このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【感情移入「すべて自分ごと」の巻】

　星野源と新垣結衣が結婚。いやー、めでたい！　暗いニュースが続いていたので、救われた気分だ。二人に強い思い入れはないが、めでたいめでたい。

　ところが、である。この間、ご高齢のオジジたちが駅で話しているのを聞いてしまった。

「ガッキーが結婚するらしいな！」

「ようやるわ、星野源。ワシ、あんな人間っぽくない嫁さん、ようもらわんわ」

「ワシもワシも。むっちゃ扱いにくそうやんな。言い寄られても断るわ」

……。

　私は思わず、古畑任三郎の如く、額に人差し指を当てた。

　気持ちは分かる。わかるが、図々しいにもほどがあるぞ、オジジたち。

　ガッキーとて、君たちに嫁にもらってほしいとは１ミクロンも思っていないだろう。

　このオジジたちに限らず、関西シニアはすべての世の出来事・ニュースを、自分のことに置き替える傾向がある。「もし自分だったら」。いや、こういった「ＩＦ」は、若者を含め誰でも想像することではあるのだが、関西シニアはなぜか「想像の中で断る」のが特徴だ。

　私の母（80）など、毎年４月にＷＯＷＯＷで生中継されるアカデミー賞授賞式を観ながら、必ず

「私やったら、アカデミー賞にノミネートされても断るわ。舞台までの階段がツラい」

「私やったら、スピーチで親や関係者の名前をツラツラ言わへん。長い。たるい！　後でお礼を言うことにして、『サンキュー』の一言で終わらせるわ」

「私やったら、このタイプのドレスは着ぃひん。インタビューの邪魔になるから」

　と〝『私やったら』からの否定〟をぶち込んでくる。毎年。しかもドヤ顔で！

　そのたびに私はこう思うのだ。

　オカンがアカデミー賞にノミネートされる可能性なんざ、100パーありませんけど！！　吉永小百合ですら夢のまた夢のアカデミー賞を、なぜ「もうひと頑張りすればイケる」レベルの口調で語れるのだろうか。逆に凄いぜ！　……と。

　とか言いつつ、実は私も、大好きな竹野内豊が出るたびに

「私やったら、竹野内豊に告白されても断るなあ。ファンが怖いし、この顔が毎日家にいると思うと、緊張してご飯が喉通らん」

　と、どの立場でモノを言っておるのかという呟きをして、鼻で笑われている。

　まあ結局、妄想とはいえ、人気者のお誘いを断るって気持ちいいのだ。ふふふ。

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。