このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【狷介孤高「墓参り問題」の巻】【狷介孤高】

　今年も大変だった……。多分、同じ思いをした人は何人かいるはず。と勝手に決めつけ、愚痴を共有したい！

　そう。それは「シニア、他の外出は控えるのに盆の墓参りだけは命をかけて行こうとする問題」――。

　昨年もそうだったが、コロナ禍に加え年々暑さが激しくなっているこの時期。冗談じゃなく、墓参りで体調を崩すなんてことになりかねない。そうなったら誰を恨めばいいのか。ご先祖さまや死んだ父に「どうしてくれるのさ！」と叫んだとて、虚しいだけではないか。

　実は私には、こんな経験がある。数年前一人で墓掃除に行ったとき、雑草に足をひっかけ額を墓石にぶつけてケガをした。「ご先祖様を大切にしている私がどうしてこんな目に」と、なんとも言えないやりきれなさを感じたものである。

　ということで、生きている者の健康が優先。昨年からは特に、自分だけでなく周りのことも考えて、お墓参りの時期をずらそうと訴えている。お盆に行かなくても誰も責めないぞ。死んだ父だってちゃんとわかってくれる！

　それなのに母は行く行くとゴネる。墓地まで片道1時間。しかも我が家は誰も車の免許を持っていないで、30分くらいは小さな送迎バスに乗らねばならない。お盆中は母のような考えのシニアがワサワサと行き、結構混む気がする。

　猛暑もヤバい。無事墓所についても、カンカンに照り付ける太陽……。そのなか、山道を歩いて墓の掃除をせにゃならんのだ。「墓石の照り返しで墓所はサウナ状態なのでお年寄りは要注意！」というお坊さんのツイートも見たところである。

　私は涼しくなってからでええやんと止める！　それでも母は行くとゴネ続ける！　最終的に私は秋川雅史の「千の風になって」の歌詞をスマホで表示し「お墓の前で泣かないでください、ここに私はいませんって秋川さんも歌ってはるやん！」と半ばヤケクソで説得することになった。

　そしてどうにか今年の墓参りは延期することになった。が、私が先祖を大事にしない薄情者みたいな空気になっている。納得できない。

　決めた。私は死んだら散骨してもらおう。姪に私のような思いはさせたくない。墓参りの面倒はかけられない！

　そこでさっそく姪に「私が死んだら海に散骨して」とメッセージを送ったら、「海？　オッケーオッケー♪」と返ってきた。

　おいおい真剣な話なんだよ。「♪」マークってなんだよ（怒）！！

　イライラがいろんなところに飛び火したお盆墓参り問題だったのでした。疲れた……。

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。