NHKの朝ドラは、東京制作（AK）と大阪制作（BK）の作品が半年毎に放送されている。現在放映中の清原果耶主演の『おかえりモネ』は、東京制作であり、前作の杉咲花主演の『おちょやん』は大阪制作であった。過去の作品を見ても東京制作と大阪制作では、明らかにテイストが異なる。

　最近の大阪制作の作品といえば『あさが来た』（2015）、『べっぴんさん』（2016）、『わろてんか』（2017）、『まんぷく』（2018）、『スカーレット』（2019）など。明治時代に活躍した女性実業家、子供服メーカーの創業者、吉本興業の創業者、インスタントラーメンの創始者、信楽焼の女性陶芸家のような関西近辺に実在した、あるいは実在するモデルの人生をドラマ化する作品がほとんど。これは、朝ドラ史上最高傑作といわれる『カーネーション』においても事情は同じ。世界的デザイナーとなったコシノ３姉妹の母をモデルに戦前・戦後の時代背景を駆け抜ける主人公の人生を追いかけるものであった。

『おちょやん』（2020）もまさにこの流れに乗った作品。戦前・戦後を通じて大阪の演劇界で活躍した実在の女優・浪花千栄子の人生をドラマ化したもので、道頓堀の演劇界、京都の映画撮影所などを舞台に、大阪ドラマが展開されていた。東京出身の杉咲花の完璧な関西弁や父親役のトータス松本の破天荒な演技が話題となった。内容的にも、関西色が前面に出て、良くも悪くもコテコテのドラマであった。

　一方、東京制作の作品は『とと姉ちゃん』（2016）、『なつぞら』（2019）、『エール』（2020）のようにモデルの実在する作品ももちろんあるが、『あまちゃん』（2013）、『ひよっこ』（2017）、『半分、青い。』（2018）のように、完全オリジナルの主人公が伸び伸びと活躍するドラマも多い。

『おかえりモネ』は、まさに、こうした流れに乗る作品。NHK東日本大震災プロジェクトの一環として、東北の現在と未来に焦点を当てた物語で、作品の舞台は宮城県気仙沼市と登米市。気仙沼沖の島で生まれ育った主人公が、高校卒業と同時に登米市に移り住み、森林組合に就職。東京から来た気象予報士と出会い、気象予報の楽しさと可能性を知って、気象予報士を目指し始める。これを演じる清原果耶はまさにハマリ役。凛として透明感のあるモネは、清原が演じることで、「そこにいる」リアリティを視聴者に感じさせてくれる。

　清原が朝ドラに登場したのは『あさが来た』が最初。芸能界入りしてわずか半年の13歳で抜擢され、主人公あさの奉公人・ふゆを初々しく演じた。

　清原が朝ドラに二度目に登場したのは、『なつぞら』。主人公の広瀬すずと生き別れた妹・千遥を陰のある存在感で演じ、俳優としての成長を感じさせた。

　その間、芸術祭大賞やATP賞最優秀賞を受賞した『透明なゆりかご』（2018）に主演し、俳優としてのステータスを上げてきた清原にとって、『おかえりモネ』は、『透明なゆりかご』以来の脚本家・安達奈緒子とタッグを組んだ作品。

　東京が舞台となり、ますます面白くなっていくことが予想される作品だが、タイトルに『おかえり』とあるように、ゆくゆくは再び故郷に戻っていくことが予想される。

　その頃、清原果耶は、もうひと回り大きく成長していることだろう。これからの展開が楽しみだ。

• （文）久慈修人『週刊大衆』専属記者。【Twitter】@SayEach
• （編集）スナイパー神津『週刊大衆』編集部員。【Blog】https://sniperkozu.com/