Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【女子の先輩に強要された初体験】
A・Y 57歳 埼玉県在住
高校時代は陸上部に所属していた。しかし我が校の陸上部は部員も少なく、これといった成績を残すこともない弱小クラブだった。
グラウンドのスペースも制限され、部室も手狭だったので男女に分けられることはなく、練習はいつも混合で行われていた。
だから、たとえ女子の先輩でも後輩は絶対に服従。しかも女子の中には例外的に、県下でもトップクラスの短距離ランナーが在籍していた。
自然に女子部員の方が、男子部員よりも立場が上という状態だった。
そのトップクラスランナーの名前は美智子といった。
中学時代から県の陸上界で名をはせ、私立高校からの誘いも多くあったという。けれど彼女の両親は、進学校であり、かつては女学校だったわたしの通う高校をすすめ、美智子先輩もそれにしたがったらしい。
成績も優秀で、勝気な性格とボーイッシュな面立ちが女子生徒のあこがれとなり、美智子先輩には取り巻きも多く見られた。
「なんだよアイツ、胸もペッタンコだし、色気もねえし」
「そうそう、女の子は陸上なんてしないで、お茶とかお花とかしとけばいいんだ」
そんなふうにやっかみを言う男子部員もいたが、わたしはカモシカのようにスリムな身体でグランドを疾走する彼女に、少なからず好意をいだいていた。
狭いスペースなので、着替えも男女は同じ部室で行われる。もちろん同時ではなく、立場の関係上、女子が先、男子があとというしきたりになっていた。
「あ~、女くせえ!」
「ナプキンでも捨ててるんじゃねえか。オリモノくさいぞ」
先輩たちは、鬱憤を晴らすかのように言う。そして1年生は使い走りに加え、先輩に出会った時はどこでも大声で挨拶を強いられる。試合のときには荷物運び。それがイヤで退部した部員も多くいた。
月日流れ、夏休み目前となり、3年生は受験準備のため、引退することになる。けれど、インターハイへの出場が決まっていた美智子先輩は、大会が終わるまで延期。
そのころから、一人で練習をくり返す美智子先輩の表情が、暗くくもりがちなのをわたしは知った。
休み前の期末試験初日。期間中は、どのクラブも自主練習をのぞいて活動を中止する。
その日の夕方、急に1年上の先輩から電話がかかってきて、練習着の洗濯を命じられた。わたしは仕方なく、しぶしぶ部室へ取りに出かけた。
天気はよく、自転車をこいで学校に向かったが、突然夕立がふってきた。馬の背を分ける大雨で、あわてて自転車を停めて部室に飛び込むと、電気も点いていない部屋の中に人影を見つけた。
それは美智子先輩だった。
先輩は着替えの最中だった。彼女も急な土砂降りにあったらしく、全身びしょ濡れ。ランニングシャツやトランクスが肌に貼りついていた。
「す、すいません!」
わたしは先輩に背中を向け、急いで部室を出ようとした。
「待って」
そんなわたしを彼女は呼び止める。
「まだ、雨はやんでいないわ。いま外に出ると濡れネズミよ」
「け、けど」
「中にいらっしゃい」
それまで耳にしたことのない、やさしくて、そしてどことなく妖しげな声色だった。
わたしは緊張しながら、ふたたび部室に足を踏み入れようと振り向く。その途端、わたしは思わず身をひるがえして、また背中を向けてしまった。
「どうしたの?」
先輩はたずねる。
「い、いえ……」
「そんなところに立っていないで。遠慮しないで」
美智子先輩は下着姿だった。しかも素肌をかくすこともなく、わたしの方にさらけ出していた。
雷が鳴りひびく。閃光が暗い部室に差し込む。
わたしは、おそるおそる先輩を見た。美智子先輩は胸もとをおおっていたブラジャーもはずし、両腕を組んで乳房をかくしてわたしをじっと見つめていた。
わたしは何を言うことも、何をすることもできなかった。ただ降りしきる雨音を聞き、雷鳴を耳に受け、フラッシュのようにまたたく青白い光の中にたたずむ美智子先輩を見るしかなかった。
「わたしは女。そうよね?」
突然先輩はいった。
「みんなからカッコイイとか、すごいとかいわれるけど、本当は一人の女の子。恋だってしたいし、男の人と抱き合いたい」
わたしは、彼女の言っている意味が理解できなかった。けれど、美智子先輩はそんなことに構わず、わたしににじり寄ってくる。
「見て」
美智子先輩は胸乳をかくしていた両腕をはずした。そこには、つつましやかだが、形のいい、白い乳房がこんもりと盛りあがっていた。
ふたたび雷鳴が鳴りひびく。雨はやみそうにない。空間が遮断され、二人だけの世界が構築される。
「調子が悪いのよ、彼氏と別れてから」
「いたんですか、恋人」
「そうよ。けど、わたしがいけなかったのね。記録が伸びないジレンマ、期待されるプレッシャーを全部彼氏に押しつけたから」
「押しつける?」
「すっごくね、抱かれたくなるの。ううん、抱かれるんじゃなくて、組み伏してむさぼりたくなるが正解かな。何度も何度も求めて、好き放題、彼の身体をオモチャにするの」
わたしは、自分の存在する世界が信じられなかった。現実世界からいつの間にか飛翔してしまい、夢の中にいるような錯覚におちいった。
「そんなわたし、淫乱なわたしに飽き飽きしたのね、彼は。でも、おかげで発散ができないの。まるで長く便秘してるみたいに、スッキリしないの」
彼女はいつの間にか、わたしに身体を密着させ、首に腕をまわしてくる。
「ねえ、先輩の命令、聞いてくれる」
「え……」
「君を好きにさせて」
「好きに……」
「そう、好きにするの。わたしが君を」
近くに雷が落ちたのか、轟音がひびきわたる。部屋の中が一瞬明るくなり、妖艶な彼女の顔がはっきりと浮かびあがる。
その表情はいつものように凛としたものではなく、ひとみはうつろで、唇もゆるい。陽に灼けた褐色の肌に白い胸もと。そのまま彼女はひざまずくと、わたしのズボンと下着をおろした。
「や、やめてください」
「いまさら、なにを?」
「け、けど」
「先輩の言うことは絶対服従でしょ」
「それは、時と場合に……」
「グダグダいわないの」
先輩はいきなりペニスをほお張り、舌を絡ませてくる。わたしの身体には、ねっとりとした快感のみが流れて巡回する。
あこがれも好意も、この場では払拭される。ただ、一人の女になすがままにされる自分が立ちすくんでいるだけだ。
「あああん、大きくなってる、ああん、ステキ」
わたしはすぐにでも暴発しそうだった。しかし、この感触を少しでも長く甘受したい。
わたしはそのために、耐えた。耐えて、耐えて、耐えきったが、とうとう我慢の限界をおぼえ、そのまま美智子先輩の口の中に吐き出してしまったのだった。
「くぅ、んく」
先輩はわたしのザーメンを飲み込んでくれた。そしてニッコリとほほ笑む。
「おいしいわよ、君の精液。女の子に出すのは初めて?」
わたしは黙ってうなずく。
「そう、じゃあ、雨がやむまで、君はわたしのオモチャ」
美智子先輩はそういって、わたしを部室のベンチに座らせた。そして自らパンティを脱ぐと、わたしのシャツも脱がせる。
一度の射精ではペニスもしなびようともしない。美智子先輩は惚けた状態で座りこむわたしの上に、大きく脚をひろげてまたがった。
「中には出さないでね。イキそうになったらいってね」
そういってわたしを導いてくれる。
「挿れるわよ」
ぬるりとわたしの全部が埋没した。先輩は身を揺さぶり、わたしの上で躍る。その姿を見つめながら、わたしは内部の締まりとぬめりに恍惚となる。
「ああ、先輩」
「いやああん、いい、気持ちいい!」
「先輩、先輩」
「もっと、もっと突いて、下から突き上げて!」
わたしは先輩の身体を持ち上げるように腰を振った。先輩は喘ぎ、悶え、背中を反らせる。
「やあああん、これよ、こんなのが、あああん、ほしかったの」
「ああ、もう、先輩」
「イクの? いいわよ、イッテも」
「で、でも」
「も、もういいの、中で出してもいい。やあああん、わたしも、もうダメぇ!」
彼女の体重で抜き出すこともできず、わたしはそのまま、ほとばしりを放つ。先輩は、ぐったりと力を抜き、わたしにおおいかぶさってくる。
「ありがとう、これでがん張れる」
その日から先輩の表情はもとの明るさを取り戻し、インターハイでは見事優勝を勝ち取った。
やがて、秋が来て、冬になり、卒業シーズンが到来した。
卒業式が終わり、3年生を会場から見送る際、美智子先輩と目が合った。彼女はウィンク一つ残し、わたしの前から姿を消した。
その表情は、いまでも忘れることができない。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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