このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【自虐文化「身内は褒めるが同時にサゲるの巻】

　関西シニアの大きな問題。それが「身内のことを褒められると照れて自らサゲまくってしまう」案件。これは本当に厄介である。

　関東の場合は「息子の○○は成績優秀ざーすのよ」とストレートに自慢するイメージがあるが、関西シニアは自虐文化とボケツッコミ文化が混ざり、ものすごく複雑だ。

　知り合いのシニアはお孫さんが関西きっての進学校、灘高校に通っている。褒めると顔はたまらなく嬉しそうだが、口から出てくる言葉は

「なんかの間違いで入りよったわ」。

　孫、あまりにも気の毒な言われ方である。

　別のシニアは、お金の管理をしっかりしてくれている娘さんを自慢しているはずが、自虐を混ぜてしまったがゆえに

「うちの娘お金にキッチリしすぎてケチケチ。ホンマにケチ。ケチ奉行！」。

　娘さん、これまたあまりにも気の毒な言われ方である。

　一対一だとまだいい。３人以上集まると自虐とウケ狙いがヒートアップしていき、大変なことになる。

　この間など、ワクチンを打ってホッとしたっぽいオババグループが４人、喫茶店で話していた。近くの席にいた私にまで丸聞こえである。

「ホンマにうちの息子のボンクラやで」

「うちんとこもボーッとして全然気ぃ利かへん。この間もなんか料理作ってくれたけど（嬉しそうな笑み）下手やねんコレが。材料もったいないっちゅうねん」

「○○さんとこの娘は、東京の企業にお勤めやん。すごいやないのー」

「いややわあ（満面の笑み）。仕事はまあまあアレやけど、マンション、ゴミ屋敷！」

「あらあー」

　満面の笑みがこぼれるポイントが自慢ポイントなのはわかる。が、瞬時にサゲる。その後も延々と自慢とサゲのハーモニーは続いた。

「うちの子賢いから（満面の笑み）余計に言葉キツイねん。鬼やで鬼」

「うちはまあ一応モテるみたいやけど（満面の笑み）性格悪いからすぐフラレよる」

　どないやねん。親の愛情表現って面倒臭いのぅ……。聞きながら遠い目になった。

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。