Catch Up
キャッチアップ
このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長
【生徒の母に誘惑された新米教師】
H・M 63歳 埼玉県在住
わたしが教職について、まだ日も浅い40年前のこと。クラスにとんでもない不良がいた。中学生だというのにタバコは吸う、他校の生徒とケンカはする。挙句の果てには気の弱い同級生から金品は巻あげる。父兄からも文句が出、わたしも何度か本人を呼んでいさめた。しかし、わたしもまだ新米の若造。不良生徒は舐めてかかって、わたしの言うことなど聞き入れてはくれなかった。
そんな彼がとうとう、学校にも来なくなった。わたしは、どうにかしなければと思う反面、厄介者が片付いたようで安堵もした。しかし今と違い、当時不登校といえば大事だ。教頭から教師としての資質を問うような注意が繰り返され、仕方なくわたしは、その不良生徒の家におもむくこととなった。
彼の母親は有名な服飾デザイナーで、父親は早くに他界していた。母一人子一人ながら裕福な生活を送り、とてもじゃないが息子がグレるなど考えがたい。
それは母親本人も感じるところだったのだろう。親からも注意してもらいたくて、何度も学校へくるよう電話でうながしたが、忙しい、時間がないの一点張り。そして「何一つ不自由をさせていないウチの子どもが、不良になんかなるわけがない」と言い張っていた。
そんな母親の住む豪奢な屋敷に到着し、わたしは呼び鈴を押した。姿を見せたのは母親本人だった。
「あの、私……」
わたしは自分の名前と息子の担任であることを告げる。
「なんの御用かしら?」
「実は息子さんのことで」
怪訝な表情を浮かべながらも、母親はわたしを家にあがらせてくれた。
住まいは親子二人が暮らすのに十分すぎる広さを持ち、高価な調度品や電化機器が整然と並べられていた。
わたしは応接間に通された。本革のソファーは腰が埋まるほどやわらかく、手触りもなめらかだ。母親はわたしの向かいに座り、最初は笑みを浮かべて対応してくれた。
「で、宅の息子が何を?」
「いえ、実は」
わたしは不良生徒の全部を洗いざらい話した。そして、ここ数日は登校してこないことも告げる。すると母親の表情はにわかに曇り、眉をつりあげて言い放った。
「そんなわけありません。だって今日もきちんと制服を着て、カバンを持って家を出ましたから」
「しかしですね、現実、授業には顔を見せていないんですよ」
「それがもし本当なら、学校に問題があるんじゃないですか」
「え?」
「あなた、おいくつ?」
「わたしですか、23です」
「お若いわね。大学は?」
「N大です」
「私立の二流ですわね。学歴もない新米教師が担任だなんて……」
わたしは憤りをおぼえた。しかし、母親は平然と脚を組んでわたしを見くだす。
「とにかく、本当のことは息子から聞きます。もし、あなたの言うことが本当なら、わたしが立ち直らせて見せます」
「そうしていただけると、ありがたいです」
わたしは言い捨て、席を立った。母親はソファーから立ちあがろうともせず、わたしを見送ろうともしなかった。
「先公よぉ、母親に何言ったんだよ!」
次の日、わたしは校舎裏に呼び出され、例の不良にすごまれた。
「何をしても、それはオレの勝手だろ。母親は関係ないだろ!」
「いや、しかし、未成年のあいだは」
「ごちゃごちゃ、うるせえんだよ!」
いきなり不良の拳がわたしの顔面をとらえた。鼻から血が滴り落ち、わたしは思わず前のめりになる。その瞬間を、偶然通りかかった体育教師が見つけた。
「何してるんだ!」
腕におぼえのある体育教師は不良を取り押さえ、彼はそのまま教員室へ連れて行かれた。
教師に暴力を振るったということで、当然、唯一の保護者である母親が呼び出された。最初、彼女は高慢な態度をとっていたが、生活指導や教頭、そして他の教師連中が息子のこれまでをつぶさに伝え、不良生徒も認めると、母親の態度が一変したらしい。
「本当に、なんてお詫びをすればいいのか」
保健室で治療を受け、ベッドで寝ていたわたしに母親はいった。
「いえ、わかってもらえれば」
「この前も失礼なことを申しあげまして。ただ」
「ただ?」
「なにぶん、このことは学校内で収めていただきたいと」
つまり、彼女はゴシップになることを恐れたのだ。
女性が社会で活躍することの少なかった時代。息子が不良だということがわかれば、マスコミで格好の標的になる。これまで築いてきた名誉や地位を失いたくなかったのだろう。
「なんでもしますから。お願いします」
頭をさげる母親。わたしはうんざりしながらも、承諾するしかなかった。
それでも彼は登校してこなかった。わたしは、ふたたび母親を訪ねた。彼女は前のときと打って変わって、しおらしい態度で接してきた。
「ホント、どうしていいかもう、わからないんです」
「お困りなのはわかりますが、もう少し気をかけてあげれば」
「でも、仕事がありますし」
そのとき、彼女のわたしを見る目がキラリと光ったような気がした。
「先生がわたしの代わりに、なんてどうかしら?」
「え? おっしゃっている意味が」
「だから、わたしが帰ってくるまでのあいだ、息子の面倒を見てもらえないかと」
「いや、いくら担任とはいえ、個人的には……」
「主人をなくし、女一人で頑張ってきて、それでいいんだとばかり思っていました。でも、その考えが間違ってたんですよね」
「わかってもらえれば」
「先生、わたし、生まれ変わります」
「それは何より」
「その前に」
彼女は席を立ち、わたしのとなりに腰かけた。
「わたし、さびしいんです。慰めてくださいませんか?」
「え! え!」
「殿方が恋しいんです。それさえ満足できれば、もとの母親に、もとの女に戻れます」
そういって彼女は、わたしの股間に手を伸ばしてくる。そして、いきなりわたしの唇をふさぐ。若かったわたしは、それだけで理性のたがをはずしてしまう。
「先生、わたしのような女は、お嫌いですか?」
「い、いえ、そんなことは……」
「じゃあ、お願い」
「お願いといわれても」
「これでもですか?」
彼女はスックと立ち上がり、衣装を脱ぎはじめる。白昼、明るい部屋の中で裸体をさらし、誘惑する生徒の母親。
「どうですか? わたしは醜い……」
「いえ、けっしてそんな……」
「じゃあ、わたしを抱いて。わたしを一人の女と認めてください」
母親はひざまずき、わたしの下半身に手を伸ばす。そしてズボンと下着をはがし、うなだれたペニスに手を伸ばす。
「ああ……、ご立派。久しぶり」
彼女はうっとりとした目でつぶやき、やがてわたしをほお張ったのだった。
そのあと、わたしは巧みな技と魅力に負け、生徒の母親と甘美な行為を交わしてしまった。そして、その日から生徒の家に通うようになる。
もちろん、学校に来ることをうながし、生活態度を改めさせ、遅れた勉強をともなうのが表立った理由だが、本当のところは母親のとの行為がやめられなかったのだ。
15の少年の母親は38歳。肌艶は良く、身体のラインも崩れていない。そしてねっとりと貪るような愛撫を、わたしに与えてくれる。
わたしもいきり立った一物で彼女を貫き、その締め付けや蠕動するぬめりを甘受する。豊満な乳房を揺らし、上になって舞い躍る彼女を見つめて恍惚となる。ときにはぴちゃぴちゃといやらしい音を立てて舐ってくる口技に翻弄され、口腔に精を吐くこともあった。
罪悪感をおぼえながらも、わたしは足しげく通い、そして、もともと頭のよかった不良生徒は、勉強の面白さを知って成績もあがりはじめた。
月日は流れ、2月になった。彼は、当初予想されたレベル以上の高校に合格した。
「これも先生のおかげです」
彼は殊勝にいった。わたしはそれを機会に、母親との関係を絶つ決意をした。
「そうね、高校にあがってまで、中学の先生が来るのも変だしね」
彼女は意外とあっさり、別れを受け入れてくれた。
その後、彼女は服飾学校を設立し、いまは、かつて不良息子が校長となっている。もちろん、その学校どこなのかは、ここでいえるわけがない。
【選者紹介】
長月タケオ(ながつきたけお)
1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)
ほか
長月タケオ『誘惑する女 熟女たちの悦楽』
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