このコーナーは伝説のアダルトライターである舐達磨親方に、古き良き「あの頃のアダルト」を回想していただくものです。昭和、平成、令和の「男女の愛欲」を取材し続けてきた親方は、まさに歩く伝説。中高年読者の皆様も、若かりし頃にタイムスリップした気持ちでお楽しみください。

編集長より。

【旅回りのヘルス一座の巻】

　1985年に新風営法が施行された。これが最初にマスコミに登場した新風営法と呼ばれているもの。この時の夜の新宿歌舞伎町は、それこそマスコミが押し寄せてスゴイ人出でした。だってそれまではフーゾク店はみんなほとんど無届けのモグリ商売だったから、みんなどうするのか興味津々だったからねぇ。

　ワシもカメラマンと一緒に一晩中ウロウロしておりました。この日を境にして、ワシと同業のフーゾクライターを廃業する人も出て真面目な勤め人になる人もいてガッカリさせられたりした。でもワシは逆に、これから今以上に忙しくなると思っていたんだけど、彼等はおそらくフーゾク店が無くなると思ったんだろうな。

　実際にはワシはそれ以前より忙しくなったんだから、彼らは間違っていたんだろうね。で、その頃ファションヘルスをやっていたオヤジがなにかまたアイデアが浮かんだらしく、

「島本さん、こらから旅に出るんです。もし時間があれば一緒に行きませんか？」と誘われたんです。

　この旅というのがクセモノで、内容を聞くと、オヤジのクルマ（ワゴン車）に女のコを４人乗っけて北に向かうというもの。それでそこそこ人の多い街に入ると、クルマを止め、女のコを待機させて置いてから、オヤジが営業に向かうというわけです。

　独身が住んでそうなアパートを探して尋ね歩き、話がついたら女のコを向かわせ、シコシコ抜いてあげるというもの。いわゆる出張移動ヘルスってやつ。無届け営業ですから、足が付かないように翌日には次の街に移動するというわけですね。

　これには女のコも喜んで参加するし、ちょいとした２～３ヶ月の旅で、ある程度稼げちゃうという。ワシも最初の３～４日は一緒にクルマに乗って旅を楽しみました。とはいえクルマの中での寝泊まりは疲れちゃってスグに東京に帰ったというわけです。

　それにしても当時の独身のアパート住まいの男たちって、よくまぁホイホイとオヤジの誘いにのったものでしたなぁ。それもこれもやっぱりフーゾク全盛期だからでしょうかね。新風営法施行の影響で生まれたゲリラフーゾクのひとつだったと思います。

【舐達磨親方プロフィール】

1952年、山口県岩国市生まれ。夜の世界のフリーライターとして、新聞や雑誌で数多くの男女の物語を紡ぐ。中でも独特の風俗体験ルポは絶大の人気を博す。