このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【蛙鳴蝉噪「ワクチン接種の情報戦」の巻】

　実はこの「関西シニア」のコーナーで、コロナ関係についての話題を書くのはもうやめようと思っていた。せめてここでは、コロナを忘れてもらいたかったからである。

　が、ここ最近、母のババ仲間たちがワクチン１回目、早い人で２回目の接種を終え、「ワクチンを打ったあとどうなったか報告合戦」がなかなかのカオスなので、ついつい記事を書いてしまっている。お許しいただきたい。

　まず、私の母は１回目のワクチンの前夜、緊張から微熱が出て、一週間延期となった。まあ、私も遠足の前日必ず熱を出すタイプ。もともとイベント事に弱い血筋である。が、今回はそれ以上に、母より前にワクチン接種を済ませたババ仲間の煽りがすごかった。

「腕がパンパンになって肩から上に上がらなくなるから！」

「絶対熱が出る。間違いなく出る。カロナールは必需品やで！」

　などなど、鼻息荒く己の体験を教えようと電話が日々ジャンガジャンガと鳴り、オカンはすっかり電話疲れ、情報疲れしてしまったのだった。

　しかしこの時期、ワクチン接種の延期が出来たのはラッキーだったが、なかなかの罪悪感。母はババ仲間に、かかりつけ医にどうおわびをしたらいいのか相談した。そこで

「とらやの羊羹を贈る」

　というベタなアドバイスをもらい、私はとらやの羊羹セットを買いに行かされた。思わぬ出費に腹が立ち、ヤケクソで限定のコーヒー味羊羹を自分用に買ってしまった。

　そして母は無事ワクチン接種１回目を終え、ありがたいことに熱も何も出なかった。腕が少し腫れたくらいである。すると、

「えーっ、私は熱が出たのに！　でも今回のワクチン、体が若いほど副作用がキツイんやて！　私の方が若いってことかな」

　とマウントをかけてくるババ登場。さらに

「法善寺さん、１回目なんもなかったんやて？　多分２回目にドーンと来るで。覚悟しときや」

　と脅してくるババ登場。さらにさらに

「ワクチン接種お疲れ様。そういえば昨日娘に銀行のカードと通帳を取り上げられた」

　と、どさくさに紛れて親子の修羅場を報告してくるババ登場。

　全員、ちょっとしたワクチン接種ハイの状態である。

　腕が腫れたババ仲間からは「今の状態見せたいわー。画像送ろうか」と何度も言われたらしい。いらん！　みんな落ち着いて！

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。