Catch Up
キャッチアップ
このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【兄が助っ人をしてくれて無事に挿入】
I・S・60歳・大阪府在住
初体験は18歳のとき。高校卒業と就職の祝いに、5つ上の兄貴が連れて行ってくれた売春宿だった。
「最初はな、素人よりプロのほうが色々教えてくれるし、ちゃんとしてくれるからエエんや」
兄はそういって、新地と呼ばれる料亭や小料理屋が並ぶ通りにゆうゆうと入っていく。わたしはそのあとに従いながら、きょろきょろとあたりを見まわした。
料理屋といっても看板だけ、いわゆる昔でいう赤線地帯。外から品定めできる場所に女の子が座り、バアさんがこっちこっちと手招きする。
「そこのお兄さんら、寄ってってよ。若い子、いてるで」
薄い明かりに照らし出された女の子たちは、濃い化粧をして所在無く座っている。香水の匂いが辺りに充満し、それだけでわたしの股間は熱くなる。
「おい、何してんや。コッチや」
周囲の様子に気をそらしていたわたしは、いつの間にか兄と遠く離れていた。慌てて駆け寄り、となりに並ぶ。
「エエか、若い子もエエけど、初めてのお前には荷が重過ぎる。トルコとか違て、ここの女の子は素人同然や。脚開いて『さあ、どうぞ』ていわれたら、勃ってたもんもちぢんでしまうやろ」
「そんなもんかな」
「そんなもんや。その点、そこそこのベテランは、初めての男を大事にしてくれる。まあ、熟女の深情けていうやつやな」
「そ、そやけど、あんまりオバはんは」
「その辺は心配すんな。ベテランていうても30前後や。脂の乗り切った一番熟れごろや」
18歳のわたしにとって、30前後といえば、十分年を食った部類に属する。それでも兄のカネで遊ぶ手前、文句は言えない。
「ここや」
しつこく声をかけてくるバアさんたちを振りほどき、兄が到着したのは、ほかの店とあまり変わらないたたずまいをしたところだった。
「きたで」
「いやあ、久しぶりやないの、どないしたん」
「どないもこないもあるかえ、きたらアカンのかぇ」
「そんなこというてへんやん。あれ、今日はお連れさんといっしょ」
「おう、オレの弟や。今度、高校卒業してな、仕事も決まったさかい祝いや」
「それは、おめでとうさん」
バアさんというよりは、デブった中年という風のオバさんがいう。わたしは微かな会釈を返す。
「しかもな、女、抱くの、今日が初めてや」
「それはそれは、それやったらエエ子、あてがわんとな」
「相手はオレが決める。アケミちゃん、おるか」
「ウチもそれ、思てたんよ。あの子やったらあんじょうやってくれるわ」
「オレには若い子、頼むわ。ピチピチの乳のデカい子、頼むで」
わたしは緊張をおぼえた。もちろん、この一画に足を踏み入れたときから、いや、兄が女を買いに連れていってくれると言ったときから、緊張はおぼえている。しかし、いざその場所に到着し、しかも相手の名前までわかると、思いはより現実となり、不安の入り混じった極限の気分を味わった。
「ほな、お兄さんはこっちで待ってて、弟さんはこっちへ」
兄は待合の椅子に座る。わたしは暖簾に隠された奥へと連れて行かれる。その瞬間、わたしは少し泣きそうな気分で兄を見た。兄は薄ら笑いを浮かべ、拳を突きあげた。
「アケミちゃん、お客さん」
「はあい」
オバさんが声をかけると、狭い階段を降りる足音が響いた。そして、姿を現したのがアケミだった。
「この子、今日が初めてなんやて。あんじょう頼むで」
「へえ、ホンマぁ」
アケミは色の白い女性だった。手足が長く、細身の体躯で、長い髪をひとつに束ねて背中にたらしていた。目元は切れ長で涼しく、唇はおちょぼで鼻も小さい。古風な日本的美人といった容貌だ。
「ほな、こっちへ」
アケミにうながされ、わたしは急な階段をあがる。そして、ベニヤ板を貼りつけただけの扉を開いた。
そこは3畳ほどしかない狭い部屋で窓はなく、裸電球がひとつぶらさがっているだけだった。となりの部屋とはふすま1枚でさえぎられただけ。すでにコトにおよんでいる右隣の声と息、肌や粘膜のこすれ合う音までも聞こえてくる。
「さ、服脱いで、ここに寝て」
言いながら、アケミは自分も裸になる。わたしは言われるがままシャツを脱いで、ズボンと下着をおろし、押しつぶされたせんべい布団の上に横たわった。
「なんや、元気ないやん」
全裸のアケミは、わたしのそばで横座りになって言う。わたしは極度の緊張にさいなまれ、興奮するどころではなかったのだ。
「時間、もったいないよ」
やさしい声でアケミは言ってくれた。わたしはうなずき、彼女を見る。冷たい印象を与える表情だが、笑顔はやわらかい。それに、着衣のときの印象よりも肉づきはよく、胸のふくらみも豊かだ。
見つめるわたしと視線を交わしながら、アケミは一物をつまみ、しごきはじめた。ヒヤッとする感触と、摩擦で少しは力がこもりはじめる。
「おっぱい、さわってもエエよ」
アケミはわたしの手を乳房にいざなってくれた。
柔軟な胸乳が手のひらに吸いつき、力を加えると指が食い込む。アケミの動きは、早く激しくなり、わたしも緊張の糸がほどけはじめるのを知る。
「ちょっとはましになってきた。そやけど、挿れられへんね」
「すいません」
「しょうがないなぁ。ホンマはね、ウチ、お客さんにここまでせえへんねんよ。そやけど、かわいそうやもんね」
アケミはそう言って垂れた髪の毛をかきあげると、前かがみになって一物を口に含んだのだった。
ぬるりとした感触と温かさが、わたしを包み込んだ。そして、まとわりつく舌のうごめき。
これまでにない快感に、一物はぐんぐんふくらみはじめる。するとアケミは、頭を振って抜き差しをはじめる。わたしの股間は、これまでにないほど膨張し、アケミの口の中いっぱいになった。
「う、うん、ふぅう、はあ」
しばらくわたしをしゃぶっていたアケミは、吐息を漏らして顔をあげる。
「苦しい……。アンタの、大きいんやね」
「そ、そうですか」
「いままでいっぱい見てきたけど、こんな大きいのん初めてやわ」
普段はさほどではない。風呂屋に行ってほかと比べてみても、立派だとは思わない。けれど、膨張率が高いらしく、確かに自分でも驚くほど、モノはビンビンにそそり立っている。
アケミがよろこんでくれるものとばかり、わたしは思った。それは、女性が大きい一物を欲するとばかり信じていたからだ。しかし、現実は違う。
「大丈夫やろか」
わたしにゴムをかぶせながら、不安そうな表情でアケミは言う。
「ウチのアソコな、狭いねん。こんな大きいのん、入るやろか」
「そんな」
わたしは泣き出しそうな気分になる。ここまできて中断されれば、ヘビの生殺しもいいところだ。
「思い切り、脚ひらいたら大丈夫かも」
わたしを不憫に思ったアケミはいう。そして、布団の上であお向けとなる。わたしはアケミに覆いかぶさり、一物の先をあてがう。アケミは自分で太ももの裏をかかえ、これ以上ないほど両脚をひろげてくれた。
「こ、ここ?」
「違う、もっと下」
「ここ?」
「い、痛い! 違う!」
なんとなくぐにゃりとした部分に当てても、するりと埋没してくれない。あせりがよけいに、挿入をむずかしくする。
「もう無理やよ。手でしたげるさかい」
「え……」
「おカネも、半分でエエから。な、あきらめいて」
そのときである、突然ふすまが開き、左隣の部屋の客が入ってきた。驚いて相手を確認すると、それは兄だった。
「オレに任せとけ!」
兄はそう言うと、アケミを四つんばいにする。そして、わたしの一物を握ってアケミの秘部に押し当てた。
「そのまま、思い切り、突き入れい!」
言われるがまま、腰を押し込む。すると、メリメリという感触とともに、根もとまでアケミの中にはまってしまう。
「あ、あああああ! す、すごい、こんなん、初めて!」
アケミの内部は、窮屈でいてなめらか。抜き差しを続けるたびに粘液がにじみ出て、よけいに動きがスムーズになる。
「あ、あ、あ、あ。こ、こんなん、いや、こわれる!」
最後は正常位になった。アケミの部分は十分濡れているので、挿入も簡単だ。激しく腰を振り突きたて、わたしは無事、男になった。
帰り道、兄はわたしに感想を求めた。わたしは、うまく自分の感情を説明できずにいた。
「まあ、初めてやさかいな。あっという間やったやろ。そやけど、お前のチンポ、デカいなぁ」
わたしは恥ずかしさで頭をかく。そして、貴重な体験をさせてくれた兄に、感謝をするばかりであった。
【選者紹介】
長月タケオ(ながつきたけお)
1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)
ほか
長月タケオ『誘惑する女 熟女たちの悦楽』
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