Catch Up
キャッチアップ
このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【街から逃げてきた女と人生の転落】
G・K 80歳 大阪府在住
いまから60年以上も前のこと。山深いひなびたところだが、わしの家は庄屋の家筋だった。5人兄弟の長男であるわしは、あとを継ぐことが決まっていたし、すでにいいなずけもいた。まわりはわしを坊ちゃん坊ちゃんと呼び、何不自由ない生活を送っていた。
そのころである。
一人の女が大阪の都心から流れてきた。涼しい目もとにおちょぼ口。年の頃なら三十路前後のべっぴんだ。女はわけあって村の親戚を頼ってきたようだが、周囲の連中はあれやこれやと噂を流した。「あれは、街のカフェーで働いていた水商売の玄人だ」「いや、進駐軍相手のパンパンだ」「あれは飛田や松島辺りで身体を売ってた女だ」と口さがない。
確かに、女は見ているだけで男のスケベ心を駆り立てるような姿をしていた。
パーマのかかった長い髪を、束ねもせずに垂らしている。化粧は濃く、口紅は赤く、着ているものも村の女たちとは違う。身体の線がはっきりわかる薄手の衣装に、風が吹けば舞いあがってしまいそうなスカート、むき出しの白くて細くて長い脚。そして、なんといっても男たちの眼を引いたのは、恥ずかしげもなくこんもりと盛りあがった乳のふくらみだった。
村一番の家に生まれ、ほしいものはなんでも与えられてきたわしは、その女が気になって仕方がなかった。それまで抱いてきた村の女とは全然違う、明らかにいやらしくて妖しい雰囲気に当てられてしまった。
「ああ、あんな女と1発やりたい」
まだまだ若かったわしは、毎日のようにそう考えるようになっていた。
あれは年も明けたばかりのことだった。わしは何かの用事で田んぼのあぜ道を歩いていた。むかしのことだから、用事の内容はおぼえていない。たぶん親父の代理で、役所にでも行った帰りなんだろう。
真冬だというのにポカポカと暖かい日だった。陽気につれられ、わしは帰り道の途中にある鎮守の境内に入っていった。そこに女がいた。
女は社の縁側に腰かけ、脚をぶらぶらさせていた。顔は空をあおぎ、流れる雲でも見ているようだった。
わしは魅入られるように女を見つめた。確かに百姓女とは違う色気がある。あか抜けた様子は、わしの知らない都会を感じさせてくれる。
けれど女はわしを見つけると、険しい表情で立ち去ろうとした。
「ま、待て」
わしはいった。
「なんで逃げる」
「逃げんでエエの?」
女は小首をかしげ、鈴の転がるような声で言った。
「なんで逃げやなアカンねん」
「そやかて、村の人みんな言うてるよ。ウチは淫売のスケベな女や。ウチといっしょにおったら、色気にまどわされるって」
わしはゆっくりと女のそばに寄っていった。
「連中、そんなこというてんか」
「うん、おかしいよね、大阪やったら当たり前やのに」
わしは女と向かい合い、ドキドキしている自分を知った。けれど、村の惣領の息子だ。威厳だけは保っておかなければならない。
「あんた、あのお屋敷のボンボンやね」
「ボンボンやない、もう大人や」
「いくつ?」
「十八になった」
「へえ、見えへんわ」
それからわしは、女から大阪という街のことについていろいろ聞いた。
街なかではしもた屋のしろうと娘も、女と同じような格好をしていること。そして、男と女がアベックで歩いていても、だれも見とがめないし変な噂も立てないこと。
「やっぱり田舎はアカンわ。もっぺん大阪に戻りたいわ」
「なんで戻れへんねん」
「教えてほしい?」
女は少しほほ笑んだ表情でわしを見る。
「おカネがいるねん」
「借金か?」
「うーん、まあ、そんなとこ」
「なんぼや」
「子どもには関係ないやん」
「子どもと違うて言うてるやろ」
「違うんやったら、どれくらいのおカネ動かせんの?」
女はわしを、小バカにしたような顔で言う。
「なんぼ用意したら、わいを大人と認めんねん」
「うーん、そやね」
女は金額を言った。しかし、驚くほどでも、自分に用意できない額でもない。
「よっしゃ、わいが用意しちゃる」
「え?」
「そんなはしたカネくらい、耳そろえて持ってっちゃる。あした、この時間に、ここで待っとけ」
わしはそういって神社から駆けだした。
次の日、わしは女の言った額のカネを持ってきた。
「ウソ」
そういいながらも、女の目は輝いていた。
「どうや、これでわいが大人やていうことがわかったか」
「うん」
女は大事そうに札をポケットに押し込むと、わしを神社の裏手に誘う。
「な、な…」
「お礼せんとな」
裏手には青年団の寄り合い所があり、いつでもだれでも入れるように、カギはかかっていなかった。女はそこにわしを連れ込み、床の上に座らせた。
「なんにもせんでエエんよ。黙って任せて」
女はそういうと、わしのズボンに手をかける。
「なに……」
「エエから」
ズボンを脱がし、下半身をむき出しにすると、女はわしの息子に手を添え、前かがみになってしゃぶりはじめる。
「おお、おお!」
「口でされるの、初めて?」
わしは黙ってうなずく。
「ふふふ、カワイイ」
舌を伸ばし、全部をなぞり、アリの戸渡りやカリをぴちゃぴちゃと舐めはじめる。窓から昼間の明かりが漏れ込んできて、女のイヤらしい表情がはっきり見える。
「ふふうん、うん、あん」
女は艶っぽい吐息を漏らし、わしにむしゃぶりついてくる。寒さで縮みあがっていた息子は、すぐにぐんぐん大きくなってくる。
「アカン、アカンて」
「なにがアカンのん?」
「出てまうて」
「出してエエんよ。飲んだげる」
それまでにも色んな女を抱いてきた。いいなずけの娘には指1本触れていないが、下働きの小娘や山向こうの後家さん、盆踊りや秋祭りの日なんかは、闇にまぎれ、草むらで押し倒したこともある。
しかし、どの女も黙ってされるがままになっていて、この女のように積極的に男を歓ばせるようなことはしない。しかも男の汚い部分をしゃぶり、吐き出す汁を飲み干すなどできるわけがない。
けれど、女は口いっぱいにわしをほお張り、くちゅくちゅと音を立てて首を振る。口の中では舌が絡まり、オ×コに突っ込んでいるよりも心地がいい。
「ああ、出る」
「出して、口の中に出して」
女のうわずった声とチ×ポに貫かれた表情にたまらなくなったわしは、そのまま吐き出した。
「う、うん……」
女はわしを咥えたまま身動きしなくなり、やがってゆっくり抜き取ると、のどを鳴らして口の中のものを飲み込んだ。
「おいしい……」
ほほ笑む女。わしは魅入られたように見つめてしまう。
「まだできるよね」
「え?」
「今度はウチを気持ちようして」
女はそう言うと立ちあがり、するすると着ているものを脱いだ。
「あ……」
わしは思わず声をあげてしまった。
向こうが透けて見えそうな白い肌、キュッと締まった腰に張り出した尻、ムチムチした太もも、して、腋からはみ出そうなほど実った胸乳。
「寒い、暖めて」
女は、そう言ってわしに抱きついてくる。
「ああ、ああ……」
「好きにしてエエんよ、好きなようにして」
女は唇を重ね、わしの舌を吸い、自分のつばを流し込んでくる。それまでのわしなら汚いと思うところだが、このときは考えない。それどころか、甘くてうまいとさえ思ってしまう。
「ほら、さわってエエんよ、揉んで」
女はわしの手を胸に持っていく。ハリはあるがやわらかな感触に、しなびはじめていた息子はぐんぐん固くなる。
「ふふふ、大きなってきた。すごい」
女はそう言って、わしをつかんでこする。
「これがウチの中に入るんやね。楽しみ」
わしは胸を揉みながら、息子に伝わる指の冷たさを感じていた。女は、そんなわしの服を脱がしにかかる。
「もっと、力入れてエエんよ。揉みながら吸ってもエエんよ」
わしはうなずき、しゃぶりつく。女の乳首が舌の上で転がる。
「ああん、気持ちいい、うん、エエ感じ」
表情をゆがませ、まゆ根にしわを寄せ、女は喘ぐ。わしはたまらなくなり、女を押し倒し、乱暴に突っ込もうとした。
「あん、いやん……」
女は軽い抵抗を示す。けれど、オ×コは十分に濡れていて、わしはすんなりと中に納めることができた。
「いやん、あん、大きくて固い!」
思うがままに、腰を打ちつける。女は艶然とした表情で悶える。女の中は熱く、ぐぢゅぐぢゅに潤い、やわらかい肉襞で締めつけてくる。
「どう、ウチはどう?」
「エエ気持ちや、エエ気持ちや」
「うれしい」
女はそう言って、自分からも腰を打ちつけてきた。
女の中はウネウネとうごめき、奥と中ほどと入り口でわしを締めつける。その感触が息子のくびれと合わさり、みょうな刺激となって攻めてくる。
「ああ、ああ、いやん、あうん、ああ、いい、気持ちいい!」
声を忍ぶ村の女と違い、はばかることなく絶叫する。それこそ、貪欲によがり狂うといった様子だ。
わしは限界をおぼえ、女の中に吐き出した。
「あん……!」
女は軽くけいれんしながら、わしのヘンズリを受けとめる。
「気持ちよかった」
ぼんやりとした表情で、そう口にする女。わしも大満足し、また会う約束を交わした。
それからわしは女に溺れた。狭い村のことなので、人目を忍んでの逢瀬だった。しかし、噂がひろまり、わしは親父に詰問されたこともあった。
けれど、味わってしまった上ボンを忘れることができない。
「なあ、ウチと大阪に行けへん?」
ある日、女はわしにいった。
「あんた、こんなへんぴなとこで終わる男とちゃうわ。そやろ」
「そやけど……」
「ウチと大阪で暮らそよ。不自由させへんから」
「そやけど」
「こんな田舎に未練あんのん?」
「そら、あと取りやし」
「しょせんド田舎の百姓の親方やろ。街は違うで。女の子はきれいやし、刺激的。毎日がお祭みたいや」
「そ、そうか」
「なぁ、ウチといっしょに大阪にいこ。な、お願い」
女は潤んだ目でわしを見る。
この女とは切れたくない。しかし、遅かれ早かれ、わしはいいなずけの女と所帯を持つことになる。そうなれば親父のいいなりだ。あと取りといえども、親父が生きているうちは、財産は自由にならない。不自由はないが、かごの鳥だ。
「こんな田舎でくち果ててエエのん?」
女の言葉にわしは決心した。そして、その日のうちに準備を済ませ、親父のカネをくすね、わしらは電車に飛び乗った。
それからが転落続きだった。
女は大阪に不義理があって逃げていた。それを精算するために、わしの持ってきたカネは全部使ってしまった。
それでも最初のうちは幸せだった。女はやさしいし、毎晩メシを食うのも忘れて抱き合った。女の身体に飽きるというがなく、わしは、その大きな胸や具合のいいオ×コに夢中になっていた。
しかし、元来が淫乱な女だ。村と違い、誘えば男はいくらでもいる。そして、それがカネになる。
ある日突然、置手紙もなく、女はわしの前から姿を消した。
田舎育ちのボンボンだったわしは苦労した。慣れない力仕事で身体もこわし、食うや食わずの生活が続いた。仕方なく村に戻ろうとしたが、家に上がる前に親父に怒鳴られ、追い返された。
それからわしは、大阪の片隅でひっそりと暮らしている。この年になるまで結婚もできず、もちろん子どももいない。年金が頼りの細々とした生活を送っている。
確かに女のことは後悔もし、恨みも抱いている。けれど、ときどき酒を飲みながらボンヤリしていると、女のオ×コが思い出され、勃起しないまでもむずむずすることがある。
あの女も、いまはどうしているんだろう。そんなことを考えながら、安アパートでせんべい布団に包まり、1日を終える毎日だ。
【選者紹介】
長月タケオ(ながつきたけお)
1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)
ほか
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