Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【純朴な看護婦を騙した入院生活】
K・T 65歳 千葉県在住
いまから45年ほど前のこと。東京の大学生だったわたしはワンダーフォーゲル部に所属し、あちこちの山を歩いていた。当時、ワンゲルというのは一種のブームで、山岳部に入る勇気のない者や女子学生といっしょにハイキング気取りを楽しみたい連中が大勢入部していた。
わたしも同じ穴のムジナのようなもので、山の空気や風景、道端に咲く高山植物を楽しむというよりは、目当ての女子学生としゃべりながら歩くことを楽しみにする、動機不純な不良学生だった。
そんなわたしが不注意で足をすべらせ、ガケに転落してしまった。さいわい大事にはならなかったが、足の骨を折り、山の麓の病院でしばらく入院生活を送ることになった。
古ぼけた病院での生活はなんとも退屈で、わたしは日がな一日ベッドに転がっては時間を持てあましていた。
そんなわたしの看病を受け持ってくれたのが、地元に住む若い看護婦だった。
彼女はいかにも田舎娘らしく、赤いほほをして化粧ひとつせず、それでも親身になってわたしの看護をしてくれた。
わたしは暇も手伝って、彼女に都会の話をするようになった。
彼女は看護学校にかよっていたとき以外、村から出たことがなく、もちろん東京なんか行ったこともないと言う。そんな彼女はわたしの話を、とても興味深く聞き入っていた。
そうなるとわたしも情が移るのか、彼女の面立ちが愛らしく思えるようになってきた。
歳は20歳そこそこだったと思う。丸い顔立ちに小太りな身体。しかし肌の色は透き通るように白く、目も大きくクリクリして愛らしい。
胸も大きく肌の艶もよく、けっして美人ではないが男好きのする顔とでもいうのだろうか、そんなタイプだった。
わたしは彼女が、あまりにもおもしろそうに話しを聞いてくれるので、ついつい誇張もまじえておおげさに東京を語った。
「東京では地面の下に電車が走っていて、都内ならどこにでも10分で行ける」
「東京はどの店も夜中まで営業していて、ネオンの明かりで昼間より町が明るい」
「外国人が日本人よりも多くて、英語がしゃべれないと生活できない」
あからさまなでたらめでも、彼女は大きなまぶたを見開いて何度もうなずいていた。
そんなある日の夜のこと。わたしはいつものように、彼女に東京の話しをしていた。
「知ってるかい、東京ではさ、男女交際もすごくオープンなんだ」
「へえ、どんなふうにですか?」
「そうだな、たとえば、アベックが抱き合ってるのなんか、みんな平気だ」
「抱き合ってる? 昼間から? 堂々と?」
「そう、公園のベンチ、駅のホーム、店先とか」
「そんなぁ、村でそんなコトしたらぁ、大ごとだ」
「それだけじゃない、キスだって堂々としてる」
「キス」という言葉に、彼女は敏感に反応を示した。
「あれ、看護婦さんはしたことないの?」
「な、なにを……」
「キスだよ、キッス。接吻とでもいった方が」
「や、やだぁ!」
彼女は顔を真っ赤にして恥じらいを見せた。そのしぐさを見て、わたしの劣情が猛烈にわき立った。
もともとの女好きである。山道で女の子の手が握れる、険しい道では抱きかかえることもできる。それが目的でワンゲル部に入ったほどだ。
そしてそのときは、ギブスを足にはめられ、身動きのできない身。たまった劣欲がいまにも吹き出しそうな状態である。
わたしは思い切って彼女にいった。
「キスくらい挨拶みたいなもんだ。外国では当たり前だろ」
「で、でもぉ」
「キスどころじゃない。キスどころか」
わたしはそこで、彼女の目をじっと見つめた。
「看護婦さん、オレの話、おもしろい?」
「すっごくおもしろい」
「東京に行きたい?」
「行きたい。で、でもぉ」
「看病してもらったお礼に、案内してあげてもいい」
「え! ほ、本当に?」
「でも」
わたしは冷静を装っていった。
「キスも知らないんじゃあ、挨拶ができないのも同じだ。まず、練習しなくちゃ」
「え!」
「恥ずかしいの? それじゃあ東京に行けないよ。礼儀知らずと思われるよ」
純朴というべきか、世間知らずというべきか、彼女はもじもじしながらもわたしのそばに近寄ってきた。
「目を閉じて、そう」
ベッドの上に腰かけた彼女。わたしは上半身だけを起こし彼女を引き寄せた。
「こわくないから」
わたしはそういって、そっと唇を重ねる。彼女はその瞬間に、身をピクリと引きつらせる。
わたしは唇を割り、舌をねじ込ませた。その瞬間、彼女はおどろいたように目を開け、身をそらす。
「い、いやだぁ……」
「どうした?」
「な、なんだか……」
彼女は閉じた脚をムズムズさせている。その様子で、彼女がうずきはじめているのをわたしは察した。
「どうしたの? どこかおかしいの?」
「ううん、なんでもない、なんでも」
「見てあげよう」
わたしは彼女が拒絶するのもかまわず、グイと引き寄せると、いきなりスカートの中に手を入れる。
「な、なに!」
「大丈夫。東京じゃこんなこと、幼稚園の子どもだってやっている」
「で、でも……」
「自分に正直でないと東京じゃ生きていけないんだ。ほら、ここがこんなに濡れてる」
わたしは下着の中に手を入れ、肉の裂け目をいじくりはじめる。
「い、いやだぁ、やめて」
「看護婦なんだから、ここがどうして濡れるかくらい知ってるだろ」
「知ってる、知ってるけど」
「東京に行きたい?」
「うん」
「じゃあ、これも挨拶代わり」
わたしは彼女のクレパスに指を入れる。敏感な看護婦は顔を真っ赤にして、切ない吐息をつきはじめる。
わたしは固く尖った自分を彼女に示した。彼女はその部分を見て、恥ずかしそうに目をそらす。
「ほら、きみのせいでこんなになった。なんとかしてくれよ」
「なんとかって……」
「看護婦だろ、どうすれば男がおさまるかくらい知ってるだろ」
「で、でも」
「オレは足が不自由だからさ……。そうだ、口で」
「え!」
「キスの場所が違うだけだよ。東京じゃ……」
東京。その言葉が、彼女には一種の呪文のようになってしまったらしい。わたしの目を見てうなずくと、彼女は股間に顔を近づけズボンをおろした。
咥えて首を振るだけのぎこちない尺八だったが、わたしは十分満足だった。わたしは手を伸ばして彼女の乳房を揉み、そのやわらかな感触を楽しんだ。
「や、やだぁ、もう」
「なんだ、どうした」
「やだぁ、もう、やだぁ」
彼女は大げさに身悶えし、わたしのつらぬきを期待しているようだった。わたしも彼女の豊満な肉体を楽しみ、濡れた秘壺に収めたい衝動でいっぱいだ。
「よし、じゃあ、またがって」
「え?」
「東京の女の人は強いからね、みんな上にまたがってくれるんだ」
「それは……」
「東京だよ、東京」
その言葉を耳にするたびに、彼女の身体はピクリと痙攣する。わたしが彼女の身体を抱き寄せ耳もとでつぶやくと、喘ぎ声さえ漏らしてしまう。
「さあ、東京風に」
彼女は黙ってうなずき、制服のスカートをまくりあげると、下着を取ってわたしにまたがった。
わたしの一物は、瞬く間に彼女の内部に吸い込まれた。わたしは、その温かでやわらかい感触に包まれながら、白衣の上着をはぎ取った。
素肌が露出し、ブラジャーが取れると、あらわれたのは形も大きさも申し分のない乳房だった。
彼女が身体を振ると、胸乳はゆるやかに上下し、桜色の乳首が揺れる。純白の肌は次第に紅潮し、甘酸っぱい匂いが部屋の中に充満しはじめる。
「ああんん、やん、こんな」
「もっと大きな声出していいんだよ。東京じゃあ」
「ああああ! もう、やだぁ、気持ちいい! あん!」
激しく腰を振り、わたしの手を胸に押し当てて彼女は悶え狂った。わたしはヌルヌルとした摩擦とキュッとした締め付けを受け止めながら、そのまま彼女の中に放出してしまうのだった。
その日から、夜な夜な彼女はわたしの部屋に忍び込んできて身体をあずけてくれた。そして、ほどなくしてわたしは退院。彼女には、必ず迎えに来ると約束したが、東京に戻るとそんなことは忘れてしまった。
そんなわたしのもとに、彼女から幾度か手紙が届いた。入院患者と看護婦だから、住所くらいはすぐに調べられる。内容はいつになったら迎えに来てくれるのか、そればかりだった。
しかし、わたしにその気はなく、返事も書かないでいると、そのうち手紙も届かなくなった。
いまとなってはひどいことをしたと後悔もするが、そもそもはウソで固めた東京のイメージだ。彼女は真実を知らないで正解だった、とも思っている。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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