このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【一致協力「ＰＣＲ検査とオッサン」の巻】

　突然だが、人生初のＰＣＲ検査をした。大きな会場で行われるイベントの取材に参加することになったのである。私はワクチン接種が1回なので、一応自主的に検査してみることにしたのである。念には念を。この時期、やり過ぎということはない。

　ずっと興味はあったのだ、ＰＣＲ検査。感染者数が激減している今になって、その機会が訪れたのである。1か月前には長蛇の列ができていたＰＣＲ検査場も、今やガラガラ。さあ、いざいざ。ドキドキと足を踏み入れた。

「はいっ、検査ですかー」

　明るい女性スタッフが、マスクをしていても分かる笑顔で迎えてくれる。

「普通なら明日の23時以降になります。お急ぎ便もありますよー」

　もはや居酒屋の「飲み放題もあります」のノリである。なんと明るいのか。素晴らしい！　そして彼女以外に、もう一人私の緊張を解いてくれる存在がいた。私より少し遅れたタイミングで入ってきたオッサンである。金のゴツいネックレスと黒のマスクという圧の強いいでたちをしたその人は

「姉ちゃん、ＰＣＲ検査ここでええんか。えらい空いてるやんけ」

　オラオラ調子で言ってくる。

「はい、普通なら明日の23時以降で、お急ぎなら……」

　女性スタッフは私と同じ説明をしようとすると

「ごめんやで、姉ちゃん」

　途中で遮り、静かに呟いた。

「とりあえず普通で」

　ニヒルに「とりあえずビールで」のノリで、普通のＰＣＲ検査を注文。

　しかも「意外に唾液って量が出ない～」と苦戦する私を横目に、オッサンは秒の速さで必要書類を書き、唾液を採取し、「ほな」と風のように去っていった。

　な、なんかカッコいいやん。アンタやるわね……。私は同じ時間、唾液を採取した同志として、彼に心でエールを送った。

　君のＰＣＲ検査に幸あれ……。

　ＰＣＲ検査場を出て、空を見上げる。眩しいわ。ずっと気になっていてできなかったことを一つやり遂げた充実感。検査の結果はもう少し後だが、検査をしたという安心感で、私も今やたらとテンションが上がっている。やほほい！

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。