このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【熱願冷諦「検温システム・ラプソディー」の巻】

　さて、コロナ禍も2年目になり、百貨店などに入る前の「儀式」がだいぶと定着してきた。儀式とは、まず店頭での消毒。そして店員が、客の額にピッと体温計をかざすor設置されたスマホやタブレットの画面に顔を映し体温を測る、検温システムのことである。

　しかし、あの検温は、どこまでちゃんと測れているのだろう……。私は私が額にかざすタイプで測ってもらったところ「３４.８℃」いう数字が出て、チャラい店員さんに「低すぎて逆にヤバいっすよね！ 大丈夫っすか。まあ、高いんじゃないからいいっすよね」と、すっすすっす言われながら入店したことがある。

　まだ検温システムが浸透していない去年は、こんなシーンを目にした。百貨店の入り口で、あるオジジが、

「３６度７分！　さんじゅーうろくーど、ななーぶ！」

　と朝測ったであろう体温を、設置されたタブレットに向かって叫んでいたのだ。多分、システムを「体温をスマホに向かって自己申告する」と勘違いしていたのだろう。

　しかし、彼が朝真面目に体温を測り、人に迷惑をかけないように気を付けているのは、誰の目にも明らかだった。それゆえ、その場にいた人々は彼の行為を「違いますよ」と否定もせず笑いもせず、「ナイスケア＆ナイスパフォーマンス……！」と頷きながら見送ったのだった。

　さらに、最近でもよく見るのが、前髪を「そこまで上げんでも！」というくらい後頭部に押さえ込み、ガスガスとタブレットに突進、乱れ散らかした前髪のまま笑顔で店に入るシニア。清々しい。

　そして、タブレットに向かって拝むシニアの姿もこれまで数人確認している。体温を測る前に消毒があるので、多くの人がアルコールをつけて両手をスリスリする。その流れで、信心深いシニアはついつい、ちょうど位牌と似たサイズのタブレットやスマホが目の前に来ると、習慣的に深々と頭を下げ、拝んでしまうのだろう。なかには、

「ナムナム……」

　と声に出しているシニアまでいた。

　私は胸が熱くなった。神様仏様ご先祖様、見ていますか、この「ついつい」拝むのがクセになるほど、あなたたちをリスペクトしているシニアの姿を！

　そんな彼らをこれ以上苦しめるなんてどうかしているよＯｈ Ｍｙ Ｇｏｄ。さあ、今すぐコロナ騒動を落ち着かせるのですーッ！！

　心の中でそう叫び、自分の順番に回ってきたとき、やはり手をスリスリさせて、体温を測るタブレットに向かってぺこりと拝んでしまった私であった。

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。