このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【鼓舞激励「シニアの一番人気、羽生結弦」の巻】

私の周りの70代オーバーの女性たちは、まだまだ心も身体も元気。イケメンが出るとウキウキする。「推し活」に励む元気なシニアもいる。竹野内豊や中島健人、リチャードギアなど様々だ。マニアックな母の友人Ｙさんは、舞台・刀剣乱舞に出演する舞台俳優さんに夢中だ。

ところが、この好みがバラッバラな全員が口をそろえて「大好き」と言う、圧倒的人気者がいる。

フィギュアスケートの羽生結弦選手である。

なぜ？　いや、もちろん彼は魅力的だ。私もすごいと思う。関西ではイケメンを「シュッとしている」と形容することが多いが、羽生選手は確かにシュッとしている。それにあの超人的なスケートテクニック、長い手脚、美しい回転。くまのプーさんが好きなところも、ストイックな性格とのギャップがあり、萌える。

しかし、オババたちの「ゆづ君愛」は、私のそういった評価とはレベルが違うのだ。羽生結弦イコール「完璧」。うちの母も例に漏れず。何をしていても羽生選手が出ていればテレビの前に飛んでいく。

「早くッ！ ゆづ君が演技してるから！ 早くッ！！」

と私までリビングに呼ばれ、一緒に観賞しなければならないという謎の掟がある。

とはいえ、フィギュアスケートのシーズンはもう少し先。なぜ彼の話題になったかというと、きっかけは東京五輪だ。この間母がスマホをスピーカーにし、ババ仲間とこんな話をしているのを聞いてしまった。

「東京五輪、ゆづ君の演技も観たい」

夏季オリンピックだから無理だよ……。私は心の中で突っ込んだ。

ところがなんと、母はすぐに

「ゆづ君のギョーザが東京五輪で日本選手団に提供されてるやん。食で参加してるってわけや。さすがゆづ君やん」

とドヤ声で返したのだ。

ギョ、ギョーザ?！　なになにその情報？　私は部屋に駆け込み、いそいでスマホ検索した。すると本当に羽生選手は味の素とタッグを組んでギョーザを開発。これが東京五輪で日本選手団に提供されていた。「食欲がなくても食べられる」をコンセプトにした、にんにく抜き、ショウガがたっぷり入ったギョーザなのだそうだ。

びっくりした……。すごい情報仕入れてるやん！　しかし私は知っている。母の現在のイチ推しは、眞栄田郷敦だというこを。火曜夜10時からのドラマ「プロミスシンデレラ」を心の支えに、コロナ禍をサバイブしていることを。

シニアの推し活をなめてはいけない。彼女たちの寿命は、推しの輝きにかかっている！

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。