このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【枝葉末節「煮卵戦争」の巻】

　さて、関西在住歴半世紀の私ではあるが、謎が解けないままのこともある。

　その一つが「関西シニア、小銭にこだわる問題」――。

　この前もある事件が勃発した。昼、事務所社長（58）と事務所から徒歩1分のコンビニでお昼ごはんを物色していた。私は弁当持参なのだが、もう少し、あと少しだけおかずがほしい。そこで目を付けたのが「煮卵」である。

　ううむ、パッケージにプリントされた、トロリとした黄味が溶け出る画像もソソる。しかし2つ入り。２つはちと多い。ということで、ウキウキとカレーを手にしている社長に

「煮卵、1個ずつにしませんか」

　と提案した。すると笑顔で

「オッケーオッケー」

　と承諾してくれた。カレーに煮卵。最高のトッピングではないか。そこで、私はチラリと期待してしまった。

「煮卵、オレがおごったるわ」

　という一言を……。

　私は思ったことが9割顔に出るタイプだ。今回もあからさまに「おごってくれ」という顔をしてしまったようだ。そんな私の要望を察した社長は真顔になり、驚くような一言を放ったのである。

「は？　我（わが）が提案してきたんちゃうんけ」

　わ、わが？ ワガ！？ WAGA！！？　私は思わずその場でフリーズした。

　ちなみに煮卵は150円。しかも1個は社長も食べるのである。それを「我（わが）が」やら「ちゃうんけ」やら威嚇的に拒否るとは。その間に挟まった「提案」という熟語に社長の生真面目な性格が出ているとしても、それにしても！

「言い出しっぺが出しなさいよ」。このくらいの戒めでいいではないか！

　しかしほぼ毎日顔を出す行きつけのコンビニで煮卵を巡り、エエ年こいたオバハンオッサンが言い合うのもどうか。ということで私は「ごめんよごめんなさいよ！」とプチ逆ギレて終わった。

　ここで誤解のないよう付け加えておきたいのが、社長は決してケチではない。逆に豪快。飲み会では大盤振る舞いして下さるので、ヒヤヒヤすることも多いくらいだ。

　考えてみれば、うちの父親もそうだった。1000円ちょうだいと小遣いをせびれば5000円くれるような（※バブル期限定）人だったが、小銭は別。あるとき、父から500円玉を借りたとき「そのくらいええよ」と言われると思いきや、

「お前絶対返せや！」

　と矢の催促をされたものである。

　社長もオトンも何なの！？　紙幣にはけっこう無頓着なのに！　

　が、書いているうちにこの問題、関西シニアとは関係なく、私に問題がある気がしてきた。小銭案件に対して、どうやら私は「このくらいいいよ、出すよって言ってくれんかなー」と、ものすごく「げへへへ」的なゲッスい顔をしてしまうようだ。

　反省が襲ってきた。いかんな。いかんぞ、私！

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。