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キャッチアップ
このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【居酒屋で知り合った旅行中の人妻】
T・Y 59歳 大阪府在住
なぜ、その店に入ったのかは、いまでもわからない。魔が差したというには大げさだし、かといって、とくに目立った店構えでもないのに、惹かれた理由もわからない。
とにかく、わたしは夏真っ盛りの8月2日、なんの変哲もない居酒屋ののれんをくぐった。
店はこぢんまりとしたつくりで、カウンターと4人がけのテーブルが3つだけ。若夫婦が経営しているらしく、愛想のいい板前と女将がわたしを迎えてくれた。
「いらっしゃいませ」
女将がおしぼりをわたしてくれる。
「きょうは、いいハモが入ってますよ」
板前はいう。
「ほなそれ、湯引きでもらおか」
「へい!」
つづいて女将が聞く。
「お飲み物はなにを?」
「冷えた酒で」
女将はていねいに頭をさげてさがる。このやり取りで、わたしはこの店をいっぺんに気に入ってしまった。
このごろはどの店に行っても、まず飲み物を聞く。だが、料理のおすすめがあればそれを先に告げ、そのあとで酒を選ばせるのが本筋のはずだ。なぜなら、飲み物は料理に合わせるものだから。
きょうはいいハモが入っている。ならばビールよりも酒だろう。なんでもかんでも、「とりあえずビール」と、だれもが注文すると思ったら大きな間違いだ。
余談だが、わたしは「日本酒」という呼び方がきらいだ。麦でつくられた醸造酒が「ビール」、果実の醸造酒が「ワイン」であるように、米でつくられた醸造酒が「酒」である。英語の「リカー」イコール日本語の「酒」ではない。
また、グラスからこぼれるほどそそがれるのも好きではない。カウンターなりテーブルなりに置かれたグラスに、大の大人が身体をかがめて口を運ぶ姿は、みっともないし下品だ。無類の酒好きとして、それくらいのこだわりは持っておきたい。
話を戻す。
少し待たされたが、酒とハモは絶妙のタイミングで出された。
まず酒で舌を洗おうと、ほどよくつがれたグラスを手に持ち、口にふくむ。きりっと冷えた一口目はほのかに甘く、端麗な味わいが口いっぱいにひろがる。
その甘露な味わいにひたっていると、酒の余韻が消えるか消えまいかという瞬間にハモが登場する。さすがにおすすめというだけあって、歯ごたえも味も申し分ない。
しかも、よほど手際よく仕上げているのか、安酒場でよくあるように、水でびちゃびちゃにもなっていない。
わたしは上機嫌ではしを進め、店の中を見まわした。すると、40代半ばかと思われる妙齢の女性が一人、カウンターの隅に座り、わたしと同じように幸福そうな表情を浮かべ、店の中をながめていた。
わたしと女性は目が合い、互いに会釈を交わす。すると女性は女将を呼んで、なにやらささやいている。
ほどなくして、女将がわたしのところに来て言った。
「あちらのお客様が、ご迷惑でなければ、おとなりに座っていいですか、と」
わたしに異存はなかった。
女性はわたしの横の席に腰をおろす。長い髪をひとつに束ねた清楚な面持ちで、気品がありながらも胸のふくらみの大きい、なかなかの美人だ。
「ご地元の方ですか?」
彼女はわたしにたずねてきた。
「そうです」
「わたしはきょう、東京から旅行で」
「お一人ですか?」
「ええ、女の一人旅はおかしいですか?」
「いえいえ」
彼女が言うには、夫はとある会社の重役で、愛人宅に入りびたり。まったく自分をかまってくれない。ただ、生活には困らないし、この歳で離婚もなんだから、気晴らしの旅行を趣味にした。最初のうちは友人同士やツアーに混じってあちこち行っていたが、そのうち気楽さに味をしめ、それからはずっと一人で全国をたずね歩いているらしい。
「でも、大阪は初めてなんです。なんだかこわい気がして」
「こわいことなんかないですよ。大阪弁も、わたしらの先の人らは、京都弁にまけへんくらい、おだやかな話し方しはります」
「そうですね。実際、大阪の方とお話をしてわかりました」
「汚い大阪弁は、吉本の芸人がひろめてしもたんです。芸人さんでも昔の人は、きれいな大阪弁、使いましたで」
話がはずみ、杯も重なる。わたしは水ナスの浅漬けや活けダコの造りを彼女にすすめる。彼女はうれしそうにほお張る。
時間は流れ、やがてわたしは店を出ることにした。
「ホント、大阪のものは京都に負けないくらいおいしかったです」
「でしょ。京都は海がないさかい、とくに魚は大阪のほうがうまいんですわ」
そういってわたしが立ち去ろうとすると、彼女はわたしの腕をつかんで帰そうとしない。
「お礼をさせてください」
「え?」
「このまま、わたしの泊まってるホテルまで」
うるんだその目は、わたしを誘っているに違いない。わたしも女房を亡くしてはや5年。だれはばかることはない。
「よろしいんですか」
彼女はうなずく。
店を出たわたしたちは、そのままタクシーに乗り、彼女の泊まっているホテルにおもむいたのだった。
部屋に入ると、彼女はいきなり抱きついてきた。そして顔を押しつけ、唇を舐ってくる。わたしは久しぶりということもあり、緊張しながらも興奮をおぼえた。
舌が絡まりあうキスのあと、彼女はひざを折って、わたしのズボンに手を伸ばした。
「ちょっ、ちょっと」
「なあに?」
「いや、ズボンくらい自分で」
「いいの、したいようにさせて」
ベルトをはずしてホックをはずし、ファスナーをおろす。彼女はかかとまで一気にずりおろすと、今度は下着も脱がしにかかる。
「いや、それは……」
わたしは狼狽した。が、彼女は気にも留めず、わたしの下半身をむき出しにし、そして息子をつかんでしゃぶりはじめたのだった。
ねっとりとした感触に、わたしは思わず悶絶してしまった。彼女は頬張り、首を振り、わたしを出し入れする。
「いや、もう、その……」
「出してもいいのよ」
「いや、それは」
「じゃあ、わたしにもシテ」
ぶざまな格好のまま、わたしはベッドに連れて行かれる。それからわたしは、全部を脱ぎ捨て、彼女におおいかぶさった。
今度はこっちが主導権を握り、彼女のワンピースを脱がしてブラジャーをはずす。あらわれたのは、白い肌と盛りあがった乳房。歳の割には張りも艶もある。わたしは乳首を吸い、乳房をわしづかみにする。
「やああん!」
彼女は、となりの部屋に聞こえはしまいか、と心配になるほどの声をあげた。乳房を揉んで乳首を転がしながら陰部に手をまわすと、すでに部分はびちょびょに濡れている。わたしの一物は、彼女が咥えたときから大きくとがっている。
「やああん、挿れて、挿れて、お願い!」
せがむ彼女。わたしは彼女の股ぐらにあてがい、ぐっと力を込めて奥までねじ込んだのだった。
1回目は、そのままわたしが上になってコトを終えた。けれど、それで終わりではなかった。
彼女はしなびたわたしをつまむと、ふたたび口にふくみ舌をうごめかせる。その感触で大きくなると、今度は馬乗りになって自分で導いてきた。
わたしの上で乳房を揺らしながら喘ぎ悶える東京の女。その貪欲さと淫乱さに驚きつつも、わたしは2発目を放出したのだった。
いまにして思えば、一人で旅をするのは、わたしのような男をつかまえ、一夜のアバンチュールを楽しむためかも知らない。
彼女に会うことはできないが、わたしはあの店にいまでも通っている。口コミやネットで評判がひろがり、ときには満員で入れないこともあるが、それでもカウンターに席を取ったときは至福の時間を過ごしている。もちろん、その女性とは会っていないが。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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