違い、匂い立つような色気がある。
いったんそれに気づいてしまうと、思いはどんどんめぐってしまう。すると、寝間着の股間がムクムクとふくれあがり、由美さんもそれに気づいてしまった。
「あら」
驚くでもなく、由美さんはじっとわたしの下半身を見つめていた。わたしは顔から火が出るほどに恥ずかしく、何も言えずに天をあおいだ。
「そうですよね、入院してたら何にもできないし、お坊ちゃんだから自分でするのも知らないでしょうね」
たしかに、高校を卒業してから自慰の経験はない。女の子には不自由してなかったのだから必要がなかったし、いい歳をしてそんなことをするのは恥だと思っていた。
「でも、どうして急に?」
「い、いや」
「わたしで興奮したの?」
由美さんは信じられない言葉を口にしてほほ笑んだ。
「いいですよ。わたしがすっきりさせてあげます」
そういって、由美さんはわたしの寝間着をひろげパンツをおろすと、そそり立った息子に指をそえてしごきはじめた。
「どう? 気持ちいいですか?」
「は、はい……」
「ふふふ、でも、こうすればもっと」
由美さんはおもむろに口を開き、わたしの息子をほお張った。
ヌルリとしたなめらかで温かな感触が全体をおおい、ぬらぬらとした舌が絡みついてくる。全体をぬぐうようにしゃぶりつくした由美さんは、やがて咥えたまま頭を上下させはじめる。
「ふぅうう、うん、うんんん」
艶っぽい息を吐き、むしゃぶりつく由美さん。舌のうごめきとおおいつくす内頬の粘膜が、溜まりに溜まっていたわたしの精液を導き出す。粘液が塊となってせりあがり、それでも心地よさをいつまでも味わっていたくて我慢する。
「うんん、どう? 気持ちいい?」
「……、は、はい……」
「いいんですよ、このまま出しても」
「でも」
「大丈夫ですよ。全部出してください」
わたしは我慢できなくなり、ドクリと口の中に放ってしまった。由美さんは眉間にしわを寄せて全部を受け止め、そしてコクリと喉を鳴らして飲み込んでくれたのだった。
それから毎晩のように由美さんはわたしの病室を訪れ、二人は人目を忍んで乳くり合うようになった。
白衣の由美さんは胸元をひろげ、わたしに乳首をふくませてくれた。豊満な乳房は、いま思い出しても生ツバがわき出るほどに形が整い、桜色の乳頭は舌で転がせばほのかな甘味がひろがった。いたずらに聴診器を当てて、心音を聞かせてもらったこともある。
「ほら、興奮してるのがわかるでしょ」
妖しくほほ笑む由美さんは、そういってわたしにまたがり、スカートをまくってパンツを脱ぎ、馬乗りになって中へ誘ってくれる。蜜壺に埋没させたわたしは肉ビラの感触と、白衣をはだけナース帽をかぶったまま悶え喘ぐ由美さんを見つめ、快感に酔いしれた。
ときには産婦人科で使う金属の道具を使って、女陰の中をのぞかせてもらったこともある。
「ほら、ここにいつもあなたが入ってるんですよ。この中をあなたのオチ◯チンがかき混ぜてるんです。そして、ここが敏感なお豆さん。ほら、女も興奮すると勃起するんですよ」
わたしはしげしげと潤ってくる部分をながめ、指先で陰核をいじってみる。すると、由美さんは廊下に漏れてしまうんじゃないかと思うほど大きな声をあげ、身悶えする。
「ああん、いやあん、そこ、ダメぇ」
そして、片足をギブスで固めたわたしの上に乗り、由美さんは自分にあてがう。
「きょ、きょうも、わたしで気持ちよくなってください」
ずにゅりと内部にめり込む感触。由美さんは肉壁でわたしを包み、締めつける。最初はゆっくり、気が入ると激しく腰を揺さぶり、それでも抜け落ちないようにとば口がキュキュときつくはさみ込む。
わたしは、そのくびれた腰をかかえ、下から突きあげる。由美さんはゆさゆさ揺れる乳房を自分で揉みながら、舌なめずりを繰り返す。わたしは陶然となりながら、いつも若い精液を由美さんの中に吐き出すのだった。
そんな日が続いて、とうとう退院の時が来た。母親と家の家政婦に連れられわたしは、病院を後にした。担当の医師と数人の看護婦が見送ってくれ、その中にも由美さんの姿はあったが、特別な挨拶を交わすことはなかった。
ギブスがはずれるまで通院し、もちろん由美さんとも顔を会わせたが、患者と看護婦以上の会話を交わすことはなかった。そして通院の必要もなくなると、二度と会うことはなくなった。
その後、オートバイに乗ることもなくなり、仕事、仕事でわたしは多忙な毎日を過ごしてきた。けれど、ふとした時間にあのころを思い出すことがある。
悪友たちと駆け抜けた時代。その最後に、とてつもない思い出をあたえてくれた由美さん。
彼女の妖艶なほほ笑みを思い出すと、年甲斐もなく、いまでも腰のあたりがうずうずしてしまう。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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