このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【散財必至「テレビショッピングの恐怖」の巻】

　関西に限ったことではないのだが、シニアの「テレビショッピングの買い物」は本当に怖い。というのも、昭和の「値段が高いものは質もいい＝限定品ならなおさら自慢＝持っている自分自身の価値も上がる」という考え方が露骨に出るからだ。しかもバブルの経験から、金を使う快感が脳に貼り付いているので全然躊躇しない。

　今では安くても高機能で上質のものは山ほどある。そこをわかってほしいのだが、どうもわかってくれない。しかもテレビショッピングは直接モノを確認することが出来ない。なのに、

「エッ、マジ？ 」

　と清水の舞台からフライングするようなものを買って家族を青ざめさせる……。

　いやもう、テレビショッピングは煽りトークがうますぎるのだ。

「このフライパン、今買うとあと３つ付いてきます！」

　と、謎の大盤振る舞いをしてくる。ときには

「今から３０分以内に電話をいただいた方限定！」

「数に限りがあります。３００台限定！」

　と時間や数を区切ってくる。

　うまいなあ、と感心しながら母を見ると。

　でっ、電話してるーーーッ！！？？

「はいっ、はいっ、数に限りがあるんでしょ？　急いで電話しちゃったー。間に合ったかしら。ウフフ」

　とテレアポにつられて標準語で話し、ご満悦である。

　この手の通販で、私は羽根布団と高級化粧品と毛玉取りを買わされた。毛玉取りは、なんと６８００円。職人が一つ一つ手作りで作ったというブラシ型のものであったが、私は全く納得がいかなかった。

　セーターの毛玉なんて指でも取れるじゃないか……（泣）。

　母も毛玉取りが届いた時点でやっと正気に戻ったようだが、彼女にとって返品など恥。

「私はこれが欲しかったの！」

　と言い張って譲らない。じゃあ自分で買ってくれよ！　ということで、５０００円回収した。母がその毛玉取りを使っているところを見たのは一度だけである。

　私だけではない。

「祖父が、『今回限り』という言葉に煽られて、絶対使えないレベルのトレーニングマシンを買おうと電話を取ったので、家族全員で押さえ込んだ」という友人もいる。

　テレビショッピング、本当に危険。

　ジジババの物欲とプライドをあんまりくすぐらないでくれよぅ！

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。