Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【真性マゾ女との遭遇】
M・H 68歳 東京都在住
定年を迎え女房とゆっくり過ごそうと思っていた。しかし、女房はガンを患い、呆気なくあの世に旅立ってしまった。その後は何をするのも億劫になり、早く女房のところに行きたいとばかり考える。
そんなとき、古い友人が訪ねてきて、遊びに行かないかと誘ってくれた。
友人はむかしから色事が好きで、それが原因で女房とも早々に別れていた。それでも、肌艶はいいし、なんとなく生き生きして見える。
原因は何かとたずねたら、やはり女だという。
「けど、この歳になって女道楽もなんだか……」
「なにいってるんだ、この歳だからこそ、できる遊びっていうのもあるんだ」
「けど、最近元気がなくて。カネを払って使いものにならないんじゃ意味がない」
「だから、より刺激の強いのを選ぶんだ」
「刺激の強いもの?」
「そうだ、君はSMに興味はあるか?」
「SM? 縛ったり、ムチで叩いたりするアレか? ないとはいわないが」
「世の中には、縛られて、叩かれて歓ぶ女がいる。そして、そんな女をそろえている店もある。それにSMはセックスが目的じゃない。観るだけでも十分だぞ」
たしかにそうかもしれない。女の白い柔肌に荒縄が食い込む様や、ムチやロウソクで痛めつけられる様子は見るだけでも楽しめるだろう。
「どうだ、試してみないか」
「え?」
「SMのデートクラブというのがあってな、そこなら奴隷として、2時間女を楽しめる。何度もいうが、SMの本質は挿入じゃない。痛みと辱めで身悶えする女を観察することだ。もしくは、そんな女に調教することだ」
「えらく詳しいな」
「じつはな、ワシももうダメなんだ」
「え?」
「勃たない。若いころに使いすぎたせいかも知れないな」
「なるほど、だからこの世界を」
「そう。勃起したり射精したりしなくてもエロが楽しめる。それすらも忘れたら、あとは枯れるだけだ」
友人のいう通りかもしれない。女に興味を示さなくなったら、その時点で男は廃業だ。
機能的に無理があるのなら、見たり、触ったりで満足できる方法を選べばいい。
「なるほど」
「今度、いい店を紹介してやろう。君は指定されたホテルで待っていればいい」
約束の日が来て、わたしは友人の指名したホテルに入った。
「ワシに任せておけ」
彼はそういったが不安でならない。
「はたして、どんな女が来るのやら」
しばらくして部屋の呼び鈴が鳴った。ドアを開けると、そこには少し大きい目のかばんを持った女が立っていた。
「よろしいでしょうか」
「あ、はい」
わたしは彼女を招き入れる。女は麗奈と名乗る。歳は40だという。色が白く、清楚な人妻といった雰囲気で、とても玄人には見えない。
わたしは満足をおぼえ、そして、これからこの女と淫靡な時間を過ごせるのか、と思うと、早くも股ぐらがウズウズしはじめる。
「じゃあ、まずシャワーを」
支払いを済ませてわたしがいうと、麗奈は首を横に振った。
「わたしの前に立ってください」
しおらしい声で麗奈は言う。何がはじまるのかと期待しながら、わたしは彼女の前に立ちふさがる。すると麗奈はひざまずき、わたしのズボンとパンツを脱がすと、いきなり一物にしゃぶりついてきたのであった。
「ふふん、うううん、うん」
ぴちゃぴちゃといやらしい音を立てて麗奈はふくみ、舌を絡みつかせてくる。その感触に、最近めっきり力のこもらない一物が、まるで50年若返ったように長大となる。
「おお、おお」
「ふ、はう、ん、いいんですよ、このまま出しても」
「け、けど」
「ご心配なさらないで、わたしは何度でも殿方を……」
勃起させる自信があるらしい。
本当かどうか疑いたくなるが、それでも激しい麗奈の愛撫に、わたしはほとばしりを放ってしまうのだった。
麗奈は、口にたまったわたしの精液をすべて飲み込んでくれた。そしてニッコリ笑って立ちあがると、先にシャワーを浴びるよううながす。
わたしは湯を浴びて戻り、麗奈が交代で浴室に入る。そしてふたたび姿をあらわしたときは、素肌にバスタオル1枚という姿だった。
「では、わたしを好きなだけお試しください」
麗奈は床に座り、三つ指を突いて頭を下げる。たとえ商売上の演技だとしても感服してしまう。
「まず、なにを」
不案内なわたしはたずねる。
「では」
麗奈は持ってきたかばんの中から、鎖のついた首輪と手錠、そしてムチを取り出した。
「これでわたしを」
求められるままに麗奈を拘束する。バスタオルと取り去ると、着衣のときよりムッチリとした肢体があらわれる。歳の割には乳房の形も張りも、全体的なバランスも崩れていない。
「お願いです、早く」
鎖をジャラジャラ鳴らし、四つんばいになった麗奈は哀願する。その仕草に興奮をおぼえたわたしは、ムチを振りあげ、背中を打った。
「ああん!」
大きく声をあげ、表情に苦悶が浮かぶも、次の責めを要求する。
「よし!」
わたしは何度も麗奈を打つ。彼女は身悶えを繰り返しながら、何度も何度も求めてくる。その妖しい仕草に、わたしの股間はふたたびうずきをおぼえる。
「その格好で、これを舐めろ」
手の自由を奪われた麗奈は、ひざ立ちのわたしの前に進み出て、四つん這いのまま一物を咥える。
わたしは麗奈にふくませながらムチを下ろす。肌が打たれるたびに、麗奈はピクリと身体を痙攣させ、それでもわたしを離そうとしない。
わたしは麗奈の口の中で勃起した。そして彼女の顔面を犯しながら、激しく腰を振る。
口だけでわたしを愛撫する麗奈は、喉の入り口付近までねじ込まれても、舌の動きや吸い込みを弱めない。
「なあ、本番は禁止か」
耐えられなくなったわたしはたずねた。
「い、いいですよ」
「本当か?」
「わたしも、もう……」
麗奈は座りなおし、脚をひろげて陰部を見せた。
部分はどろどろに濡れそぼり、少し形の崩れた肉ビラが、うねうねと口を開いている。
「よ、よし!」
わたしはおおいかぶさり、ぐさりと貫く。
女を抱くのは何年ぶりだろう。ぬめぬめとした感触と温かな温度。
わたしは思うがまま腰を振る。
「あああん、いい、いいいい!」
麗奈は絶叫し、自分が上に乗ると言い出した。わたしがあお向けになると麗奈はまたがり、そして自ら内部へいざなう。
「うううん、届くぅ、届いてる」
手錠と首輪はそのままだ。わたしが首輪の鎖を引くと、麗奈はあごをあげ、口を開いて舌を出す。
「ねえ、お願い、もっと気持ちよくして」
「どうやって」
「こう」
麗奈はわたしの手を首に運んだ。そして絞めるようにいう。
「こうか」
わたしは少し力を込める。しかし麗奈は、より強くを求める。
「こ、こうか!」
わたしはきつく彼女の首を絞めた。麗奈は顔を赤らめ、舌を出す。その瞬間、納めていた膣の圧力が増し、痛いほどに締め付けてくる。
「も、もっと、もっとぉ……」
「これ以上したら死んでしまう」
「い、いいの、殺して、殺して」
「え?」
「この気持ちのままで死にたいの、し、死にたいの」
麗奈の目は尋常ではなかった。彼女は本気で死ぬことを望んでいた。
わたしは急に恐怖をおぼえ、手を放す。
「だ、だめ、もっと」
焦点の定まらない、狂人のような目をして、麗奈は続きを求める。わたしはうろたえ、麗奈から身体を離し、起きあがった。
「や、やめてくれ」
しかし麗奈は腹ばいになって、わたしにすり寄ってくる。
「お願い、もっと気持ちよくして。お願い、気持ちよくして。もっと、お願い、もっと」
髪を振り乱し、よだれを垂らし、薄い笑いを浮かべ、イヌのように四足で歩きながらにじりよって来る麗奈。
わたしはおびえ、慌ててパンツをはいて服を手に取ると、そのままホテルから逃げ出したのであった。
「どうだった」
次の日、友人から連絡が入った。
「どうもこうも」
わたしは説明する。
「そうか。その女、本物だな」
「ワシはニセ者でもいいから、もっとおだやかなほうがいい」
「わかった、次はそうする」
友人はそういってくれたが、はたして次はあるのだろうか。けれど、彼のおかげで生活にもハリが出てきた。
「男は女を忘れればそれで終わり。たとえ勃たなくてもSMなら楽しめる」
今度はどんなプレイが待ち受けているのか、ワクワクするこのごろだ。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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