Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【心に傷を残した淫乱な叔母からの筆おろし】
Y・K 72歳 大阪府在住
早いヤツなら15、6、遅い者でも20歳には初体験を迎えていた。高校時代はうらやましい思いが大勢をしめ、30手前になると、それぞれがそれぞれの体験を多少の誇張も加えながら口にする。
そんなふうに、友人たちが集まると、誰とどのような状況で筆おろしをしたのか花が咲いた。
「ところで、お前はどうなんだ?」
「お、オレか、オレはまあ、普通だ」
「なにが普通なんだ?」
「いや、それは……」
「お前、まだ童貞なんだろ」
結婚もしていなかったころは、そういって冷やかされ、今の女房と一緒になると新婚初夜イコール初体験だと、これもまた冷やかされる。
しかし、わたしは10代のころに童貞を失っていた。とはいうものの、それをあからさまにするのははばかられる。なぜなら、わたしの童貞は年上の女に無理やり奪われた。しかも、その相手は父の妹。つまり、わたしの叔母だった。
わたしの生家は奈良の山村にあった。豪農、大地主というわけではないが、自分の土地を自分で耕し生計を立てる、先祖代々の土地に根付いた、そこそこの名家だった。
何不自由なく育てられたわたしは学校の成績もよく、兄と姉も同じ。しかも姉は村でも1、2を争うほどの美人と評判が高く、母親も隣村の名家から嫁いできた、これも気品のある麗人で有名だった。
わたしが高校2年の年、桜の花が散る頃から気温がさがりはじめ、夏になっても肌寒い日がつづいた。そのうえ梅雨の降水量が少なく、稲穂は実りを迎える前に次々と枯れてしまうありさまだ。少しでも自分の田んぼに水を引こうという村民の思惑が先走り、水利の問題で村中が紛糾した。
秋になると、父は来年までの生活費として多大の借金をかかえ、よそから米を買うという、いままで経験したことのない事態におちいった。
「どないするんです、これから」
母は不安を口にする。
「なんとかなるやろて」
父は平然と答える。
「アナタはいつもそう。なんとかなるって、そればっかし。来年も同じ調子ならどないするんです」
「そやから、来年のこと、いまから気に病んでもしょうがないやろが」
「わかりました。そやけど、これだけははっきりさせてください。昨日、1通のお手紙が届きました。悪いと思いましたけど、中を改めました」
「え!」
「きれいな字、お書きになる人ですね。大阪に用事があるってすぐにお出かけになりはるけど、ほんまはこの人に会いに……」
父には愛人がいた。生活に余裕があるときは母も見て見ぬ振りをしていたのだが、逼迫するとそれどころでなくなる。お嬢さん育ちの母にとって、借金や近所との揉めごと、そして将来への不安は精神的に追い詰められる要因になっていた。
悪いことはつづくもので、未婚の姉が妊娠してしまった。相手は村の青年だという。ウチとは比べものにならない零細農家で、もちろん父は結婚に大反対。家に来て土下座してわびる青年を足蹴にし、姉を奈良市内の親戚にあずけ、胎児を闇に葬った。
姉のことが一段落したと思うと、今度は兄がケンカで大ケガをし、意識不明の重体となる。このときばかりは普段、信心深くない父も仏壇に手をあわせ、菩提寺の住職を呼び、氏神である近所の神社へ参るようになった。
そんなとき、叔母が舞い戻ってきた。
叔母は結婚するまで、わたしたちと同居していた。確か父より8つ年下だったと記憶している。
叔母が嫁いだのは、わたしがまだ幼かった頃なので、その容姿を明確におぼえていない。ただ、近所の大人連中や兄から、色気のある美人だったということは耳にしていた。
叔母はほとんど、駆け落ち同然で家を出ていた。相手は大阪の北摂に住む公務員で、叔母と知り合ったときは、すでに妻帯者だった。
その男が仕事の都合で村にやってきたとき、叔母の方が夢中になって強引に口説き落とし、無理やり離婚させる。そんな経緯があったので式も満足に挙げず、親戚付き合いもいっさい途絶えていた。
そんな叔母がなんの前触れもなく、実家であるわたしの家に戻ってきたのだ。
「なにしに帰ってきた」
仏間で叔母を前にし、険しい表情の父はいった。
「別れたん、そやから」
叔母は、悪びれた様子も見せずにいう。
「別れたって、離婚したってことか」
「離婚はもっと前にしてたんやけど」
「相手の男はどないした」
「さあ」
「さあ?」
「長い間、別々に暮らしてたから」
わたしはふすまの隙間から中をのぞき、父と叔母のやり取りをながめ、聞き耳を立てた。
なんでも叔母は夫以外の男と深い関係におちいり、それが発覚して不仲になる。離婚をしてからその男と暮らしていたものの別れてしまい、行くあてもなくなって戻ってきたらしい。
「そやからね、しばらく養ってもらおと思て」
「なにをずうずうしい。親父やお袋の葬式にも顔、見せへんかったくせに」
「連絡、くれへんかったやん。ウチ、さびしかったわ」
わたしは父と向き合う叔母の横顔をながめていた。歳は40近かったはずだが、村の女性にはない華麗さがそなわっていると感じた。
「のぞき見してどないすんの。子どもの見るもんとちゃうやろ」
いつの間にか、わたしのうしろに立った母がいった。
「おばちゃん、一緒に暮らすん?」
「さあ」
わたしを追い払う母は、はっきりと答えなかった。しかし、その表情には、明らかに嫌悪の影が浮かんでいた。
父とどういう相談をし、許しを得ることができたのかわからない。けれど、その日から家の離れをあてがわれた叔母は、そこで生活するようになった。
長く都会で暮らしていただけあって、叔母の立ち振る舞いは垢抜けていて派手だった。身につけているものも色あざやかで、しかも肌の露出が多い。買い物や散歩で外に出ると、村の若い連中が好奇の目で叔母をながめ、中にはあからさまに声をかけてくるものもいた。
叔母はそんな連中を毛嫌いせず、それどころか父や母の目を盗んでは、離れに連れ込んでいたようだった。
そのころの両親は、叔母のおこないを責める余裕がなかった。
奈良市内の姉は堕胎のダメージから精神を病み、親戚宅から1歩も外に出ない日がつづいているという。兄は相変わらず意識が戻らず入院したまま。父は父で愛人との関係を継続し、借金で生活を成り立たせているにもかかわらず、月に3度は大阪に出て逢瀬を楽しんでいた。
母はやつれ、わたしに当たるようにもなっていた。もしくはわたしの目前でさめざめと涙を流し、実家へ帰りたいと漏らしたこともある。
冷夏に続いて、その年の冬は寒さが厳しく、今まで見たこともないような量の雪が積もった。母は気を病んで床に伏せ、父も外出がままならないので酒ばかりを飲む。酔うと兄や姉の不幸にはじまり、生活の困窮、将来への不安、悪天候の原因さえ母のせいにする。
わたしはいたたまれなくなったが、どこに行くこともできないのでじっと我慢していた。そんな状況下にあっても、叔母は村の男を引き入れ、楽しくやっているようだった。
やがて冬が終わり、春になった。雪は溶けはじめ、おだやかな気候が訪れた。
しかし我が家は最悪な状態のまま、父は酒びたりで母親に暴力を振るい、母はとうとう床から起きあがれなくなり、兄も姉も容態は好転しない。
わたしは陰うつとした気分で部屋に閉じこもり、いっそのこと死んでしまおうか、とすら考えていた。
そんなとき、突然叔母がわたしの部屋をたずねてきた。
「なに? このどんよりとした空気」
叔母はそういって、庭に面した部屋の窓を開けようとする。
「開けんな!」
わたしはきつい口調で叔母を制する。
「なんやねん、大声出して」
叔母は身をひるがえし、わたしの前に座った。
「なんの用や」
「用なかったら、来たらアカンの?」
「アンタ、いったい、なんのつもりや」
「なんのつもり?」
「そうや、毎日、毎晩、村の男連れ込んで。なんのつもりや」
「知ってんの?」
「わかるわ」
「そやろな。そやけど、ウチのしてることは悪いん?」
「エエこととちゃうわ」
「なんで? みんな、うれしがって帰っていくで」
叔母は薄い笑みを浮かべ、わたしをのぞき見る。
「家がいま、どういう状況か知ってるやろ」
「大変みたいやな」
「他人事みたいにいうな」
「他人とは違うけど、ウチには関係ないやん。お兄ちゃんが酒びたりになるのも、義姉さんが病気になるのも」
その言葉を聞いて、わたしはすっくと立ちあがった。
「お前が全部悪いんや。お前が来てから、悪いことばっかり立て続けに起きる」
「ウチのせいていうのん?」
「そや、お前は家の疫病神や」
叔母はわたしの剣幕にひるむことなく、静かに話す。
「そうなん? ウチがここにおったら、悪いことばっかし起きるん?」
「そやないか、兄貴のこともお姉ちゃんのことも」
「それはウチが来る前から……」
「もう、なんでもエエねん!」
わたしはそれまでのうっぷんが急に噴出し、涙を流して訴えた。
「なんでもエエねん、もう今を、今の状態をなんとかしたいねん」
「どうやって?」
「わかれへん、わかれへん。そやからオレ、オレ、もう……」
わたしは泣き伏した。叔母はわたしの背中をやさしくさすってくれる。
「そやろなぁ、こんな家におりたないわな。そやけど出て行くあてもない。そやろ」
わたしはむせびながらうなずく。
「そやなぁ、ウチはこの家のこととかなんにもでけへんけど、一瞬だけでも忘れさしちゃることはできるで」
「え?」
わたしは顔をあげる。
「女、抱いたことある?」
わたしはあ然と叔母を見る。
「気持ちエエねんで、いらんこと全部忘れることできる」
叔母はそういって服を脱ぎはじめた。わたしは、いったい何がはじまるのかと、叔母を凝視するしかない。
叔母は身につけていたワンピースの胸もとを大きくひろげ、ブラジャーをたくしあげる。胸乳をあらわにした叔母は、わたしの手を取って乳房に押し当てた。
「どう?」
妖しくほほ笑む叔母。わたしはとっさに手を引っ込める。
「や、やめて……」
「遠慮せんでエエのに」
「やめてくれ」
「ほら、気持ちエエねんから。いやなこと全部忘れられるから」
叔母はわたしに覆いかぶさってくる。わたしはあらがうが、全体重をかけてのしかかってくる叔母を押しのけることができない。
叔母の乳房が顔面に押し当てられる。わたしはもがきながら、なんとか逃れようと考える。しかし意に反して、叔母のやわらかな感触と甘い匂いに下半身は熱を帯び、陰茎が隆々と頭をもたげる。
「大きなってるやん。ほら」
叔母はわたしのズボンをおろし、パンツを脱がし、屹立した部分を握った。
「やめて、やめてくれ」
「なんにもせんでエエから、全部、ウチがしちゃるから」
叔母は、わたしに覆いかぶさったまま下着を脱いだ。そしてわたしの股間にまたがると、まだ潤いの少ない自分の部分に一物をあてがう。
「頼む! やめてくれ! お願いや!」
「すぐに気持ちようなるから。中に入ったら気持ちようなるから」
叔母はわたしの先端で肉の裂け目をまさぐり、やがてめり込ませるように奥深くまで納めていったのであった。
「ほら、全部入った」
わたしは、股間に伝わる熱と潤みと粘りを感じ取った。叔母は最初ゆっくり、やがて激しく抜き差しをはじめる。
「ど、どう? 気持ちエエ?」
「やめてくれよう、頼むから、やめて」
「女の子みたいなこといわんといて。あん、ウチも気持ちいい!」
舌なめずりをし、自ら乳房を揉んで喘ぐ叔母。わたしは心地よさを感じる反面、父親の妹に犯されているという、おぞましさをおぼえる。
「うん、固い、若い子のんは固い」
「やめてくれよう、お願いやからやめてくれよう」
「あああん、届いてる、あああん、イイ、気持ちイイ!」
叔母の動きは大きくなり、部分からは愛液があふれ、抽送をスムーズにする。わたしは精液の塊が暴発するのを我慢できず、そのまま叔母の内部にほとばしりを放ったのであった。
叔母に性交を強要されてから、わたしの気分はますます暗く落ち込んだ。叔母は2度とわたしを求めようとはしなかったが、村の男の一人とねんごろになり、書置きも残さず姿を消した。
叔母がいなくなってから事態は急変した。
まず、兄の意識が戻った。その報せを受けた父は涙を流してよろこび、酒もやめた。
つづいて姉が戻ってきた。しかも一人ではなく、姉を孕ました男と一緒に。彼は家の土間で土下座し、姉との結婚を願い出た。父は最初許さなかったが、男のしつこさに根負けして結婚を認めた。
兄は医者が驚くほどの早さで回復し、農作業をおこなうようになった。春になり、初夏を迎えるころには、前の年と比べものにならないほど気温はあがり、それでも豪雪のおかげで水はふんだんにある。夏が来て、秋がおとずれると予想以上の豊作で、しかも昨年の不作で米の値段はつりあったままだから、借りたカネを返しても余裕が残るほどの収入がもたらされた。
兄が帰ってきたのと同時に母も快癒し、父と愛人の関係も清算された。しかも、2度と子どもを産めないといわれた姉に子宝がさずけられた。
すべてが以前どおり、いや、以前以上に整った。しばらくのち姉は玉のような男の子を産み、孫ができた父は好々爺となった。
その後、叔母からはまったく音沙汰がなかった。どこでどうやって生きているのかもわからない。けれど、わたしの心に深い傷を残したのは確かだ。
しばらくは、叔母の淫靡な姿を思い出してうなされることもあった。大学時代に機会があっても、女性を抱くことはできなかった。それは、結婚して妻と初めての夜を迎えるまでつづいた。
恨みはしたが、今となっては仕方がない。叔母はたぶん、もうこの世には存在しないだろうから。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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