Catch Up
キャッチアップ
このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【3人の芸者に嬲られた温泉宿の思い出】
N・I 82歳 東京都在住
あれは60年近くも前の初夏。わたしは関西にある、とある山深い温泉宿に逗留していた。ひなびた温泉で客の姿も少なく、わたしはのんびりと疲れた身体を癒していた。
20代の若造が温泉に長逗留というのをおかしく思われるかも知れないが、就職で上京したばかりのわたしはストレスで体調を崩し、両親のすすめでこの宿に来ていた。
現在でも精神的な疾患は、なにかと白眼視されることも多い。だが、そのころはもっとひどく、両親は世間からわたしを隔離してしまおうと思ったのかも知れない。
逆に考えれば、不調を根性や覇気で乗り切らせようとはせず、のんびり温泉でも浸かれば治るだろうと、いまでは当たり前のことを考えていたのだから、先見の明があったといえるかもしれない。
逗留費はすべて親持ちだ。わたしは懐具合を気にせず、本当にのんびりとした毎日を過ごしていた。
鳥の鳴き声に目ざめ、昼間は木立の間をすり抜ける風に吹かれながら川のせせらぎを耳にし、日が暮れるとはカジカの音色とホタルのまたたきを楽しむ。2階にあるわたしの部屋からは緑濃く広がる山並みが見え、夜には満天の星空が楽しめた。
世間は高度経済成長期に突き進んでいて、わずらわしいほどの喧騒に包まれていたはずなのに、わたしはまるで仙人のような生活を送っていたのだった。
そんな温泉宿にも、ときには団体客がおとずれることもあった。すぐ近くでどんちゃん騒ぎをされるのは迷惑だが、やさしい女将さんや気のいい仲居さん、そして、普段は無愛想だが料理をほめると満面の笑みを浮かべる板前さんのことを考えると、仕方ないかとあきらめるしかない。
その日も階下にある大広間では、宴会が繰り広げられていた。季節はずれだし、なんといっても山あいの小さな旅館なので、そんなに大人数が来ているわけではない。しかし、芸者をあげてのお大尽遊びなのか、三味線の音色や黄色い声が耳に飛び込んでくる。
「すいませんねぇ、お騒がせしっちゃって」
「いいえ」
女将さんがじきじきに食事を運んできて、深々と頭をさげるので、文句のひとつも言えない。
しかし、わたしは食事をとると早々に床をとったものの、宴会の声がうるさくて、なかなか寝付けなかった。深夜にようやく静けさが戻ると、やっとウトウトできるようになってきた。
「きょうのお客、ひどいわぁ」
「ほんま、こんな時間まで残らせといて。帰りのバス、なくなったやん」
「ごめんなぁ、泊まる部屋、用意してるさかい」
「女将さんのせいやあらへん。あやまらんといて」
眠りに落ちようとするわたしの耳に、女性の声が聞こえてくる。わたしは夢を見ているのかと思ったが、そうでもないらしい。
「お風呂入って、お酒も用意させてもらうさかい」
「気ぃつかわんといてください」
となりの部屋の戸が開き、中に入っていく音がする。わたしの部屋と隣室は、ふすま1枚でへだてられているだけなので、はっきりと話し声が耳に聞こえてくる。
その後、女たちは風呂に行ったのか、しばらく静かになっていた。それでも戻ってくると、ふたたびかしましい話し声がひびいてきた。
「かんぱ~い」
「そやけど、ホンマ、きょうの客。ウチら枕芸者と勘違いしてるんとちゃう?」
「けど、桔梗姉さん、きゃあきゃあ、騒いでたやん」
「仕事やから。変なとこ触られて往生したわ」
酒が入り、気分が乗ってきたのか、女たちの声はますます甲高くなってきた。わたしは何度も寝返りを打って我慢していたが、とうとう堪忍袋の緒が切れ、ふすまを開けて文句を言う。
「あ、すいません、うるさかった?」
「ええ、もう少し静かに……」
「あら、ちょっとエエ男やない」
旅館の浴衣に着替えた芸者3人のうち、一番年かさのある女がいう。
「桔梗姉さん、酔ってる」
「そやけど、この辺の若い男衆とは違うわ」
「お兄さん、どちらから?」
「え? 東京ですが」
「東京やて。えらいあか抜けてると思たら」
「よかったら一緒に飲みません?」
「さあさあ、遠慮せんと」
手を引かれたわたしは、車座になる3人の間に割り入る。芸者は30過ぎに見える桔梗を筆頭に、一人は20代半ば、そして、もう一人はわたしよりも年下の様相だった。
女たちは口々に今夜の客をののしり、わたしの身の上をたずね、酒がまわると身体をすり寄せてくる。
「お兄さん、ウチら3人の中やったら、だれ選ぶ?」
桔梗が言う。
「やっぱり、一番若い小百合?」
「い、いえ……」
「ほな、菖蒲? それとも」
桔梗はわたしにべったりしなだれかかり、聞いてくる。
「ウチもな、もう姥桜やけど、若いときは」
「そんな、ことないですよ」
確かに桔梗は一番年上だったが、白い肌といい艶っぽいうなじといい、小百合や菖蒲にはない色気があった。
「ほんま、ほんまにそう思う?」
桔梗はそういって、わたしの浴衣のすそから手を差し入れてくる。
「ああん、お姉さんずるい」
赤い顔をして、呂律の回らない声でそういったのは小百合。
「ウチにも触らせて」
小百合もそういって、手を差し込んできくる。二人の手は同時にわたしの下着の中に入り、半ば力のこもったせがれをつかむ。
「ちょ、ちょっと……」
「なんも恥ずかしがることあれへん。それとも、女は初めて?」
「いや、そういうことは……」
「ほな、こんなんされたことある?」
桔梗はいきなりわたしの裾をまくりあげ、股間に顔を押し当てる。そして、とがりはじめたせがれをつまむと、テロテロと舌を伸ばしてしゃぶる。
「ああん、お姉さんずるい、ウチにも」
そういって、小百合までもがわたしを舐る。
それまで黙って見ていた菖蒲は、やおら立ちあがると、わたしの前に来て浴衣を脱ぎはじめた。
「ウチの裸、見て」
おぼつかない足取りの菖蒲は帯を解き、ハラリとすべて脱ぎ落とすと、その実った身体をわたしに見せつけた。
たわわに実った乳房、くびれた腰。股間に伝わる桔梗と小百合の感触も手伝い、わたしのせがれは固くとがり、脈打つ。
「ああん、こんなん、もう我慢でけへん……」
「あら、小百合ちゃん、そんなんいつおぼえたん?」
小百合がいきなり、わたしのせがれを口にふくんだ。それを見て、桔梗が驚きの声をあげる。
「ネンネやとばっかり思てたら、こんなこと」
「ふんふん、ああん、おいしい」
小百合の温かくてねっとりとした感触が、わたしを包む。菖蒲はわたしの横に座り、乳房を持ちあげて押しつけてくる。わたしはその乳首を吸い、股間に伝わる感触を楽しんでいた。
「さあ、あんたらどき。ウチが最初や」
「ああん、お姉さん、ずるい」
「なにいうてんのん。こんなんは、歳の順番て決まってるんや」
いつの間にか浴衣を脱いだ桔梗が、菖蒲には負けず劣らずの身体でわたしに迫ってきた。そして、畳の上にわたしをあお向けにすると、またがり、そそり立ったせがれを自分で中に納めていく。
「ああ、エエあんばいや、ああん」
腰を振り、身悶えする桔梗。小百合も裸になり、菖蒲と二人でわたしの身体を舐め回す。身体全体に伝わるねっとりとした感触と、桔梗のじゅくじゅくした陰部の感触に、わたしは陶然となって身を任せるだけだ。
「ああ、エエわ、ああうん、もう、あん、イキそう」
気のいった桔梗の声に、小百合も菖蒲も我慢できないといった素振りでむしゃぶりついてくる。
菖蒲はわたしの顔面にまたがり、陰部を舐るように股をひろげ、小百合はわたしと桔梗がつながっている部分を舐める。桔梗の動きは次第に早く大きくなり、そしてわたしも我慢ができずに、彼女の中に吐き出してしまった。
「お姉さん、次はウチ」
そういって、桔梗の愛液で濡れたせがれを菖蒲がほお張り、しゃぶる。菖蒲に代わって小柄な小百合が唇を吸い、わたしの顔面にまたがる。
菖蒲の尺八で大きくなったわたしは、すぐに秘部に納められた。そして、それが終わると小百合、そして、また桔梗。
いったい何度、わたしは三人に気を吐いたのかおぼえていない。しかし、退屈だった毎日が、あの夜だけで満ち足りたものになり、それまでの怠惰な気分が消え去り、町に戻る決心が起こった。
それからはバリバリ働き、いまにいたっている。あのときの3人とは、二度と出会うことはなかったが、感謝の気持ちは忘れていない。
【選者紹介】
長月タケオ(ながつきたけお)
1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)
ほか
長月タケオ『誘惑する女 熟女たちの悦楽』
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