このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【意気昇天「戦う関西シニア」の巻】

　ここしばらくの関西シニアは、ワクチン接種の予約で話題が持ちきりだ。うちの母とその友達の間でも、激しい情報交換が行われている。

　先週、緊急事態宣言を受けて私も数日家にこもっていたのだが、母のスマホが数時間おきに鳴る、鳴る！

　モテモテやん。私はちょっとびっくりして、部屋からそっと母の様子を窺った。すると、

「Ｋさん、Ｔさんがスマホ持ってないから援護射撃（←多分ワクチン予約のサポート）してやって。アンタの押しつけがましいほどの世話焼き、ここで本領発揮やで！」

　母が何気にヒドイ言葉でＫさんにハッパをかけている。エラい言われようだ。後から聞いたらＫさん、

「わかったわ！　片っ端から情報を収集して、Ｔさんと連携とる！」

　となったそうだ。エエ人すぎるやん。

　Ｔさんは、１人暮らしでデジタルが超苦手、プライドがチョモランマの如く高いので、ここ数日間ヒステリー全開だったとか。不安な気持ちを考えればもう当然の話だ。

　そんな不安を少しでも払しょくしようと、オババは連携を取り合い、あそこの医院ではこういう話だった、娘がネットで調べたらこんな感じだった、などなど、情報を回し合っていたのである。

　私は感動した。なかには

「あそこの医者、髪型がヘンやんな」

　など、放っておいたって的な言葉も漏れ聞こえてきたが、いやいや、えらいぞ、そして強いぞ関西シニア。

　しかしオババたち、電話長すぎる。話があちこち飛ぶので、一人１時間くらい、余裕で話す。そういった意味では、ＺＯＯＭ打ち合わせ１０分で微熱を出した私より１００倍元気だ。

　しまいに母はスマホを耳につけるのをやめ、スピーカーをオンにし、トランシーバーっぽくスマホを構え、どこのＦＢＩやねんと思うくらいカッコイイ姿勢で話し始めた。

「ハイハイＭさん。私。法善寺や。Ｔさん無事落ち着いてきたようですわ。そうそう。吉村さん頬コケてきてるよな。え？ スナップエンドウのおいしいのが畑で獲れた？　イヤー嬉しいわ、送って送って。そうそう。美味しいモン食べて打倒コロナヨッシャ」

　話し過ぎてハイになっているのか、口調がどこぞの戦闘部隊の隊長のようだ。

　戦っているんだな。自分の命のためだけではない。孫に会うため、家族を安心させるため。

　私は勝手に母と仲間たちを「最強戦士・ババーズ」と名付けて応援している。

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。