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このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。
編集長
【盤根錯節「大阪ぎらいは難しい」の巻】
かなり前だが「京都ぎらい」(朝日新書)という本がベストセラーになったことがある。著者の井上章一氏が京都府生まれ、京都大学出身ということで、私も「へえー!」と、とても興味を持った。というのも、私の知っている京都民は皆「東京に首都を譲ったのは表向きだけ。京都こそ日本の中心」くらいに、そらもう凄まじく地元を誇りに思っている人が多いからである。それこそ、京都にいて京都の悪口を言うのはタブーくらいのイメージ。
私の父方の叔母もそうだ。親戚が集まるたび、バリバリに京都すごいビームを出してくる。京都にある歴史の古い神社仏閣の話をするときなど、自分で建てたんかとツッコみたくなるほどドヤ顔・ドヤ口調だ。
もし叔母に「関西シニア」の連載をしていると報告したら、多分こんな反応が返ってくるだろう。
「関西なあ……(柔らかい薄笑い)。ひとまとめにしてもろてもなあ(困った顔)」
彼女はそういって鼻で笑う。間違いない。ということで報告しない!
おっと話が逸れた。今回は京都シニアの地元愛について語りたい訳ではないのだ。「京都ぎらい」の二匹目のどぜうを狙う編集者さんにこう持ち掛けられた。
「法善寺さん、『大阪ぎらい』って企画を出そうと思うんですけど」
ぐっ。思わず唸った。気持ちは分かるぞ。ネタは山ほどあるだろうし。しかし、残念ながら売れない。言い切る。実際言い切って断った。
地元プライドがすごい京都だからこそ「京都ぎらい」のタイトルのインパクトがガツンとあったが、大阪は自虐の文化。吉本芸人が、吉本興業をめたくたに言いながら笑っている、あの感覚である。だから「大阪ぎらい」という本を出したとて、「だからどないやねん」くらいの反応しかないだろう。もしくは「『大阪ぎらい』っちゅうタイトルが気に食わん。『大阪アカンイヤンバカン』くらいにしてくれんと」とダメ出しされるだけだろう。
それに、大阪の自虐は複雑なのだ。「ワシ、アホやし」と自分から言っておきながら、他県の人に「あははバカっぽいよね~」などと笑って同調されたら
「ふざけんな誰に向かって言っとんじゃコラ表出ろワレ」
と真剣にムッとくる。なんというか、大阪人の自虐は、イジり方にコツがいるというか、ものすごく難しいのである。 間違っても標準語でイジってはならない。
とかいいながら「大阪ぎらい」という本が出ていたらどうしようとAmazonで調べてみたら、藤山寛美大先生の松竹新喜劇「大阪ぎらい物語」が出てきた。
興味のある方はぜひ……。
【法善寺灯子さんのプロフィール】
関西在住ライター。性別:女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。
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