Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【パンティが好きになった理由】
Y・J 57歳 東京都在住
40代後半から「そろそろかな……」と思っていたが、50代も半ばを超えると決定的になった。ほかでもない、精力の話だ。
若いころは授業中や電車の中でうたた寝しただけでもビンビンに勃起し、ちょっとでも肌の露出が大きい女の子を見ると、慌てて公衆便所に走りこんだりもした。時間のあまった休みの日なんかは、何回射精できるか挑戦したりもしてみた。
けれど、最近は握ってしこってみてもビクともしない。もちろん、夏場のギャルを見ても、いいなと思うだけで、いやらしい感情にはつながらない。
しかし、こっちにやる気がなくてもチャンスはめぐってくるもので、ひょんなことから素人の女の子とベッドインする僥倖に恵まれた。
相手は23歳。大学を出たばかりのピチピチギャルだった。
流行のロングへヤーに短いスカート。背丈は170を少し下まわるくらいか。つぶらなひとみに厚い唇。すらりとした手脚に豊満な乳房という、60手前のしがないオヤジには、もったいないほどの美女だ。
「じゃあ、シャワー浴びてきますね」
ホテルに入ると彼女はいい、わたしはベッドに腰かけ、手持ちぶさたに待った。
待っているあいだは、あれやこれやを想像し、下半身がムズムズうずき、胃のあたりから胸に重苦しさの起こる性欲の高まりをおぼえた。
しかし、しかし、だ。身体のあちこちが、どんなにたかぶりをおぼえても、肝心の一物に力のこもる気配がない。
ほどなくして、彼女は浴室から姿をあらわした。胸もとにバスタオルを巻いただけの姿で、髪はかすかな湿り気を帯び、白い肌は上気し、ふき残したしずくが玉になって薄桃色の肌に浮かんでいる。
両の乳房は指1本差し込むのも困難なようにピッタリと合わさって深い谷間をつくり、実った太ももは破裂しそうなほど張りつめている。
「あまりじろじろ見ないでください。恥ずかしいから」
彼女はうつむき、うわ目づかいで言う。
「さあ、アナタも」
うながされ、わたしも浴室へおもむく。熱いシャワーの飛沫を受けながら、わたしは急いで、それでも丹念に身体を洗う。
これからの時間、あの肢体を好き放題できる。
艶々と光沢を放つ素肌を舐め、唾液にまみれさせることができる。張りのある柔らかな乳房をわしづかみにし、ピンととがった乳首を存分に舐ることができる。
厚い唇をむさぼり、ひょっとしたらほお張ってくれるかもしれない。
そして、いまだ色づいていないであろう、サーモンピンクの秘部をいじくり、そして……。
身体中の血液がけたたましく流れ、激しい興奮にめまいすらおぼえる。
それでも、だ。一物は反応をしめさない。大きくならない。
浴室から戻ると、部屋の明かりは落とされていた。彼女は先にベッドへ入り、布団をかぶっていた。
白いシーツにおおわれた羽毛布団は、彼女の身体でこんもりとした盛りあがりを見せている。
ベッドの脇には、きちんとたたまれたバスタオルと衣服が置かれ、バッグも横にある。
わたしはつばを飲み込んだ。あの布団の下には全裸の彼女が横たわっている。神々しいほどの体躯を折り曲げ、わたしの到着を待っている。
そう考えると、居ても立ってもいられなくなり、それでも大人の余裕をしめすかのように、ゆっくりと歩を進める。
ベッドの脇に立ち、わたしは布団をめくった。その瞬間、彼女は恥ずかしさのためか背中を向ける。
まっすぐな背骨、むいたばかりのゆで卵のような肌艶。腰と尻の間には小さなエクボがあり、双臀のふくらみは扇情的な丸みを見せる。
わたしは彼女の背後にすべり込んだ。そして手を差し伸べ、自分の方へ向かせる。いまにも泣き出しそうな表情で、胸の前で手を組んだ彼女はわたしを見る。
「やさしくしてくださいね」
かすかな声。
わたしはうなずき、抱きしめる。
肌と肌が密着すると、なめらかで温かな感触が伝わってくる。立ちのぼる官能的な甘い香りをかいだわたしは、頭の芯がうずき、欲情のみが全神経、全筋肉を支配する状態におちいった。
はずだった……。
しかし、股間の部分だけは冷静だ。
「大丈夫、そのうちなんとかなる」
心臓が苦しみをおぼえるほどに鼓動し、呼吸すら困難になっている。それほどまで興奮の極致にあるのだから、一部分だけが冷めた状態に保つ方が難しいに決まっている。
そう考えたわたしは彼女に唇を重ね、舌を絡ませ、乳房を揉みながら陰部に手をまわす。そして、潤いの少ない内部に指を挿入し、攪拌する。
「あん、いやん……」
艶美な表情を浮かべ、ゆるく唇を開き、切ない吐息が漏れる。指を出し入れすると、熱を帯びた膣穴からとろりとした蜜がにじみ出る。
わたしは唇から顔を離し、乳房にむさぼりつく。柔軟な乳肉は手のひらにボリュームと質感をあたえてくれ、桜色の乳首に吸いつけば薄い甘味が口にひろがる。
「あああん、すてき、うん……」
わたしの愛撫に彼女は敏感な反応をしめしてくれる。フェロモンの香りはますます濃厚になり、汗が吹き出て体躯にぬめりと艶をあたえだす。
しかし、反応してくれない。
彼女の準備は整っている。少々、勃ちが悪くても、無理やりねじ込めばなんとかなるかもしれない。中のぬるりとした感触で、力が発揮するはずだ。
そう思ったわたしは彼女の足をひろげ、間に身体を割り入れた。
「ねえ、お願い、つけて」
そのとき彼女はいった。
「きょうはちょっと、危ない日だから」
衝撃の指示であった。
コンドームをはめろと彼女はいう。しかし、しなびた一物には無理がある。
わたしは躊躇する。すると彼女はわたしの異変に気づいたようだ。
「どうしたの? 元気がない」
「い、いや……」
「わたしじゃダメなの?」
「そんなことない! 絶対にない!」
わたしは必死に訴える。
「疲れてるの? いいわ、わたしがなんとかしてあげる」
そういうと、彼女はわたしの股間に顔をうずめ、口を開いてすっぽりとふくんでくれた。
舌がうごめき、茎や根もと、先にカリ首をなぞる。髪をかきあげ、見せつけるように首を振り、時折うわ目づかいでわたしを見る。
しかし、ダメだ。
「はああ、疲れた」
さんざんわたしをしゃぶってくれた彼女は、冷徹な声でいった。
「もういい、がっかりだわ」
身を起こし、全裸のままでベッドからバッグに手を伸ばし、タバコを取り出す彼女。
「タバコ、吸うんだ」
「悪い?」
ふてくされた態度で彼女はいう。
「ホント、がっかり。時間の無駄だったわ」
わたしは、いままで味わったことのない屈辱をおぼえた。しかし、講じる手立てはない。
打ちひしがれながら、ふとベッドサイドを見ると彼女のブラジャーとパンティ。わたしは何気なくそれを取る。そして、気のおもむくままに鼻に押し当ててみた。
「あ……」
股間の部分に染み込んだ体液の匂い。甘ずっぱく、アンモニア臭も鼻に伝わる。
「ちょっと、なにしてんのよ」
気づいた彼女は、自分の下着をわたしから奪い取ろうとした。しかし、わたしはかたくなに嗅ぎ続ける。
頭の中の澱のようにたまっていた何かが溶解する。少年時代のころように、脳みそが晴れわたり軽くなる。それと同時に、まったくピクリともしなかった肉棒が、グングンと勢いづいて膨張する。
「ちょ、ちょっと……」
彼女は無理やりわたしからパンティを取った。しかしわたしは、それまでのわたしではない。
「キャ!」
たぶん獣のようにひとみは血走っていただろう。彼女があらがうのもかまわず、わたしはゴムもつけず、閉じた部分にねじ込んだ。
「いや!」
彼女は小さく悲鳴をあげる。しかし、わたしの力強いつらぬきで、次第に歓喜をあらわにしはじめる。
「やんやん、あああん、こんなの、やん、ああん!」
真上からつらぬき、裏返して背後から挿入し、ひざの上に乗せ、最後は正常位で心ゆくまで犯す。
しかし射精も近くなったころ、精神が平常に戻りつつあったわたしは途中でコンドームをはめ、その中にほとばしりを放ったのであった。
「もう、あんまりいじわるしないでね」
満足おぼえたのか、余韻を楽しむわたしに対し、彼女は人が変わったように甘えてきたのであった。
それからしばらく、わたしは彼女との逢瀬を楽しんだ。しかし、彼女のパンティを鼻に押し当てているうちに、彼女自身よりパンティに興味をいだくようになった。
すると当然、ほかの女の子のパンティも嗅いでみたくなる。
カネで、その手のショップに出かけることもあるし、SNSでパンティだけを目的とした書き込みをし、生の脱ぎたてを入手することもある。
そしてとうとう、わたしはパンティの匂いだけで満足するようになり、女性自身には興味を持たなくなった。
これでいいのか悪いのか。しかし、歳も歳だし、風俗なんかに出かけるよりもよっぽど安上がりだし、安全なのでかまわない。そんなふうに、いまは思っている。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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