好評のうちに終了した『珈琲いかがでしょう』（主演・中村倫也）に続いて、テレビ東京のドラマプレミア23の枠でスタートしたのが、西島秀俊主演の『シェフは名探偵』。なかなかユニークな内容で、今後に期待できそうな臭いが漂ってきた。

　序盤を見る限り、「名探偵」といってもシェフが殺人事件に首を突っ込んで、独自の推理を働かせるというような内容ではないようだ。（もっとも、この点に関しては、これからの展開を見ないとなんとも言えないが……）。

　レストランを訪れる客の注文の仕方や料理の味わいっぷりを見て、シェフはその人物の性格や一緒に食事をする人物との人間関係について、深く洞察する。それがいちいち理にかなっているのだ。

　まず、冒頭に登場するのは、高築智行（濱田岳）。仕事先からリストラされ、この世を儚んで「最後の食事先」として、かつて仕事の全盛期に訪れた『ビストロ・パ・マル』にやってくる。彼の注文の仕方やただならぬ様子にシェフの三舟忍（西島秀俊）は何かを感じ、高築をビストロ・パ・マルのギャルソンとして雇い入れる。

　彼が働き始めると、店には迷惑な客が次々と来店する。好き嫌いが激しく何かと注文をつけてくる粕屋孝一（奥田洋平）、彼とともに来店する桶谷百合子（冨手麻妙）は、仕事上のパートナーだが、実は奥さんから粕屋を奪おうとしている。また、川出恵子（井上小百合）と口論した挙句、デザートにダメ出しする鶴岡正（玉置玲央）。彼は、チョコレート作りの名人で、実は川出とは兄妹の関係にある。

　三舟は、粕谷が奥さんを深く愛していることを洞察。桶谷に粕谷と別れるように進言。また、川出は危篤の母に会おうとしない鶴岡をなじるが、実は、鶴岡も深く母を愛していることを彼の作るチョコレートから類推。「おせっかい」とも思われがちだが、その場に即した見事なアドバイスを送り、全てを丸く収める。

　すべてが終わった後、高築がシェフに尋ねる？

「なんでぼくをこの店に誘ってくれたんですか」

「ギャルソンに向いてると思ったからだよ。昔、駅前にあるラーメン屋に入ったんだ。混雑した客を捌くために、アルバイトの子が客10人から一気に注文を取ってた。麺の硬さだのトッピングだの10人が10人別の注文をしたが、その子は一度聞くだけで間違えることなく注文を通した。あの時のバイト君は君だろ？」

「えー！　いつの話してるんですか。8年も前ですよ」

「記憶力がいいのは良いシェフの条件だ。ギャルソンも記憶力が求められる。1年ぶりに来てメニューも見ずに、同じ料理とワインを頼んだ。その能力が錆びていなかったから声をかけたんだ」

　絶句する高築。濱田岳がいい味を出している。今後の展開が楽しみだ。

• （文）久慈修人『週刊大衆』専属記者。【Twitter】@SayEach
• （編集）スナイパー神津『週刊大衆』編集部員。【Blog】https://sniperkozu.com/