中村倫也といえば、昨年の秋ドラマ『この恋あたためますか』（TBS系）で、クールなコンビニチェーン店の社長を演じて好評だった。同ドラマでは、社長を解任された後、移動販売のコンビニというアイデアを思いつき、それを見事に成功させるという展開だった。その中村倫也が、今度の『珈琲いかがでしょう』（テレビ東京系）でやはり移動販売の珈琲店の店長を演じるというのが面白い。

　もちろん、『珈琲〜』の主人公・青山一（あおやまはじめ）は『この恋〜』の浅羽拓実とは全くの別人。だが、ドラマ化以前から、原作漫画のファンが「主人公が中村倫也にしか見えない」と騒いでいたことからも分かるように、中村はまさにハマり役。本人にもこの話は届いており、あるインタビューで、「（ファンの）そういった声も僕のもとにも届いていて、“お待たせしました”といったところでしょうか。これで僕以外の役者が演じていたら何よりもまず僕が文句を言っていたと思うので、良かったなと思います（笑）」と答えており、「適材適所」のキャスティング。

　タコのマークの移動販売珈琲店「タコ珈琲」を経営する青山一は、客の注文を聞いて一杯づつ豆をひき、客にあった珈琲を丁寧に淹れることで、熱心な固定客を掴んでいる。

　そんな「タコ珈琲」を訪れるさまざまな客たちのエピソードが一回の放送で二つずつ紹介される。

　第一話episode1は、「人情珈琲」。垣根志麻（夏帆）は、「誠実に丁寧に」をモットーに働くOL。商品サンプルをお得意様に発送する仕事についている。丁寧な礼状を手書きで発送することを得意にしているが、上司からは「そんなことをしなくてもいい。仕事が遅い」となじられる。引き合いに出されるのは明るくて要領がいい後輩・馬場（足立梨花）だ。

　馬場と上司たちが誘い合ってランチに行く間、一人寂しくランチタイムを過ごす垣根は、移動珈琲店「たこ珈琲」を発見。一杯一杯丁寧に淹れる珈琲の作り方とそうやって丁寧に入れた珈琲の美味しさに感動した垣根は、仕事上の不満を青山に吐露しはじめる。「見てる人はちゃんと見てくれます」。笑顔で励ます青山の優しい一言とコーヒーの美味しさに癒されていく垣根。

　episode2は「死にたがり珈琲」。クレーム対応の電話オペレーター・早野美咲（貫地谷しほり）は、心を殺してひたすら謝る毎日を送っていた。ある晴れた休日、美咲はベランダで「こんな昼下がりは死にたくなる」とぼんやり思っている。すると、美咲の目には青山の移動販売珈琲店の車が。青山と目があった美咲は、驚いた拍子に干していたガードルを車の上に落としてしまう。

　謝りに行った美咲は、珈琲を一杯注文することになる。カフェオレを注文した美咲は「いつも無難で没個性なカフェオレを選択してしまう自分」の性癖を自嘲気味に吐露。青山は「カフェオレは決して没個性なんかじゃないですよ」と美咲をある場所に連れ出す……という話。

　いずれも、生き辛さを感じる現代女性が、青山の珈琲に癒されていくというストーリーで、全編に充満する珈琲の香りとともに、観ている側もいつの間にか癒されているという仕掛けが面白い。

　回が進むにつれて、この青山という謎の男の背景も徐々に明かされていくことだろう。今後の展開に期待したい。

• （文）久慈修人『週刊大衆』専属記者。【Twitter】@SayEach
• （編集）スナイパー神津『週刊大衆』編集部員。【Blog】https://sniperkozu.com/