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報酬は出来高制。過酷なノルマを乗り越えようと必死な彼女たちは契約のためにカラダを張った——。
〈2017年10月〜2018年10月 Bさんの自宅で2回関係を持ちました。保険契約とおこずかいを頂きました。(中略)これらのことを、つつみかくさず告白いたします。〉
こんな手書きのメモが裁判の証拠として提出されたうえ、その内容が日本屈指の温泉郷である群馬県草津町の議会で公にされ、波紋を呼んでいる。
事の発端は、草津町議だった新井祥子氏(52)が、温泉ライターによる電子書籍『草津温泉 漆黒の闇』の中で、草津町の黒岩信忠町長(74)にレイプされたと告発したことだ。
「黒岩町長は疑惑を否定。名誉毀損にあたるとして、新井氏を刑事・民事両方で訴えました。新井氏は日本外国特派員協会で記者会見を開き、“性被害は事実”と主張しましたが、黒岩町長に対しては刑事告訴も民事提訴も行っていません。 草津町では新井氏の解職(リコール)を求める住民投票が行われ、彼女は、その結果、町議の職を失いました」(地元紙記者)
冒頭のメモは、もともと新井氏が温泉ライターに渡していたもの。黒岩町長が新井氏と温泉ライターを訴えた民事訴訟の裁判で、被告である温泉ライターが、電子書籍の内容は新井氏への取材に基づいていると主張するために提出された。
本誌の取材に、黒岩町長は、こう答えた。
「こんなメモを書いた彼女の神経が分かりません。裁判でメモが出てきたのは、彼女と温泉ライターの間に亀裂が走ったからでしょう。今回のレイプ告発の裏には、温泉利権をめぐる問題があると確信しています」
メモを町議会で公開した理由については、「彼女は、2015年1月8日の午前10時〜11時に、町長室でレイプされたと嘘をついています。その時間は公務に当たっていますから、私、そして町の信義に関わるので公表しました」
前出のメモには、他の男性と肉体関係を持っていたことも記されている。
〈2018年3月〜2019年 彼の部屋で、2回関係をもちました。保険契約とおこずかいを頂きました。〉
新井氏は、草津町議時代にも、保険の営業を続けていたという。
「議員と保険外交員の兼職は、違法ではありません。確認できただけでも、2名の草津町民が、新井氏の勧誘で保険に加入しています。ただ、主に営業していたのは、(群馬県)渋川市や東吾妻町だったようですね」(前出の地元紙記者)
新井氏にメモの真偽について取材を申し込んだところ、メールで次のような返事が届いた。
〈告白メモの見解については、裁判で主張して行く予 定です。なので、ここで述べることは致しません〉
思いがけない形で公になった「枕営業」の告白だが、本誌は匿名を条件に、現役の生保レディに話を聞くことができた。
お客と一夜の恋に落ちただけ
まずは保険外交員歴3年の涼子さん(30代独身・広島県・仮名=以下同)から。
「お仕事で忙しい人に営業をかけられるのは、どうしても勤務後。夜にコーヒーでは盛り上がりませんから、一緒に食事に行くことが多いですね。お酒に酔えば、いい雰囲気になって、ホテルに行くことも・・・・・・」
彼女はこう明かした後、「営業所長には“相手の懐に飛び込め”って言われています。声をかけるだけで嫌がる人も多いので、ちゃんと目を見て話を聞いてくれる人には、脇が甘くなって当然。“枕営業”なんてしているつもりはなくて、お客さんと一夜の恋に落ちただけですよ」(前同)
もっとも、女を武器にする同僚もいたという。
「数年前、30代半ばの外交員がいました。本人はあっけらかんと、“マクラはエサをつけた釣り針なのよ。相手に一度食いつかせたら、絶対、釣り上げる。契約更新や知人の紹介などにもフル活用。これぐらいの覚悟がなければ、この仕事はできないわよ”と話していましたね。 人一倍、化粧やファッションに気を遣っていて、女優みたいだったのを覚えています」(同)
風俗評論家の青山照彦氏は言う。
「風俗嬢を取材したときに、生保レディから転職した娘がいて、“こっそり枕営業をするぐらいなら、風俗のほうが向いていると思った”なんて教えてくれました。枕営業は都市伝説ではなかったんですね」
都内で営業する恵さん(30代・バツイチ)は言う。
「中高年の方は、毎月いくら払って、万が一のときにいくら出るのかにシビアですね。それに比べ、若い世代は保険の考え方が甘ちゃん。30代の青年が認知症の保険に入っていたりする。 しかも、払込期間が長くなれば、私たちの取り分も多くなります。どちらが狙い目か、分かりますよね」
さっぱりしていて姉御肌なタイプの恵さん。これまで、童貞2人の筆下ろしで契約を取ったと笑う。
「最初はITベンチャー勤めのK君(20代)でした。飲みに行ったら、聞いてもいないのに“実はまだ童貞なんです”なんて言ってくる。思わず“じゃあアタシが教えてあげようか。その代わり保険に入ってよ”って」
K君は大学の後輩・W君(20代)を紹介してくれた。
「勧誘の最中に、ぎこちなく“この後、食事に”と切り出すんですよ。おかしいと思って問い詰めたら、K君から“おまえも筆下ろししてもらえ”なんて言われていたらしいの。 教えるのは嫌いじゃないし、実益もありますし。終わった後、“どうもありがとうございました”って律儀に言うのが、かわいくて(笑)」(前同)
ちなみに、ホテル代はさすがに割り勘にしたが、飲食費などは彼女が持った。
「原則、経費はこちら持ち。それを恩に感じてくれれば、彼らが結婚したり、子どもができたときに、契約更新で有利ですから」(同)
今年で外交員歴10年になる人妻の紀代さん(30代・秋田県)は、首をすくめる。
「大きな胸がコンプレックスで、服装には気をつけているんですが、露骨に“契約するからヤラせてほしい”と言ってくる男性も少なくありません。そんなお客さんはキッパリ断ってきたんだけど・・・・・・」
半年ほど前のことた。
「その月は取れそうだった契約が流れたり、契約更新も少なかったり大スランプ。ノルマが達成できなければ、次の期は基本給も歩合も大幅ダウン。ダメもとで、食品加工工場に飛び込み営業をかけたんです」(前同)
門前払いを覚悟した紀代さんだが、応対したのは50代半ばの所長だった。今後も工場に出入りしていいと言ってくれたうえ、“保険に入ってなさそうな間抜けなヤツを紹介してやる”と社員を何人も呼びだした。
「思わず、手を合わせたいぐらいでした」(同)
ところが、半月ほどたって、所長から“取引先に、うまいタイ料理屋がある”と誘われた。
「何度か説明に通って、まとめて契約が取れそうな雰囲気になってたんです。1契約なら諦めがつくけど、ここで出入り禁止になったら、今までの努力はパー。食後にホテルに誘われて、迷ったあげく応じてしまって・・・・・・」(同)
1回きりの約束が、1週間もしないうちに連絡が来て、再び関係を迫られた。
「3回目のときに、さすがに頭に来て“私も結婚していますし、これ以上求められるなら、(所長の)奥様に相談します”と言ったら、収まりました」(同)
最後は、離婚後、高校生の息子との生活のために、保険の世界に飛び込んだ滋賀県の美和さん(40代)。
「シングルマザー率の高い業界ですが、営業に行けといわれても、どこに行っていいのか分からない。親戚や友人は全部、空振り。そこで、恥を忍んで前の夫の知り合いを訪ねたんです」
自分でも口下手だという美和さん。最近の保険は仕組みが複雑で、説明もままならない。すると、「“無理しなくていいよ。ちょうど入らなきゃと思ってたから”とOKしてくれたの。飛び上がるほど、うれしかったですよ」(前同)
50代の独身男性は、その本音を、保険証書を渡したときに明かしてくれた。
「前の夫が言っていた私の悪口を聞いて同情。応援できたらと思っていたそうです。それを聞いたら、涙が止まらなくなって」(同)
この男性は、美和さんが誘って一夜を共にした。その後、深い仲になり、息子もなついて、入籍を考えているとか。
カラダを張って、ノルマをこなす生保レディ。枕の数だけ、人生があるようだ。
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